本記事は、佐藤綾子氏の著書『1秒オーラ 好意はなぜ発生するのか』(集英社)の中から一部を抜粋・編集しています
グローバル社会で「ウスバカゲロウ」は損をする
国際会議で横一列に並んで写真を撮ると、日本の首相はちゃんとどこにいるかが分かります。ところが、パーティーの席上でニュースに映ったりすると、「はて、日本の首相はどこにいたっけ」と思う場面がこれまで何回かありました。身長が低いとかそういう物理的な問題だけではないのです。顔から発信してくるパワーがないから。あるいは、会場で光が当たらない場所に行ってしまうから。
みなさんがすぐにでもできるのは、大きなパーティーなどではライトが当たるところに必ず行くことです。そして、顔の表情や洋服、手や全身の動きが常にビビッドであるように心がけましょう。
大きなシンポジウムや何人かが並んで話をしている場合、あるいはテレビにパッと一瞬映っただけでも、例えば慶應義塾大学医学部の宮田裕章教授、通称「未来の作り手」は、どこにいてもすぐ分かります。ヘアスタイルがとにかくユニーク。そして、眼光鋭く、言いたいことはきちんと言うのですが、声が特に大きいとか高いではないのです。パッと見た一瞬の視覚情報が実に鮮明です。どこにいても、相当な暗がりにいても分かるでしょう。こういう印象の濃い人がグローバル社会では注目されるし、発言権が回ってきます。そもそも記憶に残ります。
ウスバカゲロウというトンボの小型版みたいな昆虫をご存じでしょうか。羽も透き通って、どこにいたか分からない。「なんとなくあの人はウスバカゲロウね」と思われるようでは、グローバル化社会では特に損をします。
黙って聞いてばかりいるというのは、何秒か経過した後の問題で、実際には現れた一瞬でみんなの視線をキャッチするかどうか、ここが勝負です。口の悪い友人が、そうやって目立たないウスバカゲロウみたいな人を「薄バカ下郎」と呼びましたが、それはともかくとして、目立ったほうが得です。
「類友」は緊張感がなくて気楽ですが、日本独特の居心地よさに安住していては、グローバル社会でのパーティーや企画会議では、なかなか人の目につきません。ここは「エイッ!」と勇気と切り替えが必要なところです。
「AS自己表現力診断テスト®(PQテスト)®」でわかった、日本人の印象力の自覚
たった一瞬の自己表現の中にその人の知性も感性も全部が噴出してくることに注目し、知能指数のIQ、感情指数のEQ、これら二つの指数を統合して、PQ(自己表現力指数)を測るテストを、2022年1月に完成させました。「AS自己表現力診断テスト®(PQテスト)®」は自己表現力の尺度です。この尺度は59項目から構成されていますが、その中に「印象力」という分野があります。印象力は3項目で構成されます。
(1)第一印象は明るいと言われる (2)第一印象のインパクトが強い (3)第一印象で人に好かれる
さて、このスコア、5段階評価で3項目平均は3.63とずいぶんと謙遜なスコアがついています。
私たち日本人は、他者の話を聞く傾聴力や、いろいろな人を受け入れていくアサーション力についてはスコアが高いのですが、どうやら印象力となるとあまり自信がないというのが実態です。日本の文化の中で、あまり自己主張、あるいは自己表現しないことをよしとする美意識の中で育ったため、何かと目立たないことを好んだためでしょう。
けれど、社会はすでに、集団の中に埋もれていれば済むという集団主義文化から、個人で自分を守り、競争に勝っていく個人主義の時代に移行しています。やはりここは、印象力を高めるほうが自分のためだと割り切るときです。鏡の前で第一印象作りの練習をしてください。そして、明るさ、強さ、好感が得られる自分の表情は何かをきちんと把握しておきましょう。
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