この記事は2022年10月12日(水)配信されたメールマガジンの記事「岡三会田・田・松本賢 アンダースロー(日本経済の新しい見方)『日本経済ピッチ(物価):日本でもデフレからインフレへの転換点に』を一部編集し、転載したものです。
要旨
エネルギー価格の上昇がけん引する形で、コア消費者指数(除く生鮮食品)は日銀の物価安定目標である前年同月比+2%に達した。しかし、交易条件の悪化による物価上昇は継続しないとみられる。実質所得の減少により、その他の財・サービスの需要を減退させ、国内からはデフレ圧力がかかるからだ。エネルギー価格が高水準ながらも横ばいとなれば、物価上昇への寄与は縮小し、実質所得の減少の影響と合わせて、コア消費者物価指数の前値同月比は、ここ数カ月がピークとなり、2023年度には1%半ばに戻るとみられる。
国内では、異常なプラスの企業貯蓄率が示す弱い企業活動が、総需要を破壊する力として、デフレ圧力になり続けてきた。「持続的・安定的」な物価安定目標の達成には、この総需要を破壊する力が一掃されなければならない。物価を押し上げるマネーの拡大には、企業と政府の支出の拡大が必要になる。岸田内閣の積極財政への転換が、そのデフレ圧力を打ち消し、総じてみれば、物価を押し上げる方向に作用し始めるだろう。
第四次産業革命や脱炭素などの投資テーマによって企業の投資が拡大するだろう。サービス業の復調で失業率が低下し、賃金上昇によって消費が回復するだろう。設備投資と消費が両輪となる内需拡大が、物価を上昇させていくだろう。2024年度には、設備投資サイクルの上振れで企業貯蓄率がしっかり低下するだろう。2025年度には、企業貯蓄率は正常なマイナスに戻り、過剰貯蓄が総需要を破壊しなくなり、デフレ圧力からインフレ圧力への変化の転換点として、デフレ構造不況脱却の機運が高まるだろう
2024年度までのコア消費者物指数(生鮮食品を除く)の上昇率は平均で1%台半ばで推移するが、物価上昇の中身は、エネルギー価格の上昇から国内の需給の引き締まりを起因したものに変化していくだろう。2%の物価目標達成は、実際の物価上昇がインフレ期待を押し上げ、それが更に物価上昇を強くするサイクルが必要となり遅れて2025年度になろう。2026年度には、物価上昇率が目標の2%台で安定するようになり、インフレ期待がアンカーされ、政府はデフレ完全脱却宣言をするだろう。
物価−物価上昇の中身はエネルギーから国内需給の引き締まりに起因したものに変化
エネルギー価格の上昇がけん引する形で、コア消費者指数(除く生鮮食品)は日銀の物価安定目標である前年同月比+2%に達した。しかし、交易条件の悪化による物価上昇は継続しないとみられる。実質所得の減少により、その他の財・サービスの需要を減退させ、国内からはデフレ圧力がかかるからだ。
エネルギー価格が高水準ながらも横ばいとなれば、物価上昇への寄与は縮小し、実質所得の減少の影響と合わせて、コア消費者物価指数の前値同月比は、ここ数カ月がピークとなり、2023年度には1%半ばに戻るとみられる。
国内では、異常なプラスの企業貯蓄率が示す弱い企業活動が、総需要を破壊する力として、デフレ圧力になり続けてきた。「持続的・安定的」な物価安定目標の達成には、この総需要を破壊する力が一掃されなければならない。
物価を押し上げるマネーの拡大には、企業と政府の支出の拡大が必要になる。岸田内閣の積極財政への転換が、そのデフレ圧力を打ち消し、総じてみれば、物価を押し上げる方向に作用し始めるだろう。第四次産業革命や脱炭素などの投資テーマによって企業の投資が拡大するだろう。
サービス業の復調で失業率が低下し、賃金上昇によって消費が回復するだろう。設備投資と消費が両輪となる内需拡大が、物価を上昇させていくだろう。
2024年度には、設備投資サイクルの上振れで企業貯蓄率がしっかり低下するだろう。2025年度には、企業貯蓄率は正常なマイナスに戻り、過剰貯蓄が総需要を破壊しなくなり、デフレ圧力からインフレ圧力への変化の転換点として、デフレ構造不況脱却の機運が高まるだろう。
2024年度までのコア消費者物指数(生鮮食品を除く)の上昇率は平均で1%台半ばで推移するが、物価上昇の中身は、エネルギー価格の上昇から国内の需給の引き締まりを起因したものに変化していくだろう。
2%の物価目標達成は、実際の物価上昇がインフレ期待を押し上げ、それが更に物価上昇を強くするサイクルが必要となり遅れて2025年度になろう。2026年度には、物価上昇率が目標の2%台で安定するようになり、インフレ期待がアンカーされ、政府はデフレ完全脱却宣言をするだろう。
▽コア消費者物価指数(除く生鮮食品・消費税)と企業貯蓄率
潜在成長率−雇用から資本へのバトンタッチで生産性の向上へ
日本経済の潜在成長率は+0.5%程度で膠着状態にある。新型コロナウィルスの問題が小さくなっていき、労働者が労働市場に戻るとともに、デジタル・トランスメーションを含む企業の設備投資の拡大が資本投入量を押し上げ、新常態下の働き方の構造改革もあり生産性も若干押し上げられ、潜在性成長率は+1%に向けて回復していくだろう。
労働需給逼迫による効率化・省力化の必要性、コスト削減が限界になる中で利益率を更に上昇させる新商品・サービスの開発の必要性が企業の投資行動を刺激し、設備投資サイクルの上振れとともに、資本投入量の押し上げが強くなっていくとみられる。
政府の成長投資によりグリーンやデジタル、先端科学技術などの投資フィールドがニューフロンティアとして拡大することも支えとなるだろう。労働生産性は資本投入量と全要素生産性の合計で、後者は遅行する。まずは前者の増加にともない労働生産性は向上し、賃金の上昇にもつながるだろう。
景気拡大とともに、投資も拡大しながらイノベーションで生産性が上昇するというバブル崩壊後初めての現象が確認され、潜在成長率がしっかり上昇すれば、日本経済は復活することになる。人口減少でも成長を続けることができるようになる。玉石混交の投資は、生産性以上に総需要を押し上げ、景気拡大とともに物価上昇加速でデフレを脱却し、リスク資産価格も上昇するだろう。
投資の一部は非効率なものであろうから、いずれ投資が生産性と収益力の向上に本当につながっているのかの判断が必要となる。生産性と収益力が向上していれば、潜在成長率の上昇とともにインフレは安定化して、リスク資産価格の上昇は継続する。
向上していなければバブルだと判断され、インフレの加速に対処するための政策の引き締めで、リスク資産価格は崩落するリスクとなる。そして、企業のデレバレッジとリストラによって、潜在成長率は低下し、長期低迷に戻るリスクとなる。
▽潜在成長率と内訳
▽日本経済見通し
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