本記事は、佐藤綾子氏の著書『1秒オーラ 好意はなぜ発生するのか』(集英社)の中から一部を抜粋・編集しています
第一印象で自分のどこを見せるか
あなたは本当は親切で優しくて我慢強く、協調性がある素晴らしい人です。でも、パッと見た瞬間に、それがあなたの表情や姿勢、動作に表れているでしょうか。そこが問題です。これについてパフォーマンス学の創始者、アメリカの社会学者、アーヴィング・ゴッフマンは面白い理論を展開しました。「Frame analysis(フレーム分析)」です。
「『対面的相互行為領域』では、固有の認知メカニズムや、今までその人が感じてきた規範が加わって、自分のふるまいを確定している」というものです。
わかりやすく言うと、例えば結婚式や儀礼の場では、突拍子もない行動はできず、敬意をもったふるまいが理想的とされ、そのようにふるまいます。また、焼き鳥屋さんとホテルのレストランでの食事では服装を変えるのが普通です。それは枠の中で「受け入れられる自分を演じている」のだとゴッフマンは言います。
たしかに、喫茶店での店員とのやりとり、職場での話し方、自宅での家族との会話……同じ自分であっても口調やしぐさなど、自然に少しずつ変えていますね。私たちは社会の枠組みから自由にはなれず、それぞれのフレームの中で要求される役割(キャラクター)を演じるように刷り込まれているのです。
この原理を利用したのがパフォーマンス学の「フレーム理論」です。
私たちは、強調しなければならないところをちょうど額縁の中に入れて相手に見せるように、きちんと計算して強く見せる必要があり、また実際にそうしているものです。
ゴッフマンが1974年にこの理論を発表した当時、「パソコンの中に入ったら我々の自己表現はどうなるか」という視点は一切ありませんでした。
オンラインミーティングが日常化した今、第一印象におけるフレーム縛りはいっそうきつくなりました。
「大事な商談なのにネクタイもしないの?」「お祭りの打合せなのにスーツなんて堅苦しい」など、フレーム内のごく一部ですべて判断されてしまいます。こだわりの手土産を渡せない、全身ビシッとコーディネートしても胸元しか映らない、お気に入りの香水も相手にはわからない……オンラインでは何も小細工ができません。
今まで他人からどう見られているかに無自覚だった人も、会議のたびに画面に映る自分の顔を見て、意識するようになり、みんな相手を見る目が厳しくなってきています。
現在のオンライン社会では、フレームの中に入っていなければ見ることすらできないのですから、顔を映さずやりとりするだなんてとんでもない損失です。オンラインのフレームこそ、あなたがどこを見せるかを意識するいいチャンスです。
さて、あなたはどこをフレームに入れますか。その形のいい、大きな目ですか。それとも立派な筋肉質の体ですか。自分の脚があまりにも美しいので脚に保険をかけていた歌手のマレーネ・ディートリヒなら、脚線美でしょうか。マツコ・デラックスは、フレームから溢れ出そうなぐらい大きな体をしっかり映しているし、叶姉妹はあの見事なバストがフレームの中に入るのが好きかも。
強調したいところを額縁に入れる、これがフレーム理論です。第一印象でどこを見せるのか、日ごろから考えておきましょう。そして、それについては、目なら目のお化粧をちゃんとする。髪型ならば、男性でもきちんとヘアスタイルをキープする。力強い腕っ節であるならば、腕の筋肉を磨いておく。それが相手の目に入るようにするのです。
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