本記事は、犬塚壮志氏の著書『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています。

交渉
(画像=thodonal/stock.adobe.com)

「頭のいい交渉術」に共通する5つの特徴

頭のいい人の対人関係
(画像=頭のいい人の対人関係)

交渉の前提の違いを理解する

そもそも、「交渉」とは、「利害関係が生じている人たち同士で話し合うこと」です。そして、「はじめに」でもお伝えしたように「頭のいい交渉術」は、「相手をあなたの提案に乗りたい状態にうながしていくテクニック」です。私は、この力を身につけることで誰とでも対等な関係をつくることができると考えています。

では、頭のいい人たちが実際に行っている交渉は、ふつうの人の交渉とどこがどう違うのでしょうか?

私はこれまでたくさんの頭のいい人たちの交渉を見聞きし、文献に当たり、研究してきました。すると、頭のいい人たちの交渉には共通する5つの特徴があることがわかったのです。

この5つを「頭のいい交渉術」を身につけるための「5つの特徴」として紹介します。

頭のいい人の交渉に隠された5つの特徴

共通する特徴とは、次の5つとなります。

  • 特徴(1) 相手に交渉の開始と終了を気づかせない
  • 特徴(2) 相手とぶつからない
  • 特徴(3) 身を守ることを最優先にする
  • 特徴(4) “All-Win”を目指している
  • 特徴(5) 目的にフォーカスして手段を選択する

1つずつ説明していきましょう。

特徴(1) 相手に交渉の開始と終了を気づかせない

頭のいい人は、相手に悟られないように、ごくごく自然に交渉をはじめます。これは「さあ、今から交渉をはじめるぞ!」と、気合いを入れて交渉をはじめようとすると、相手が緊張し、身構えてしまうからです。すると、本来はうまくいくはずだった交渉も、失敗しかねません。

また、頭のいい人の交渉は、常に自然体のため、交渉が終わったことすら気づかれないこともあります。相手は「交渉した」という自覚がないままに交渉を終えることになります。

合意してしばらくしてから、「いつ交渉がはじまって、どこで終わったんだろう?」と感じるほどの自然さ。それが「頭のいい交渉術」の特徴です。

特徴(2) 相手とぶつからない

交渉に論破のイメージを持っている人は意外に思うかもしれませんが、頭のいい人は決して好戦的ではありません。むしろ、交渉が得意と自信を持つふつうの人ほど、論争や激論を好みます。しかし、戦いや衝突は多大なエネルギーがかかるだけでなく、勝ったとしても遺恨が残るもの。それを知っているから、頭のいい人は相手とぶつかったりもめたりしないように交渉を進めるのです。

なお、交渉相手が強ければ強いほど衝突の不毛さは増していきます。頭のいい人は、強大な相手と真正面からぶつかることで勝率が一気に下がることもわかっています。強い相手とはできるだけ衝突しないような対策をとることが「頭のいい交渉術」の大きな特徴です。

特徴(3) 身を守ることを最優先にする

頭のいい人は、その交渉術をまず「盾」として防御に使います。相手が攻撃してきた場合に、自分の身を守ることを最優先に交渉を行うのです。

「はじめに」でも書きましたが、交渉術を身につける最大の目的は、あなた自身を自由にすること。意図的であれ、偶然であれ、相手の都合のいいようにさせてはいけません。交渉で相手の術中に落ちてはいけないのです。

その点、頭のいい人はだまされないような防御策をきちんと講じます。

武道でいう護身術のように、その交渉術をコミュニケーション上の「最強の盾」として使っているのです。

特徴(4) “All-Win”を目指している

頭のいい人はその交渉内容にかかわる人たち(ステークホルダーといいます)全員が誰ひとり不幸にならないような交渉を目指します。交渉の参加者全員が全員、ハッピーになることを重要視していくのです。

ふつうの人はついつい短期的な勝ちや目先の利益を取りにいってしまいます。その結果、交渉にかかわった人たちとの間にしこりや遺恨いこんが残り、軋轢あつれきが生じることもめずらしくありません。その点、頭のいい人は、目先のわずかな利益よりも、中長期的な視点でステークホルダー全員と良好な関係を築くことを優先します。

つまり、頭のいい人は、交渉で「All-Win」を目指しているのです。

特徴(5) 目的にフォーカスして手段を選択する

頭のいい人は、生じた問題や解決の目的に合わせて交渉術を使いわけています。とてつもなく強力なテクニックから、ちょっとしたテクニックまで、幅広いレパートリーがあります。これを交渉の目的に合わせて選び出し、組み合わせて使っていくのです。

また、あるテクニックを使っていても、「これはうまくいかないかも」と思った瞬間に、別のテクニックに即座に切り替える、そんな柔軟性じゅうなんせいを持っています。

注意事項

「頭のいい交渉力」は非常にパワフルで、あらゆる交渉をあなたに優位な結果に導きます。これは、ここまでお読みいただいただけで、すでにその一端は理解いただけたかと思います。

悪用すれば、相手をマインドコントロールすることや高額な商品を売りつけるようなことも可能となるテクニックも数多く含まれています。

そのため、「頭のいい交渉術」を行使する場合は、あなたの身を守ることを最優先にしつつも、相手にダメージをあたえたり不幸にしたりしないよう、倫理観は忘れないようにしていただきたいと思います。

まとめ

・「頭のいい交渉術」5つの特徴

「相手に交渉の開始と終了を気づかせない」
「相手とぶつからない」
「身を守ることを最優先にする」
「“All-Win”を目指している」
「目的にフォーカスして手段を選択する」

頭のいい人の対人関係
犬塚壮志
教育コンテンツ・プロデューサー/株式会社士教育代表取締役
福岡県久留米市生まれ。元駿台予備学校化学科講師。東京大学大学院学際情報学府博士前期課程修了(学際情報学修士)。
大学在学中から受験指導に従事。業界最難関といわれている駿台予備学校の採用試験に当時最年少の25才で合格。年間1,500時間以上の講義を行う中で、難易度の高い内容を理解・納得させるだけでなく、やる気の出ない生徒らを言葉だけで勉強にのめり込ませる話し方のスキルに磨きをかける。受講アンケートでは満足度1位を獲得し、季節講習会の化学受講者数は予備校業界で日本一となる(映像講義除く)。
「教える仕事をしている人がもっと活躍できるビジネスを創る!」を理念に掲げ、2017年に駿台予備学校を退職。しかし独立後は、安く買い叩かれることは日常茶飯事で、謝礼金の未払いや不当な契約解除、金融商品詐欺などを経験する。貯金もすべて尽き、華やかなカリスマ予備校講師時代から一転、仕事だけでなく、お金や人間関係に悩む日々を送るようになる。ストレスで体重は10kg以上増加し健康を害すまでに。妻の献身的な支えもあり、「このままではいけない…!」と一念発起。わずか4ヵ月間の独学で東京大学に入学し、アカデミックな視点からコミュニケーション力を高める決意をする。
認知科学や心理学などを専門に学びながら、交渉学で世界最高権威であるハーバード大学のロースクールで実際に行っている交渉学のプログラムを受講・修了(最高評価を取得)。すべての対人関係を自力でコントロールできるコミュニケーション術を身につけ、それまで抱えていた悩みを一掃する。これまで閲読した交渉をはじめとするコミュニケーションや認知科学、心理学に関する文献は1,000本超。
現在は、講座開発コンサルティング・教材作成サポート・講師養成・営業代行をワンオペで請け負う(株)士教育を拡大中。企業向け研修講師としての登壇実績も豊富で、交渉スキルを含む「説明力」をテーマにした研修プログラムは、大企業から中小企業まで登壇オファーが殺到。受講アンケートにおいては、「満足度」・「活用期待度」はいずれも95%超。
その傍ら、企業と協同した教育事業の新規立ち上げプロジェクト3件の中心メンバーとしても活躍。「人生の悩みは対人関係から生まれ、それらはすべて交渉力で解決できる」が信条。
主な著書に、累計5万部越えのベストセラーとなった『頭のいい説明は型で決まる』、発売1ヵ月で1.5万部を突破した『感動する説明「すぐできる」型』(共にPHP研究所)、電子書籍を含め4.6万部を突破した『説明組み立て図鑑』(SBクリエイティブ)がある。

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