本記事は、森永康平氏の著書『大値上がり時代のスゴイお金戦略』(扶桑社)の中から一部を抜粋・編集しています

老後2,000万円問題のウソ

老後資金の不安は不動産投資で解決できる?必要額と注意点を解説
(画像=sh240/stock.adobe.com)

日本が長期間にわたって経済成長をできず、その結果として賃金は上がらず、非正規雇用の割合は増えていく。そして、足元ではインフレが家計を直撃し、今後はコロナ後の倒産ラッシュが懸念される。環境が悪くなればなるほど、企業と家計は合理的に動いて自己防衛をし、さらに環境を悪化させます。この悪い流れを断ちきれるのは政府だけです。こんな環境下で将来のことなんて考えられないと思う方もいるかもしれませんが、私たちの平均寿命はいまでも延び続けていますから、将来のことを考えずにはいられません。

厚生労働省が発表した「令和2年簡易生命表」によると、2020年の日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳となっており、2019年と比較して男性は0.23年、女性は0.29年上回りました。あくまで「平均」ということを考えれば、男性は90歳、女性なら100歳まで生きる方も珍しくなくなるでしょう。

長生きすることに対してネガティブな書き方をしてしまいましたが、基本的には素晴らしいことだと思いますし、少しでも長く生きたいと思われる方も多いでしょう。しかし、そこにはいくつかの条件がついているはずです。つまり、健康でお金に困らない老後生活を長く暮らしたいということであり、不健康だったり、お金に困ったまま長く生きたいとは思わないでしょう。

日本でも少しずつ老後生活に備えようとする方が増えています。しかも、日本には文化として根づいていないといわれることの多い「投資」によって、老後資産を増やそうとする方が増えているのです。そのキッカケとなったのが、いわゆる「老後2,000万円問題」です。2019年6月に金融庁が発表した「高齢社会における資産形成・管理」という報告書のなかで、夫65歳、妻60歳から年金生活を送るとしたモデルケースで、30年後まで生きると想定すると、老後資金が約2,000万円不足するという試算が示されたことで、国民的議論にまで発展したのです。その結果、これまでは馴染みのなかった投資に老後資金不足の解決策を求めた人が増えたのでしょう。実際、証券会社に勤める知人たちに聞くと、この問題が報じられるようになってから、新規の口座開設数が急増したとみなが口を揃えて言いました。