本記事は、高橋慶行氏の著書『月10万円を稼ぐ トレード1年目の教科書』(自由国民社)の中から一部を抜粋・編集しています。
「pips」とはFX特有の値幅の単位
「FX(Foreign Exchange)」とは、2つの通貨の売買で利益を狙う投資商品で、日本語でいえば「外国為替証拠金取引」のことです。
FX取引で出てくる「pips」とは?
2つの通貨の売買というのは、例えば、ドルと円ならば「ドルを買って円を売る」「ドルを売って円を買う」というように、一方の通貨でもう一方の通貨を買ったり、売ったりすることをいいます。これが「通貨ペア」です。
そして、「ドル」といえば普通はアメリカの通貨ですが、ほかにもオーストラリアドル(豪ドル)、ニュージーランドドル(NZドル)、香港ドルなどもあるので、為替の世界では「米ドル」と呼ばれます。通常、ドル円といえば米ドル円を指します。
これまで何度か説明してきたように、利益の公式は「利益=数量×値幅」ですが、FXの値幅は「pips」(ピップス)というFX特有の単位が使われます。
通貨の売買ということで、米ドル円を考える時、1ドル135円から136円までを買い持ちで利益とした場合、「1円を利益にした」と値幅を表現できると思います。しかし、FXの世界では「100pipsを利益にした」と表現することが世界標準となります。
円と米ドルの単純な比較であれば、株式投資のように「何円幅を利益にした」ということで通じるとは思いますが、FXでは多くの通貨を扱うのでそうはいきません。2月初旬のある日の1米ドルは対円だと約132円、1ポンドは対円で約159円、対ドルでは1.2049ドルという具合で、もうわからなくなります。
例えばポンドと米ドルで売買して、ある一定の値幅を利益にした場合、「1米ドル幅」などという表現になるかもしれません。
そうなると、1円幅と1米ドル幅は、どっちがどれだけ値幅が広いのかどうか、各国の通貨の単位でバラバラに表現されると、それぞれどれくらいの変動幅なのか、わからなくなるということです。
これを解消するための単位が「pips」なのです。pipsを用いると、「米ドルは10pipsの変動」「ユーロは20pipsの変動」「ポンドは30pipsの変動」などと、異なる通貨間であっても、容易に値幅が把握できるようになります。
1pipsの定義は厳密にいえば、FX会社ごとに異なるので、詳細は口座開設したFX会社で確認していただきたいと思いますが、よくあるケースをご紹介します。
1pipsとはいくらなのか?
米ドル円、ユーロ円、ポンド円など円が絡む場合は、1pips=0.01円(1銭)としているFX会社が多いです。1円幅が100pipsという具合です。一方、ユーロドル、ポンドドルなどの場合は、1pips=0.0001ドルとしているFX会社が多いです(図表2)。
また「利益=取引数量×獲得値幅」という公式で、米ドル円を考えると、1,000通貨の取引数量で、100pips(1円幅)を獲得すると1,000円の利益となります。1万通貨の場合には、100pipsで1万円の利益となります。
獲得値幅をpipsで考えるメリットはほかにもあります。人はリアルなお金の損得を見ると、冷静に判断できなくなる傾向があります。取引数量が大きければ大きいほど、ちょっとした値幅でも、損得が大きく動きます。
また、波動の転換や波動の継続、もみ合い放れなどを基にした売買をしようと思った時、本来であれば獲得すべき「値幅」で判断すべきなのに、管理画面の含み益や含み損を見ることで感情が左右され、あらかじめ決めていたルール通りの売買がしにくくなる場合があります。
このような時に、pipsで獲得値幅を考える習慣があると、リアルなお金から距離ができて冷静に判断しやすくなります。
FXの通貨ペアの種類と特徴を知る
FX口座を開設していざ取引を始めようとすると、「どの通貨ペアを選べばいいのかわからない」という方も多いと思いますので、それを説明しましょう。
メジャー通貨から通貨ペアを選ぶFXで取引される通貨は数多く存在しますが、一般的には「メジャー通貨」と「マイナー通貨」に分かれます。
メジャー通貨は、米ドル(USD)、ユーロ(EUR)、円(JPY)、ポンド(GBP)、豪ドル(AUD)、スイスフラン(CHF)、カナダドル(CAD)、ニュージーランドドル(NZD)などがあります。
ただ、メジャー通貨の中でも差があり、世界的に取引量が多い主要通貨は、世界三大通貨と呼ばれる「米ドル、ユーロ、円」と、さらには「ポンド」です。これらを通貨ペアとして組む場合には、流動性が高いため相場が安定し、取引の特徴がつかみやすく、「スプレッド(買いと売りの価格差)」が狭いというメリットがあります。
マイナー通貨は初心者には不向き
マイナー通貨とは、トルコリラ(TRY)、南アフリカランド(ZAR)、メキシコペソ(MXN)、ブラジルレアル(BRL)、ロシアルーブル(RUB)、中国人民元(CNH)などがありますが、中国を除けば新興国の通貨であり、流動性が低く、地政学的リスクの影響面でも大きな値動きになりがちなので、リスクは高く初心者にはオススメできません。
●高金利通貨のスワップ金利に惑わされない
新興国のマイナー通貨は金利が高い場合が多く、スワップ金利(通貨の金利差で得られる収益。高金利の通貨を低金利の通貨で買い持ちすると、毎日得られる「金利」のようなもの)が高い傾向があります。
「持っているだけで金利がもらえる」というトークで、金融マンからマイナー通貨への投資を営業されることもあるかもしれませんが、高い金利の通貨は、「それだけの高金利を払ってでも資金調達をしたい」ということでもありますから、リスクは高いと思っていて間違いありません。
トレード1年目は、主に米ドル円、ユーロドル、ポンド円、ポンドドル、ユーロ円などの主要ペアで取引されることをオススメします。
主要通貨ペアの特徴
米ドル円は、日本人にとって最もなじみがあり、最も初心者向けでありながら、「日米金利差が開く」などの状況下では利益を上げやすい通貨ペアだといえます。
お金は基本的に、「金利が低い通貨から高い通貨に流れる」という性質があります。
2022年の米ドル円は、「日本は金利を上げず、米国はインフレを抑え込むために金利を上げる」という金融政策が取られ、日米金利差が拡大する状況下で「1ドル120円、130円、140円、それ以上(円安が拡大)」と、大きな上昇トレンドが発生しました(図表5)。
日本とアメリカの経済や社会の情勢は、日本にいながら得られる媒体も数多くあるので、情報収集がしやすいという利点もあります。
ユーロ円は、米ドル円を除くとクロス円の中では最も取引量が多く、スプレッドも狭い通貨ペアです。
世界で見ると、米ドルに次いで取引量が多いのがユーロということもあり、米ドル円と同様、トレンドや波動が出やすいといえます。東京市場に続いてロンドン市場も開きますので、日本時間の16時〜17時頃から取引もしやすいでしょう。
値動きの大きな流れを見るには、ユーロ圏内の各国の中でも最大の経済大国とされるドイツや、それに次ぐフランスの経済指標は参考にすべきと思います。
ユーロ米ドルは、図表4のように、世界で最も為替取引が行われている通貨ペアで、スプレッドも狭く、ロンドン市場が開く日本時間の16時〜17時頃から急に動き始めることが多いです。
ポンド円は、値動きが激しく、動き出すと一本調子になりやすい通貨ペアなので、短期的に大きな値幅を狙いたい方に向いていますが、スプレッドは広めに設定されています。したがって、スキャルピングよりはしっかり値幅を獲得できる「デイトレード向き」だといえます。
宮城県仙台市で教師一家に生まれる。成蹊大学経済学部卒業。
大学時代に学生起業、インターンシップ等に明け暮れ、特に税理士、会計士に接する日々を送り税金対策の重要性を知る。その経験から、「学校では学ばないけれど、日本で豊かに歩むためには大切だと思われる教育事業をやる」と決める。
社会人になりリクルート社の新卒斡旋サービスで営業に従事し、No.1表彰を受けたのちに2008年に独立起業。事業を継続する傍ら、「投資利益の課税が約2割」という税制面と自由度の高い収入源候補としての「投資」に関心を持つ。
2013年に、投資のエキスパート集団とともに投資の学校事業を創業するべく、株式会社ファイナンシャルインテリジェンスを設立。自らも投資家として活動する傍ら、投資教育事業と並行し、約10年で2万時間以上を費やし、安定的な利益が得られるようになる。主に退職直前、退職後のシニア層や空いた時間に自宅にいながら投資で生活の糧となる月収を作りたい会社員、主婦層が学び、2023年には、のべ15万人以上が受講する投資の学校事業へと成長する。
親が子供や孫のために正しく伝えるべき、お金や投資、自立のための総合的な教養を広めることがライフワーク。
著書に「12万人が学んだ投資1年目の教科書」「投資の学校」(いずれも、かんき出版)がある。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます