本記事は、稲村悠氏の著書『元公安捜査官が教える 「本音」「嘘」「秘密」を引き出す技術』(WAVE出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
嘘を見抜くテクニック
しぐさを観察する
嘘に対する嗅覚を鋭くする
会話をするときに身につけておきたい能力のひとつに「相手の嘘を見抜くスキル」が挙げられます。
私は警察時代に刑事課に勤務していた経験もあり、嘘をつき続ける容疑者の取り調べを何度も経験しました。
誰が見ても怪しいと思われる嘘から、一見もっともらしい証言の中に「何かひっかかるところがある」という微妙な嘘まであり、そのサインに気づけなければ、悪事を見逃してしまいます。そうした環境の中で、嘘をキャッチするアンテナを磨くことができました。
では、まず、「しぐさ」から嘘を見抜くコツです。
- 顔が急に赤くなる
- 何度も
唾 を飲み込む - 大量の汗をかく
このような自律神経の乱れから生じる兆候は、心理的な不安の現れであり、嘘をついている可能性が高いのですが、それ以外にも、人間が嘘をつくときに意図せずとってしまうしぐさがあります。
心理学の本などでよく見かけるものではありますが、多くの嘘に向き合ってきた経験の中で、とくに強く感じた特徴をまとめておきたいと思います。
顔をさわる
「嘘をついていることを表情から見破られたくない」という心理が働くのでしょうか。
虚偽の証言をしている人によく現れるのが、顔をさわるしぐさです。
顔を頻繁にさわりながら話すときには、発言に嘘が含まれている可能性が高いというのが私の実感です。
- やたらと髪をいじる
- 口元を隠すようなしぐさをする
こういった動作をする被疑者は、要注意でした。
もし、あなたがパートナーの浮気や部下の不正を追及していて、相手がやたらと顔のまわり(髪を含む)をさわっているのが気になったら、それは要注意のサインです。
視線が泳ぐ、まばたきが増える
嘘をつくと視線が泳ぐことはよく知られていますが、実は泳ぐ「位置」にも特徴があります。人は自分の利き手側にあるものに安心感を覚えるという原則は先に述べましたが、逆に言えば、利き手の〝反対側〞はその人の不安が現れるエリア。
「嘘がバレるのではないか」という不安があると、視線は自然とそちらのほうに移動していくのです。
他人に利き手と反対側に座られると何となく落ち着かない気分になるのも、自分の不安を見透かされるのではないか、という心理が働くせいかもしれません。
また、「嘘」とは少し違うのですが、視線が下のほうに向きがちなのは、後ろめたいことがあるサイン。
目の前の人に対する申し訳ない気持ちの現れであることが多く、申し出や誘いを断りたいが、なかなか言い出せないときにもよく見られるパターンです。
以前、私は、ある人物に料亭の個室で質問をぶつけたことがありました。
それは、海外の重要人物と接触しているのではないかという、核心に迫る問いでした。
態度や表情から「クロ」である可能性は高いと推測できましたが、彼は、利き手とは反対(左側)の床に視線を落とし、言葉を探すように口をモゴモゴさせていました。
このことからもわかるように、下を向いた相手から前向きな答えが出てくる可能性はきわめて低いでしょう。
まばたきが多いのも、怪しいサインです。
「キョロキョロすると嘘がバレてしまう」と警戒して視線を動かせなかった、視線を外すタイミングを逃してしまった……という理由で、無意識のうちに「まばたき」に逃げ込んでいる可能性があります。
咳払いをする、鼻をすする
取り調べをしていたときに、核心に迫ろうとすると、「咳払いをする」「鼻をすする」といった動作をよくする被疑者がいました。
これには、どんな意味があるのでしょうか?
あまり意味のない生理現象のように思えますが、そこには本人も自覚していない「計算」があるのです。
実は、嘘のストーリーを組み立てようとする被疑者が、考えがまとまるまでの時間稼ぎとして使うのが、このしぐさです。
他に、「座っているイスを引く」「手元の水を飲む」なども、時間稼ぎに使われることがあります。会話を強制的に中断できるからです。
前後の脈絡なく時間を尋ねる人は、答えを待っている間に、裏で嘘の
急に怒り出す
刑事事件の取り調べでは、被疑者に対して、「あなたがやったのではないか」という疑問を遠回しに投げかけることがあります。
このように、何かを追及したときに怒る人には、2つのパターンがあります。
事実無根の場合と、図星の場合。
後者は、認めたくないが、対応に窮して「怒り」で対抗しているわけです。
こういう人は、こちらの目をグッと見返して、「だから、やってないって言ってるじゃないか!」と言いながら、視線を絶対にそらさないという特徴がありました。
また、何に対して怒っているのかも重要です。
隠し事がない人は、「話を聞いてくれない」「説明をさえぎられた」など、こちらの不十分な対応に怒りの感情をぶつけます。
一方で、怪しい人は、「なぜ、こんなことを聞くのか」「自分はどうなんだ」と、別の角度から怒りをぶつけてくる。「怒っている」という表現は同じでも、2つの「怒り」は微妙に異なっているのです。