本記事は、白濱龍太郎氏の著書『ぐっすり眠る習慣』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

ベッド
(画像=Brilliant Eye/stock.adobe.com)

自然と夜に眠気が訪れる

朝食時、積極的にとりたいのは、トリプトファンという栄養素を含む食材です。

トリプトファンは必須ひっすアミノ酸のひとつで、体内に入ると自律神経の働きを活性化させ、心のバランスを整えるセロトニンというホルモンに変わります。そして、日中に体内で分泌されたセロトニンは、夜になると今度は酵素こうその働きによって、自然な睡眠をうながすホルモンであるメラトニンに変化。これにより、朝から一定の時間が経過すると、自然と眠気が訪れるメカニズムが働きます。

トリプトファンを多く含む食品は、納豆やみそなどの大豆製品や、チーズやヨーグルトといった乳製品、卵、ナッツ類など。トリプトファンはインスリンによって脳へと運ばれるので、糖となってインスリンの分泌をうながす白米もあわせてとるのがいいでしょう。セロトニンの合成に不可欠なビタミンB6を多く含んでいるカツオ、マグロ、鮭といった魚を一緒に食べれば文句なしの朝食です。

これらの食品からまず思い浮かぶのが、焼き鮭、みそ汁、納豆、白米といった典型的な和の朝食メニューでしょう。これは、ぐっすり眠るうえでは理想的といえる内容です。洋の朝食がお好みならば、ベーコンエッグ、ヨーグルト、チーズトーストといったメニューがおすすめです。

また、規則正しい朝食には、体内時計を調整する効果もあります。朝は太陽光をしっかり浴びて起床し、それから必ず1時間以内に朝食を済ませましょう。

毎日のヨーグルトが睡眠ホルモンをつくってくれる

腸内環境を整えてくれるだけでなく、トリプトファンも豊富に含んでいるヨーグルトを毎日食べる習慣は、ぐっすり眠ることにつながります。

脳がつかさどる睡眠と腸内環境になんの関係があるのか? と思われるかもしれません。でも、このふたつは意外なほど深くかかわっています。

例えば、睡眠ホルモンであるメラトニンは脳の松果体で分泌されますが、その材料となるセロトニンというホルモンのほとんどは、腸内でつくられています。この事実からも無関係ではないと感じていただけるはずです。

腸という器官は、「第二の脳」とも呼ばれる独自の神経ネットワークを有しています。通常の器官は、脳からの指令なしには活動できませんが、腸については話が別。脳からの指令なしに活動できるどころか、腸の状態が脳の機能に影響を及ぼすという「逆ルート」すら存在します。

つまり、「脳→腸」という一方通行ではなく、両者は密接に関係しているということ。これが、最近注目を集めている、「脳腸相関のうちょうそうかん」と呼ばれるものです。

腸内にある菌には、身体にいい働きをする「善玉菌」と、逆に悪い働きをする「悪玉菌」、どちらにも属さず優勢なほうに加担する「日和見ひよりみ菌」の3種類が存在します。腸内環境をよくするには、当然ながら善玉菌を増やしたほうがいいですね。それにうってつけなのが、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌を多く含むヨーグルトなのです。

量の目安としては、1日に200グラムとれれば十分です。腸内でメラトニンを効率よくつくり出すには、朝と夜に100グラムずつ食べるのが理想的です。

プレーンヨーグルトの酸っぱさが苦手ならば、ビフィズス菌が好んでエサとするオリゴ糖を少し加えたり、バナナやキウイ、メロンといった甘みのある果物とあわせて食べたりするのがおすすめです。これらは、トリプトファンだけでなくビタミンB6も豊富に含んでおり、ヨーグルトと相性がいい果物の代表格です。

ぐっすり眠る習慣
白濱龍太郎
睡眠専門医
筑波大学卒業、東京医科歯科大学大学院統合呼吸器学修了(医学博士)。公立総合病院睡眠センター長などを経て、2013年に「RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック」を設立。これまで2万人の睡眠に悩む人を救ってきた。自身がオンオフを切り替えるのが苦手だったという過去から、いかに睡眠が日中の活動に影響するかを実感し「睡眠投資」という考えを発信。マイクロソフト、PHILIPSなど世界的企業での講演や、東京オリンピックでは選手村で選手をサポートするなど、ビジネスやスポーツ界からの信頼も厚い。慶應義塾大学特任准教授、国立大学法人福井大学客員准教授、武蔵野学院大学客員教授、日本オリンピック委員会(JOC)強化スタッフ、ハーバード大学公衆衛生大学院客員研究員などを兼歴任。『誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』『いびきを自分で治す方法』(アスコム)など著作多数。「世界一受けたい授業」(日本テレビ)、「めざましテレビ」(フジテレビ)などメディアにも広く出演している。

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