本記事は、ティモシー・オルセン氏の著書『アメリカの高校生が学んでいる投資の教科書』(SBクリエイティブ)の中から一部を抜粋・編集しています。

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投資信託はなぜ、優れた投資法なのか

投資信託が優れている理由はいくつかある。おそらくもっとも重要なのは、手軽に分散投資ができるということだ。ただ投資信託を買うだけで、株式や債券などに広く分散されたポートフォリオを組むことができる。

また、プロに投資をまかせられるという利点もある。ファンドマネジャーと呼ばれるお金のプロが、あなたの代わりに株や債券を選んで運用してくれるのだ。分析やリサーチはすべてプロがしてくれるので、あなたはただ投資信託を買うだけでいい。これはある意味で、投資信託を買っている人たちが共同でお金のプロを雇い、運用を依頼しているのと同じことだ。

一方で運用を担当するプロたちは、全員が同じ投資をするのではなく、それぞれの流儀で運用を行っている。彼らプロたちの運用方法は、大きく「アクティブ」と「パッシブ」の2種類に分けられる。アクティブに運用される投資信託(ファンド)は「アクティブファンド」、パッシブに運用される投資信託は「パッシブファンド」と呼ばれる。

アクティブファンドとパッシブファンド

アクティブファンドとパッシブファンドの違いを理解するのはとても大切だ。難しいことではないが、最終的な運用成績に与える。影響はかなり大きくなる可能性がある。

アメリカの高校生が学んでいる投資の教科書
(画像=アメリカの高校生が学んでいる投資の教科書)

アクティブファンドとは、市場平均よりも上の成績を目指すファンド(投資信託)のことだ。投資のプロたちがチームを組み、会社、業界、市場全体について幅広く情報を集めて詳細な分析を行い、できるだけ多くのリターンが期待できる銘柄を選んで運用する。

しかし、市場に勝つのは簡単なことではない。ときどきは勝てることもあるだろうが、継続して勝つのは、不可能とはいわないまでも、やはりとても難しい。

たしかに歴史をふり返れば、伝説のファンドマネジャーと呼ばれるような人たちは存在する。たとえば、資産運用会社レッグ・メイソンのビル・ミラーや、投資信託の販売・運用会社フィデリティ・インベストメンツのピーター・リンチは、市場平均をはるかに上回る成績を残した。しかし、ほとんどのアクティブファンドは市場に勝つことができない。たとえば、S&P500という有名な株価指数に勝てるファンドマネジャーは、今も昔も一貫して20%以下だ。

アクティブファンドがほとんど勝てない理由の1つは手数料だ。投資信託のリターンで、手数料はとても大きな位置を占めている。手数料についてはまた後で詳しく学ぶが、とりあえず今のところは、ファンドを運用するプロたちはタダ働きするわけではないということを理解しておけば十分だ。彼らはたいてい高給取りであり、そして私たち投資家が支払う手数料が彼らの給料になっている。

そこで登場するのがパッシブファンド、またの名を「インデックスファンド」だ。インデックスファンドとは投資信託の一種で、市場指数(インデックス)に連動するように設計されている。ファンドマネジャーが独自に銘柄を選ぶのではなく、指標となる指数と同じ動きをするように受け身的(パッシブ)に運用する。そのため、ファンドマネジャーが独自に運用するアクティブファンドよりもリスクが小さく、手数料も安い。

インデックスファンドは、市場指数とまったく同じ銘柄を保有する。たとえば、バンガード500インデックス・ファンド(VFIAX)に含まれる銘柄は、S&P500という株価指数に含まれる銘柄とまったく同じだ。

アメリカの高校生が学んでいる投資の教科書
(画像=アメリカの高校生が学んでいる投資の教科書)

もっと幅広い銘柄に投資したい場合は、CRSP USトータル・マーケット・インデックスや、ダウ・ジョーンズU.S.トータル・マーケット・インデックスなどの指数に連動するインデックスファンドがおすすめだ。具体的には、バンガード・トータル・ストック・マーケット・インデックス・ファンド(VTSMX)や、フィデリティ・トータル・マーケット・インデックス・ファンド(FSKAX)などがある。

一般的に、インデックスファンドはアクティブファンドよりもリスクが低く、手数料も安い。この2点だけでも、インデックスファンドを優れた投資方法と呼ぶ十分な理由になる。しかし残念ながら、証券会社は手数料で儲けているために、手数料の安いインデックスファンドを顧客にすすめることはめったにない。

インデックスファンドの利点は他にもある。それは、運用にかかる税金を節約できることだ。基本的に、インデックスファンドは基準となる指数に連動するだけなので、ファンド内で株の売買が頻繁に行われるわけではない。売買の回数が少ないと、売却時にかかる税金も減り、その結果、投資家が負担するコストも少なくなる。

インデックスファンドはいい投資ではないと主張する人も多い。ただ市場指数と同じ成績になるだけで、市場に勝つことはできないからだ。しかし、私の考えは違う。インデックスファンドは、まさに「市場指数と同じ成績」だからこそ優れた投資なのだ。むしろ最高の投資の1つといってもいいだろう。

そもそも、ほとんどのアクティブファンドは市場に勝つことができない。その大きな理由は、手数料が高いことだ。そのため、指数と同じ動きで、手数料が安いインデックスファンドは、それだけでほとんどのアクティブファンドに勝つことができる。

長い目で見れば、インデックスファンドのほうがアクティブファンドよりいい成績を上げるのが一般的だ。理由は主に2つある。

  • インデックスファンドは手数料が安く、分配金に払う税金も少ないから。
  • インデックスファンドは市場に勝つのではなく、市場と同じ成績を目指すから。

どうだろう? インデックスファンドがとても優れた投資であることがおわかりいただけただろうか。ドルコスト平均法で毎月コツコツ積み立てれば、インデックスファンドの力をさらに引き出すことができるはずだ。

上場投資信託(ETF)

投資信託にはもう1つ、「上場投資信託(ETF)」という種類もある。ETFとは、株式と同じように取引所で売買できる投資信託のことだ。クローズドエンド型投資信託(自由に解約して現金化できない投資信託)を除き、さまざまな投資信託がETFとして売買されている。ほとんどのETFはインデックスファンドだ。

インデックスファンドとETFには多くの利点がある。

さまざまな株式投資信託

投資信託はさらに、どんな資産クラスに投資するかによってさまざまな種類に分けられる。ここでは主な種類をいくつか紹介しよう。それぞれの簡単な説明に加え、どんな投資家に向いているかについても考えていく。

株式投資信託(株式ファンド)とは、読んで字のごとく、株式に投資する投資信託だ。ファンドにどんな株を組み込むかは、投資スタイルと投資目的によって大きく異なる。

投資スタイルにはいくつかの側面がある。

第一の側面は、どの国の株に投資するかということだ。アメリカ株に投資するファンドもあれば、外国株に投資するファンド、両方を組み合わせて投資するファンドもある。複数の国を組み合わせたファンドを選ぶなら、どの国の株に何%を投資しているかという割合を確認しておくこと。

第二の側面は、個別株投資と同じように、攻撃的か、それとも保守的かという点だ。伝統的に、攻撃的なグロース株ファンドは、グロース株を中心によりリスクの高い投資を行う。中でも特に攻撃的なのは、NASDAQ、IPO、その他のスタートアップ企業の株を運用するファンドだ。

グロース株ファンドのいちばんの目的は、「値上がり益(キャピタルゲイン)を最大化すること」だ。そのためこのファンドは、投資期間を長く取れる若い投資家にもっとも適している。対して保守的なファンドの多くは、ブルーチップなどの安定した大企業に投資することが多い。

そして第三の側面は、投資する会社の規模だ。会社の規模は株式の「時価総額」で判断する。前にも見たように、時価総額を基準にした会社の規模は、大型、中型、小型、超小型に分けられる。

伝統的に、もっともリスクが低いのは大型株に投資する大型株ファンドだ。攻撃的なグロース株ファンドよりリスクを低く抑えながら、平均以上のリターンを達成することを主な目的としている。

中型株ファンドは、大型株ファンドよりはリスクがあるが、グロース株ファンドよりはリスクが低い。小型株ファンドは、中型株ファンドや大型株ファンドよりもかなりリスクが高いとされている。そして最後に、超小型株ファンドは昔からもっともリスクが高いとされてきた。

加えて、さらに「高配当株ファンド」と呼ばれる投資信託もある。高配当株ファンドとは、名前からもわかるように、平均より高い利回りで配当を出す株式に投資するファンドのことだ。長期的な成長を狙いながら、元本割れのリスクを低く抑えることができる。このファンドは株式だけでなく「転換証券」や債券にも投資する。転換証券とは、あらかじめ決められた日時と価格で、別の種類の証券と交換できるオプションのついた証券のことだ。転換証券の債券、優先株、無担保社債を持っている人は、その会社の普通株と交換できる。

高配当株ファンドがもっとも向いているのは、保守的な投資を好み、投資期間が短い投資家だ。その理由の1つは、ファンドからの分配金が、すでに分散されたポートフォリオの補完になること。分配金を同じファンドに再投資するなら、その効果がさらに大きくなる。

投資信託には「バランスファンド」と呼ばれるものもある。これは優先株、普通株、債券など、さまざまな資産にバランスよく投資するファンドだ。高配当株ファンドと同じように、このファンドも保守的な投資家に向いている。ほとんどのバランスファンドは、攻撃的なアクティブファンドほどのリターンは期待できないからだ。その反面リスクは低いので、ポートフォリオの安定性には貢献してくれる。市場が値下がりしても、アクティブファンドほどの影響は受けない。

グロース株と高配当株に加え、さらに債券にも投資したいという人は、「グロース&インカム型ファンド」がおすすめだ。名前からもわかるように、このファンドは高配当株とグロース株に投資する。株価の値上がりと利子や配当といったインカムゲインの両方を狙うファンドで、投資家の間で人気が高く、ポートフォリオの中心にしている人も多い。

アメリカの高校生が学んでいる投資の教科書
ティモシー・オルセン
金融の専門知識が豊富な個人投資家。わずか13歳のときに、本書のオリジナル版である『The Teenage Investor』を出版し、現在の年齢は30代前半になる。同書は、ティーンエイジャーがティーンエイジャーに向けた書いた投資ガイドという点で画期的な一冊だった。本の出版以来、長年にわたってティーンを対象にした金融・投資教育の重要性を訴えてきた。ルイジアナ州立大学でファイナンスの学士号、ロヨラ大学ニューオーリンズ校で修士号をそれぞれ取得。多数の高校や会議で金融と投資に関する講演を行い、CNBCやブルームバーグをはじめとする金融情報のテレビ番組にもゲスト出演の経験がある。

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