ITスキルの証明になるITSS資格

ITSSのレベルを測る資格として、経済産業省は「情報処理技術者」と呼ばれる国家資格を実施している。人材育成の目標設定や採用活動の指針として、この国家資格は分かりやすい判断基準になるだろう。

全ての資格が役に立つわけではないが、一つずつ概要を確認していこう。

入門レベルのIT知識が求められる「ITパスポート」

ITパスポートは、ITSSのレベル1にあたる国家資格である受験。全ての社会人に必要な「共通的知識」が出題範囲であり、合格するためには以下のような知識水準が求められる。

<ITパスポートで求められる知識水準>
・一般的な企業に導入されるオフィスツールを活用できる
・データを利活用するための論理的な思考力がある
・関連法規や情報倫理に従って行動できる
・情報システムの開発または運用に関する知識がある
・新しい技術や手法(AIやIoT、アジャイル開発など)に関する知識がある

ITパスポートの受験者は毎年増えており、2021年には約21万人が受験した。情報処理推進機構の資料によると、合格率はおよそ40~58%前後で推移している。

ITエンジニアの登竜門とされる「基本情報処理技術者」

ITパスポートが入門レベルであるのに対して、基本情報処理技術者はITエンジニアの登竜門とされる国家資格だ。ITSSのレベル2にあたり、試験では以下のような知識水準が求められる。

<基本情報処理技術者で求められる知識水準>
・IT全般に関する基礎知識を理解できている
・上位者の指導のもと、以下の業務をこなせるレベルにある
 1.IT戦略に関する予測や分析、評価ができる
 2.システムやサービスを提案できる
 3.システムの企画や要件定義ができる
 4.セキュリティを意識してシステムの設計や開発、運用ができる
 5.ソフトウェアを設計できる
・上位者の方針を理解した上でプログラムを作成できる

上記の通り、実務的なスキルを備えた人材でないと基本情報処理技術者に合格することは難しい。近年の合格率は40%を超えているが、実務経験があっても数十時間の勉強が必要と言われている。

実務を主体的にこなす知識が求められる「応用情報処理技術者」

応用情報処理技術者は、高度IT人材を対象にした国家資格である。ITエンジニアのステップアップとして活用されており、基本情報処理技術者よりも専門的・実務的な知識が求められる。

<応用情報処理技術者で求められる知識水準>
・経営者の考えを理解し、外部環境を正確にとらえて情報収集(動向や事例)ができる
・モニタリング指標に基づいて差異分析などができる
・システムやサービスの提案書を一部作成できる
・システムに関する要求を整理し、採用する技術を調査できる
・IT開発のメンバーとして、安定したサービス提供や稼働ができる
・リーダーのもとで予算管理や工程管理、品質管理ができる
・上位者の考えを理解した上で、技術的な問題を解決できる

応用情報処理技術者に合格した人材は、チームの主力になることが予想される。開発や運用に加えて、クライアントへの提案や管理業務もこなせるため、会社にとっては貴重な人材といえるだろう。

高度情報処理技術者

高度情報処理技術者は、ITSSの中でも最高難易度とされる国家資格である。以下のように9つの試験区分があり、いずれの区分でもさらに専門的な知識が問われる。

<高度情報処理技術者の試験区分>
・ITストラテジスト
・システムアーキテクト
・プロジェクトマネージャ
・ネットワークスペシャリスト
・データベーススペシャリスト
・エンベデッドシステムスペシャリスト
・ITサービスマネージャ
・システム監査技術
・情報処理安全確保支援士

この資格を取得した人材は、いわゆる各分野のスペシャリストにあたる。ITSS以外の資格と比べても難易度が高いため、社内教育に加えて従業員本人による努力も必要になるだろう。