2時間の映画を3秒でダウンロードできるといわれる通信規格「第5世代移動通信方式 (5G) 」のサービスを、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが2020年3月に相次いで開始した。まさに“通信の未来”が到来したかに見えたが、早くも次の6Gを見据えた動きが始まっている。そのひとつが、NTTグループが推進する次世代ICT基盤構想「IOWN (アイオン:Innovative Optical and Wireless Network) 」である。

IOWNが普及することで、コネクテッドカーや自動運転、遠隔医療など、消費者の生活を一変させる変化が起きると考えられている。NTTが世界の企業を巻き込み新たな標準をつくろうと試みる、IOWNとは何だろうか。

IOWNとは ?

6G時代の基盤 ! NTTが実現を目指す「IOWN」とは
(画像=sitthiphong / stock.adobe.com)

IOWNは、2019年5月にNTTが明らかにしたICTのインフラ構想である。インフラという言葉の通り、6G時代を見据えた、いわば“土台”を築こうとするものだ。技術面の詳細はここでは割愛するが、簡単に言えば、光回線などで馴染みのある方も多いであろう「光技術」を応用し、低遅延、低消費電力かつ大容量、高品質のネットワーク環境の整備を目指すというのが趣旨である。

IOWN構想の提唱者であるNTTは、IOWNを“最先端の光技術を活用して豊かな社会を創るためのネットワーク・情報処理基盤の構想”と位置づける。IOWN構想が実現することで、医療、金融、教育、交通、エネルギーといった日常生活にかかわる分野へ恩恵がもたらされるという。2026年度中のIOWNの商用展開を目指して、NTTは研究開発を推し進めているところだ。

なぜIOWNが注目を集めているのか ?

IOWNが注目を集める背景のひとつには、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT (Internet of Things) の急速な広がりが関係している。IoTが広がり、社会がより便利に暮らしやすくなっていく一方で、膨大なデータ量の処理、通信の機密性・安定性、電力消費量の肥大化といった課題を指摘する声も少なくないが、IOWNはそうした課題のソリューションになりうるからだ。

例えば、自動運転技術では、自動車に搭載したカメラがデータを読み取り、それをインターネット経由でクラウド上のAIに送信し、AIが解析して車両に必要な情報を返送する。その時に、万が一にも通信の遅延が発生すれば、瞬発的な動作ができなくなるため交通事故につながりかねない。

その点、IOWN構想が目指す社会が実現すれば、高速かつ高品質に自動車に情報を伝達することが可能になり、事故の発生率を大幅に抑えられる。同じことは、医療における遠隔手術などでも指摘できるだろう。

●IOWNと5Gの違いは ?

IOWNと5Gの違いは、まず、前者がインフラ構想であるのに対し、後者は通信規格である点が挙げられる。5Gの次なる社会を目指す上では通信インフラの「限界」を打破する必要があり、そのためのインフラを築こうとする構想がIOWNだと言えるだろう。

●IOWNと6Gの関係は ?

5Gと同様に、6Gは次世代通信規格を指す。5Gの10倍以上もの通信速度が期待される6Gを社会実装するためには、それを最大限に活かせる通信インフラの構築、つまりIOWN構想の実現が急務ということになる。

世界的に6Gの研究開発が進み、こうした次世代の通信インフラの構築の議論が始まっている中で、NTTは6G時代のネットワーク分野で世界的に主導権を握る意味でも、世界標準となりうるIOWNの普及推進を加速させていると目される。

また、IOWNが実現する高速大容量通信と低消費電力は、総務省が打ち出す「Beyond 5G推進戦略」においても中核要素とされている。IOWNの実現は、国内の通信インフラの飛躍的な進歩につながるだけでなく、日本の国際競争力を高めることにもつながっていくだろう。

NTTとNTTドコモはIOWNにつながる実証実験を進める

IOWNの実現に向けた取り組みは、すでに進行中だ。NTTと NTTドコモは、富士通、NEC、Nokiaの3社と協力して、2022年度内からIOWNに関する実証実験を開始すること明らかにしている。

この実証実験は、IOWN構想実現、そして2030年頃の6Gサービス提供開始のための礎と位置付けられており、広い帯域にまたがる周波数帯の有効利用や、AI技術による無線伝送方法など、さまざまな移動通信技術の検証が行われる。

IOWN Global Forumを中心に、IOWNの研究開発が進む

NTTは、当初から世界を視野に入れてIOWN構想を考えており、2020年にIOWNの実現に向けて米Intel、SonyとともにIOWN Global Forum (IOWN GF) という組織を米国に設立している。IOWN GF のWebサイトによれば、現在の加盟数は84。国内外の名だたる企業や団体が参画していることがわかる。

今後も、このIOWN FGを中心にIOWNの早期実現に向けて取り組んでいくのは確実だろう。ロードマップを参照する限り、目下の動きとしては2022年度から2025年度にかけて、大容量低遅延データ通信方式や、多地点・超高速・低遅延クラウドコンピューティングといった各技術の仕様整備を進めていくところだろう。もちろん並行して、先に紹介したような実証実験の動きも、ますます拡大していくものと思われる。

IOWN構想には、日本の半導体再興の基軸に据えるべきだと指摘する声も上がっている。日本にとって重要な技術として、IOWNへの期待は今後さらに高まっていくだろう。

(提供:大和ネクスト銀行


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