本記事は、内藤誼人氏の著書『10秒で人を操る心理術』(PHP研究所)の中から一部を抜粋・編集しています。
【心理術】
思いどおりの答えが得られる質問の仕方
「誘導尋問」とは、質問する者が希望する内容の答弁を誘導することで、その供述を得ようとする質問手法です。
裁判では証人に対して誘導尋問することが禁じられているほど強力な心理術であるため、決して悪用してはいけませんが、じつは誰にでもできる手法でもあります。
フィラデルフィアにあるアーサイナス大学のガブリエル・プリンサイプ教授は、175名にあるお話を聞かせて、それから記憶のテストと称し、その内容について質問をしました。
ただし、その質問は、あえて事実とは反するような聞き方をしました。
たとえば、お話の中では「ウサギがニンジンを食べた」などという事実はなかったのに、質問者はそしらぬ顔をして「ウサギが食べたのは何でしたか? ニンジンでしたか? それともレタスでしたか?」と尋ねたのです。
すると90%の人が、どちらかの野菜を「食べた」と答え、「ウサギは何も食べていません」と正しく答えられた人はわずか10%しかいませんでした。
つまり、相手の反応というものは、こちらの質問の仕方によって大きく歪めることができるということです。
「ワーディング」の効果
じつは、こうした誘導尋問のことを心理学では「ワーディング」と呼び、それを心理学の実験で使用することは厳しく戒められています。恣し意い的な調査結果を出すことなど、たやすいからです。
しかし、あなたが仕事やプライベートの場で実践するぶんには何も問題ありません。
たとえば「みんな賛成してるんだけど、この企画どう思う?」と質問すれば、相手はかなりの確率で賛成してくれるでしょう。人を味方につけるには、巧みな質問によってうまく誘導してやることが肝心です。
相手の反応はこちらの質問によって変わる
【心理術】
相手が自ら謝り出す驚きの質問とは?
なぜ、えん罪が起きるのか? なぜ、自分に不利なウソをついてしまうのか?
米国の心理学者S・カッシン博士の実験を紹介しましょう。
博士は被験者に、パソコンに一定速度で指示どおりのキーを打つ作業を与えました。ただし、その際に「Alt キーを押すとデータが全部消えてしまうので、絶対に押さないように」と念を押しておきました。
しかし、作業を始めてしばらくすると、突然パソコンが停止。被験者には隠して、あらかじめプログラミングされていた事態です。
被験者たちはAlt キーを押してはいないのに、いきなりパソコンが停止したので慌てふためきました。
そこに驚いた博士が走ってきて「キミがAlt キーを押したのか?」と問いつめた。「自分でも知らないうちに指が触れたんじゃないのか?」と詰問された被験者たちは、はたしてどんな反応を示したのでしょうか――。
覚えのないミスでも人は謝る
なんと、69%もの人が「はい、押しました」と認めてしまったのです。押した覚えなどありもしないのにです。
しかも、どうやって押したのかと尋ねると「こう、こうかな? こんな感じに小指が……」などとインチキな記憶まで作り上げたのです。
つまり、覚えのないミスを他人から強引に責められると、そのストレスから逃れるために、人は安易に自分の落ち度を認めてしまうということです。
たとえば、あなたの連絡ミスでミーティングに遅刻してきた部下がいたら、あなたは素直に謝るかわりに、「2日前に知らせただろうが! メールチェックしてないのか!?」と逆に部下の失態を責めてみたら、どうなるでしょうか。
かわいそうなその部下は、きっと自分の落ち度を認めてしまうでしょう。
人は安易に自分の落ち度を認めてしまう
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。
『世界最先端の研究が教える すごい心理学』(総合法令出版)、『いちいち気にしない心が手に入る本』(三笠書房)など著書多数。※画像をクリックするとAmazonに飛びます