本記事は、林恭弘氏の著書『「嫌いな人」のトリセツ』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

メンタル
(画像=isssbetha / stock.adobe.com)

やっぱり、「あきらめる」ことです

私たちは日常生活において、環境からさまざまな影響を受けています。「環境」とは、天候や気温、オフィスのレイアウトやBGM、そして周囲にいるたくさんの人たち ―― これらの「環境」から受ける影響によって、気付かないうちに〝心模様〞も変化しているのです。

私たちは雨が降ったり、蒸し暑かったりすると、「今日は雨が降っているから気分が滅入るなあ」「こう蒸し暑いと仕事に集中できないよ」と、出来事や状況が自分をイヤな気分にさせたのだと思うものです。

対人関係では、「アイツの態度がムカつくんだよ」「あの一言でやる気を失った」などと、やはり相手の行動や言動が自分の気分を決めているのだと思い込んでいます。

しかし雨が降ってすべての人が滅入っているかというと、そうではありません。

対人関係においても〝その人〞と関わるすべての人がイラついたりムカついたりするわけではありません。

ある人は滅入っているけれど、別の人は満足そうにしていたりします。

またさらに別の人は心弾ませ、楽しんでいる人がいたりもします。

つまり出来事や状況が同じでも、まったく違う心の状態が見られるわけです。

私の知人にスコットランドから来日した男性がいます。

日本で10年近く暮らしている彼に、「日本で過ごしてみて、1番好きなシーズンはいつ?」と尋ねると、「林さん、僕は日本の梅雨が1番好きなんだ」と答えてくれました。

私の勝手な予想では、「色とりどりの風景を通じて、目で季節が感じとれる秋だろうな」などと思っていたので、予想外の回答に驚かされました。

思わず、「どうして梅雨なの? 日本人だって梅雨を嫌がる人が多いのに」と尋ねると、「僕の故郷スコットランドは雨が多い地域だから、梅雨空を見上げ、雨の音の調べ、空気を吸い込むことで、1万数千キロも離れた故郷スコットランドを感じることができる。そうすると僕の家族や親友たちがすぐそこにいることがわかるんだ。だから梅雨は故郷との距離を縮めてくれる時期なんだ」と彼は言います。

雨の季節から、心にエネルギーをもらうわけです。

また私の姪は、どういうことか子どものころから傘が大好きで、雨具のコレクターでもあります。

彼女曰く、「朝一番の天気予報で、『今日は1日中雨でしょう』と予報が出るとワクワクする」そうです。

なぜかというと、新しい傘のコレクションを披露できるチャンスだからです。

この2人の話からだけでも、「雨が気分を滅入らせて、最低の1日にする」のではないことがわかります。

雨が最悪なのではありません。雨に対する「あなたの解釈」が1日を最低にしているのです。

「雨が降っている」という出来事や状況には、何の意味もないわけです。

私たちの日常生活では、必ず雨が降ります。それはたとえ、雨が降ってほしくないときでも、降るわけです。それはもう、「あきらめる」しかないのです。

私たちは心のどこかで、「こうなってほしい」「こうあるべきだ」という都合の良い予想や期待を持っています。その予想や期待通りになることを、〝順境〞と言います。

逆に、予想や期待から外れる出来事や状況に遭遇することを、〝逆境〞と呼んでいます。

〝逆境〞が人を不幸にするわけではありません。〝逆境は不幸だ〞という思い込みが、まさしくその人を不幸にしているのです。〝心模様〞は自分で変えることができるし、作り出すこともできるのです。

『「嫌いな人」のトリセツ』より引用
(画像=『「嫌いな人」のトリセツ』より引用)

心の解釈を〝少し〞変えてみる

現実生活の中では、都合の良い予想や期待が外れることだらけではないでしょうか。

「外出しようとしたら雨が降り出した」「忙しい時にクレームの電話が入ってきた」「人手不足なのに、仕事の呑み込みの遅い部下が配属されてきた」「尊敬できる上司を期待していたのに、保身一辺倒の上司だった」このようなことが日々、平気で起こるわけです。

それは、そんなものです。「しゃーない」んです。

しかしこれらの〝逆境〞があなたをイライラさせ、最悪の結果に引きずり込むわけではありません。あなたの「心の解釈」を少し変えることによって、出来事や状況は違う意味や結果となって私たちの前に現れるのです。

「外出しようとしたら雨が降り出した!」

「そんなこともあるわなあ。しゃーない、しゃーない」
「雨の日はロマンティックな心理になる人が多いそうだ。特に傘をさしながらも、笑顔の人はとてもモテるというし。今日は思わぬ出逢いが待っているかも……」
「忙しい時にクレームの電話が入ってきた!」

「お客さんはこちらの都合は知らないから、電話してこられるよな。しゃーない、しゃーない」
「今は怒っていらっしゃるけど、クレームは会社へのラブコールとも言う。徹底的に気持ちをお聞きして、当社の絶対的なファンになってもらおう。そして見込み客も紹介してもらうチャンスもあるかも……。成績アップ、ボーナスもアップ!」
「人手不足なのに、仕事の呑み込みの遅い部下が配属されてきた!」

「仕事が早くて優秀な人ばかり採用できるわけもないし。しゃーない、しゃーない」
「しゃーないけど、せっかくここで出会ったのも何かの縁。しっかり育てて、立派なビジネスマンになってもらおう。そのノウハウが他の社員教育にも当然使えるはずだ。多くの管理職が同じような問題で頭を抱えているに違いないから、ブログに書いたら共感してくれる人がいるかもしれない。何よりも自分の成長にもつながること間違いなし」
「尊敬できる上司を期待していたのに、保身一辺倒の上司だった!」

「上司とはいえども人間である。自分とは立場も違えば、彼にも守るべきものがあるのだろう。しゃーない、しゃーない」
「そういう保身上司を担ぎ上げて、大きな仕事を成功させてみよう。リスクは自分が背負ってやる。手柄はあの上司に全部あげよう。自分は手柄のために仕事をしているのではなく、顧客の幸せを創造するために仕事をしているのだから……。取引先の人はきっと評価してくれるだろう」

いかがでしょうか。まあこんなにもポジティブ思考になれなくても、心の解釈を〝少し〞変えるだけで出来事や状況の意味も価値も変わってきませんか。少なくとも、腐った気持ちで過ごすことからは解放され、自己成長にもつながるはずです。

「心の強さ」とは、出来事や状況に対する〝意味づけの選択肢が多い〞だけなのです。

「雨が降った」=「最悪の1日である」という、1つしか選択肢を持たない人を、「固定観念の強い人」といいます。

『「嫌いな人」のトリセツ』より引用
(画像=『「嫌いな人」のトリセツ』より引用)
『「嫌いな人」のトリセツ』より引用
林恭弘(はやし・やすひろ)
ビジネス心理コンサルティング株式会社代表取締役。
日本ビジネス心理学会参与。日本メンタルヘルス協会特別講師。
幼児教育から企業を対象とする人事・教育コンサルタントの分野まで講演・研修会、セミナー、著作などにて幅広く活動。
「活力ある社会とやさしい家庭を創造する」をテーマに、日常生活に実践的ですぐに使える心理学を紹介する。
著書に『「落ち込みグセ」をなおす練習』『自分の気持ちを伝えるコツ50』『誰といても疲れない自分になる本』『世界一やさしい人間関係の教科書』(いずれも総合法令出版)などがある。

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