本記事は、工藤紀子氏の著書『レジリエンスが身につく 自己効力感の教科書』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ロールモデル、手本、見本|「ROLE MODEL」と書かれた積み木と人型のオブジェ
(画像=ELUTAS / stock.adobe.com)

ロールモデルを見つけ、観察する

ロールモデルを見つけることは、自分が目指す成功への道筋を明確にするのに非常に役立ちます。

①ロールモデルを見つける

自社や自分が所属する業界内で、理想とする人物をロールモデルとして選びます。選ぶ際には、今の自分からあまりにも能力がかけ離れた遠い存在の人よりは、自分と似た背景を持ち、成功への道が分かりやすい人を選びます。

これにより、その人の成功が自分にとって現実的で到達可能なものとして感じられます。

②自分が取り入れたいところ

ロールモデルになる人のどんなところを自分が取り入れたいかを観察し、具体的に決めます(仕事の取り組み方、人間関係の築き方、キャリアの進め方、考え方、振る舞いなど)。

その人から学ぶ際、その経験や知識が自分の現状や目標とどのようにつながるかを意識することが大切です。

③取り入れたい要素を具体的なプランにする

ロールモデルの取り入れたい要素を、どのように自分の行動に取り入れるかを計画します。この段階で、具体的な行動計画を作成し、実際にそれを実践に移すことが重要です。

最初はロールモデルの行動や手法をお手本にしてまねることから始めますが、重要なのは徐々に自分独自のスタイルを見つけ、それを自分のものにしていくことです。

ロールモデルから学ぶことは有益ですが、彼らの方法が自分にとって最適であるとは限りません。そのため、盲目的にまねるのではなく、自分の状況やニーズに合わせて微調整を行うことが必要です。

ロールモデルの方法を試す際は、それが自分の価値観や目標とどれだけ整合性があるかを検証しながら、自分自身にとって矛盾しない選択を心がけることが重要です。

このプロセスを通じて、自分の個性を維持しつつ、徐々に独自の方法を確立すると、自信の向上につながります。

事例 入社年目のビジネスパーソン

❶ロールモデルを見つける

自社の中で尊敬する上司をロールモデルにします。

❷自分が取り入れたいところ

このビジネスパーソンは、特に上司の時間管理のスキル、プレゼンテーション(プレゼン)の技術、リーダーシップのスタイルを学びたいと考えています。

・時間管理のスキル
上司がどのように時間を効率的に管理しているのか、使用しているツールや方法を詳しく観察します。

・プレゼンの技術
上司のプレゼンのスタイル、使用するスライドのデザイン、構成、視覚資料の利用方法、聴衆とのやりとりを学びます。

・リーダーシップのスタイル
上司がチームメンバーにどのように毎日声をかけ、コミュニケーションを取っているか、またチームをどのように導き(動機付け)、問題解決を促進しているかを観察します。

❸取り入れたい要素を具体的なプランにする

・時間管理
上司が使用しているスケジューリングツールを自分の仕事に導入し、タスクの優先順位付けと時間配分を学びます。実際に自分の日常のスケジュールにこれを適用してみます。

・プレゼン
上司のプレゼンスタイルを模倣し、次の自分のプレゼンでこれを試みます。その後、上司に具体的なフィードバックを求めてさらに改善を図ります。

・リーダーシップ
自分が担当するプロジェクトやミーティングで上司のリーダーシップスタイルを取り入れてみます。チームメンバーからのフィードバックを受けて、これを自分のスタイルに織り交ぜていきます。

このようにプランを実行することで、ロールモデルから学んだ具体的なスキルやスタイルを自分のものにし、実際に職場でこれらを生かして成功体験を積むことが、自信と自己効力感を高めていくのです。

注意点&気を付けたいこと

ロールモデルのやり方を実践するとき、彼らと自分を比較して、スキルの差や出来具合、成果の違いに落胆することもあるかもしれません。しかし、重要なのは自分自身の進歩と成長に焦点を当てることです。

ロールモデルも成功に至るまでには時間がかかっています。一晩であなたが望むような状況になれたわけではないことを理解しましょう。彼らがその地位に達するまでに経験した困難や学びのプロセスを理解し、自分も段階を踏んで成長することを念頭に置くことが大切です。

また実際に試してみて、彼らがやってきた方法が自分の状況に当てはまらないときは、自分の経験とロールモデルの経験をうまく組み合わせてみましょう。

理想に近づくためには、ロールモデルから多くを学べますが、自分の価値観や目標、状況に基づいて行動を選択する必要があります。

自己効力感の教科書
工藤 紀子(くどう・のりこ)
一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会 代表理事
外資系企業に勤務しながら、「自己肯定感(セルフエスティーム)の向上」について研究し、誰でも自己肯定感が高まる独自のメソッドを確立。2005年から約2万人に個人向け講座を行い、2013年に一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会を設立し、代表理事を務める。キリンビール株式会社やNTTグループ、住友化学株式会社など多くの上場企業で、のべ1万人以上に研修を実施し、満足度評価は96%超。全国の中学・高等学校、行政機関でも研修や講演を行っており、平成31(2019)年度版『中学生の道徳』(Gakken)の教科書と教師用指導書を執筆した。
著書に『そのままの自分を受け入れて 人生を最高に幸せにしたいあなたへの 33の贈り物』(三恵社)、『職場の人間関係は自己肯定感が9割』(フォレスト出版)などがある。
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)