何をどれくらい持つ? ―― 長期資産運用戦略、成功の鍵は資産ポートフォリオのクォリティ
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株式会社ZUUは2022年11月にWebセミナー「退職金を活用した成功する資産運用戦略とは」を開催した。講師はバークレイズやクレディ・スイスでプライベートバンカーとして活躍し、現在はペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社(以下、ペレグリン)で代表取締役を務める山口聰氏だ。本記事では上記セミナーの内容をコンパクトにまとめてお届けする。

ペレグリン・ウェルス・サービシズ山口様
山口 聰(やまぐち そう)
ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社 代表取締役。⼤和証券、英バークレイズ、クレディ・スイスにて富裕層向け資産管理業務に従事。海外の富裕層が実践するポートフォリオ運用サービスに携わった経験を⽣かし、「幅広いお客様へ独⽴の⽴場から安⼼の⾦融サービスをお届けしたい」と2017年同社設⽴。⽇本証券アナリスト協会検定会員 国際公認投資アナリスト資格保有者。

資産運用を成功させる鍵はポートフォリオにあり

「長期的な資産運用のパフォーマンスの8割は資産ポートフォリオのクォリティで決まる」と言われている。言い換えれば「何を買うか(商品選択)」や「いつ売買するか(タイミング)」よりも、「何をどれくらい持つか(資産配分)」が重要ということだ。

上記を踏まえて、個人投資家が資産運用を成功させる鍵は3つある。

1. ポートフォリオ
2. 時間
3. 低コスト

多くの個人投資家は自分で自分のお金を運用する。そのため、第三者に資金を引き上げられる心配もなければ、決まった期限で運用成績が評価されることもない。機関投資家と違って、時間を味方につけることができるのが大きな強みだ。

低コストが重要であることは、いまさら強く述べる必要はないだろう。なるべく低いコストの商品を調達し、しっかりと資産配分を行ったうえで、時間を味方につけて運用すれば、資産運用の成功確率は大きく上がる。

ポートフォリオを構築するときに意識したいのは以下の2つだ。

・大局的な経済情勢、あるいは投資環境の全体観
・目的がはっきりした資産運用計画

まずは大局的な経済情勢や投資環境の全体観だ。数カ月単位、年単位の動向、もっと簡単に言えば「経済は上を向いているのか、下を向いているのか」を把握するということだ。

資産運用は手段であって目的ではない。自身の目的を実現するために行うものだ。そのため「儲かりそうだから」という理由だけでポートフォリオに組み込むのは望ましくない。自身の計画や目的から逆算して考えていくことが重要だ。

ペレグリン・ポートフォリオ

外資系プライベートバンクの場合、自社のハウスビューに基づいたモデルポートフォリオを運用している。プライベートバンクの顧客は、バランス型ファンドやファンドラップ口座を通じて、それらに投資することも可能だ。山口氏もかつては、所属していた金融機関のモデルポートフォリオをカスタマイズする形で、顧客に資産配分を提案していたという。

ただ、モデルポートフォリオに関するレポートには専門用語が多く、一般の個人投資家には難しすぎるという欠点があった。そこで(山口氏が代表を務める)ペレグリンでは、できるだけ分かりやすく、(顧客が)真似しやすいことをモットーに、自己資金でモデルポートフォリオを運用している。2022年11月8日時点の同社のモデルポートフォリオ(資産配分)を紹介しよう。

・キャッシュ(待機資金):42%
・国内株式(TOPIX指数連動型インデックスファンド):8%
・外国株式(S&P500指数連動型インデックスファンド+ナスダック指数連動型インデックスファンド):18%
・外国債券(先進国国債インデックスファンド+ハイブリッド証券アクティブファンド):20%
・REIT:0%
・コモディティ(国内金価格連動型インデックスファンド+コモディティ指数連動型インデックスファンド):12%

まず目につくのが現金割合の高さだ。その理由は「現金割合でポートフォリオのリスク管理を行っているから」である。これまで長らく低金利が続いてきたので、伝統的資産(株式と債券)の分散効果は得にくく、安全資産と思われていた国債などがリスク資産に変わってしまっていた。そこで価格が変動しないキャッシュの量を増減させて、ポートフォリオ全体のリスクの量をコントロールすることを目指している。

外国債券は2022年10月に新しく組み入れた。金利のピークアウト感も見え始めているので、ようやく投資できるタイミングが来たという判断だ。不動産(REIT)に関しては、金利上昇+景気減速懸念という逆風下にあるので、配分はゼロにしている。

このモデルポートフォリオの運用が始まったのが2019年末なので、約3年が経過したところだ。2019年末を100とすると、2022年11月時点では約125まで上昇している。

なお、このモデルポートフォリオは2022年に入ってからも堅調に推移している。年前半はコモディティの上昇が株式の下落を吸収し、年後半は円安が株安を吸収したため、円ベースの評価額ではプラス運用が続いている。