◉米国の金利上昇が日本経済に及ぼす影響


米国の長期金利が上昇すると、日本の金利は上昇するのでしょうか。金融市場がもはや完全にグローバルにリンクしているといってよい中では、主要国の金融・為替は密接に影響を及ぼしあっています。米国の金利に連動して日本の金利が自動的に上昇していくと一般的に考えられていると言ってよいでしょう。

また、米国の金利上昇の影響は、まず円安ドル高という形で現れるという考えもあります。アベノミクスによる日本の金融緩和政策が、一時は急激な円安ドル高を喚起しました。同様に、一方で米国が金融引き締めを行えば、さらにその圧力が高まると考えるのが自然であると思われます。


◉今後の金融政策と実体経済の動向


ところが、先般のバーナンキ議長の金融引き締めを示唆する発言後、市場は急速に円高ドル安を志向し、5月には100円台であったドルは6月17日現在で94円台にまで下落しています。金利と為替レートだけに着目すると矛盾するような動きです。金利と為替の理屈だけでは説明できないお金の流れの変化がそこに働いていると言えるでしょう。

米国の金融引き締めによって直近で上向きかけていた米国の経済がまたダメージを受けるのではないか、という観測から、市場が短期的に極端に反応してこうした動向を示したもののようです。
米国住宅市場における価格上昇等を見て、FRBは金融引き締めを示唆しました。しかし、住宅件数がそもそも少ないことや、金利が異常に低いことの影響によって住宅価格が一時的に上昇しているだけであるといった見方も浮上しています。米国の経済が、金利上昇に耐えられるだけの強さはまだないという見方は依然強いようです。

ただ、FRBが金融引き締めを示唆したということは、FRBは米国経済がある程度順調に推移していく可能性を見出した、ということでしょう。実体経済そのものの状況に大きな変化があれば、市場は混乱を繰り返しながらも実体経済の大きなトレンドには従います。FRBの観測と政策が、少なくとも米国国内については正しいと仮定するのであれば、米国経済の復調はある程度本当なのでしょう。今後は米国経済の快復にあわせて、改めて「円安ドル高+株高」に向かう展開と、回復に向かった結果として、金融引締めの観測が浮上し「円高ドル安+株安」という展開が交互に起こっていくのかもしれません。

果たして今後の米国経済、引いては世界経済がどうなっていくのでしょうか。
当面は予断を許さない状況が続きそうです。

BY K.O