old-409241_1280


後期高齢者特例制度が廃止へ

75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度で、厚生労働省が低所得者などの保険料負担を本来よりも軽減している特例を見直す方針を示した。厚生労働省によれば、規定路線では2016年度に特例を廃止する見通しである。

これまで低所得者については、保険料の中で全員が支払う「均等割」を最大7割ほど軽減するのが本来のルールであったが、特例で最大9割の軽減とされていた。75歳になるまで家族が入る医療保険の被扶養者にも特例があり、2年に限り5割軽減される均等割が、無期限で9割程度の軽減となっていた。

今回の改正の対象となる高齢者は約865万人にのぼるとされており、加入者の半数を超える。保険料負担が3倍にもなる世帯が生まれるなど、2008年の改正以来最大の改悪といってもよいだろう。


後期高齢者特例制度の政治的な背景

後期高齢者特例制度自体も導入の時点で様々な論争はあった。2008年に後期高齢者医療制度が創設されたが、当時の国民によって「うば捨て山」と激しく非難をされたため、当時の与党である自民公明連立政権は、高齢者の反発をかわす目的でこの特例を導入した。そもそも後期高齢者医療制度の目的は、費用負担ルールの明確化を目的として創設されたのだが、批判は拡大し2009年には自公政権の退陣にも繋がった。

今回厚労省が廃止を目論む軽減措置はこの際に導入された特例であり、当時の政権与党は高齢者へ配慮した「改善の象徴」として大々的にこの特例を宣伝してきたはずだ。それだけに、(自民公明連立政権下での)今回の軽減措置廃止は突然の改変だった。


なぜ突然の廃止なのか、財政難が理由?

特例廃止については、社会保障制度を維持するために税期負担の減額を見込む目的だと厚労省は説明しているが、消費税の増税も控えており国民負担も過大になることが予測されるなか、具体的な廃止時期については部会での協議に持ち越される。

今回の軽減措置廃止による国費削減額は約800億円であり、法人税減税の1%分、に必要な国費5000億円の6分の1程度とされている。国の財政難を考慮すれば、あらゆる分野での税負担を引き上げていくのは致し方ない選択ではあるが、果たして低所得者向けの特別措置の削減にまず手をつけるのは不可解だ。2年ごとの保険料改定の度に引き上げを繰り返しており、保険料を滞納せざるを得なくなった75歳以上の高齢者は2万3000人にものぼるという。保険料の支払いそのものが困難な高齢者が拡大しているにも関わらず、軽減措置廃止という追い打ちをかける今回の施策によって、ますますこの制度自体の弊害が表面化するに違いない。支払能力に応じて負担額の高低をつける、または少なくとも低所得の高齢者の生活に配慮した段階的な特例廃止が望ましい。


歯車が狂う社会保障制度

年金は減らされる一方、医療・介護を含む社会のセーフティーネットに対する負担は、一層膨張していくのが現状の路線であることは間違いない。後期高齢者医療制度も制度発足から6年、その弊害は浮き彫りとなりつつある。

社会保障が揺らぎつつある人口減社会のなかで、国のセーフティーネットだけに過度に依存せず、資産運用や定額積み立てなどによる資産形成が賢明な選択であろう。

(ZUU online)

【関連記事】
『黒田バズーカ2』で動く不動産市場…狙い目は港区、江東区?
目的別に検討すべき!?医療保険選びの判断基準 !
年間52,596円の日経新聞が無料!?その非常に簡単な方法とは?
まだ間に合うNISA 11月中の滑り込み口座開設で非課税の恩恵を
集客力とマンション賃料をアップするリノベーションとは?