本記事は、工藤紀子氏の著書『レジリエンスが身につく 自己効力感の教科書』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
他者からの言葉を自信につなげる
自己効力感を高める方法の3つ目は「社会的・言語的説得」です。
これは、家族、友人、上司、同僚など周囲の人々からの励ましや肯定的なフィードバックを通じて、自分自身に対する信頼を強化し、自分が何かを成し遂げることができると信じる力を育てていくことです。
周りの人たちからのサポートやポジティブな言葉は、ハードルが高い挑戦をしているときや苦手なことを克服しようとしているときなど、特に自信を持てないときに力を与えます。そのようなときに「あなたならできる、きっとうまくやれるはず」と励ましを受けると、「もっと頑張ろう」という気持ちになると思います。その一言が、困難なことに取り組む勇気を与えたり、挑戦を続けるモチベーションを高めてくれたりするのです。
また、職場では上司から「よくやった」と認められることで、その成果が自分の努力によるものだと実感し、次の目標に向けた自信につながります。
相手の言葉が自分を鼓舞し意欲を高め、自分に対する信頼感や自信を高めてくれます。「社会的・言語的説得」は、言葉だけでなく、行動や態度からも受け取ることができるのです。
ただし、相手からの励ましや肯定的な言葉の効果を最大限引き出すには、言葉を受け取る側の自己肯定感が重要です。
なぜなら、自己肯定感が低いと、人からの肯定的な言葉をそのまま受け取れないことが多いからです。そのため、相手からの言葉を自分のモチベーションや自信の源として活用するためには、自己肯定感を高める努力も必要なのです。
また、信頼できる人からの言葉ほど影響力があります。相手との信頼関係がしっかりしていればいるほど、その言葉の力はより大きくなるのです。
さらに、他者からの言葉だけでなく、自分自身に対してもポジティブな言葉をかけることが自己効力感を高める助けになります。自分を励ますことで、内面からの力が湧いてくるのです。
他者からの励ましや褒め言葉、肯定的なフィードバックを受け止める
他の人からの励ましや褒め言葉、肯定的なフィードバックは、私たちが新しい挑戦を続けるモチベーションを強化し、自分自身の能力を信じる手助けをしてくれます。
ただし、これらの言葉を効果的に自分のものにするには、正しい受け取り方を知り、実践する必要があります。その方法は、次の4つです。
①心を開いて、褒め言葉を受け入れる
②褒められた具体的な内容を把握する
③励ましや褒め言葉を記録する
④褒められた点を次に生かす
具体的にやり方を見ていきましょう。
①心を開いて、褒め言葉を受け入れる
他者からの励ましや褒め言葉は、自分を支持し応援してくれている証しです。心を開いて相手の言葉を素直に受け止め、自分は応援されていると感じてみましょう。
例
社内プレゼン後に上司から「君のプレゼンは分かりやすく素晴らしいね!」と言われたら、その言葉を素直に受け入れ「ありがとうございます」と返答しましょう。このようにポジティブなフィードバックを受け入れることは、自分への信頼感を深め、次への励みとなります。
②褒められた具体的な内容を把握する
褒められた際には、どの部分が評価されたのか、どの部分が良かったかを具体的に把握します。
このとき、可能であれば相手に詳しく聞いてみましょう。具体的なフィードバックを求めることで、自分のどのスキルや行動が良かったのかを理解し、それを自己の強みとして認識できます。
例
上司に「プレゼンが分かりやすくて素晴らしい」と言われて、どの部分が特に評価されたのかを自分で考えてみます。
また、上司に直接「どの部分が良かったのか具体的に教えてください」と尋ねることで、自分のパフォーマンスを詳しく知ることができ、さらなる改善や強化が可能になります。
③励ましや褒め言葉を記録する
励まされたことや褒められたことを忘れないように、日記やメモに記録しましょう。
具体的にどのような言葉をもらったのか、どの点が評価されたのかを書き留め、後で見返すことで再確認でき自己評価が高まります。
これは自分を支え、困難なときでも前向きに取り組むための自己鼓舞に役立ちます。
例
プレゼンがうまくできたことを自分の力だと信じるためにも、どのような言葉を上司からかけてもらったか、どの点が良かったのかなどを記録します。それをプレゼンのたびに見返して自信にします。
④褒められた点を次に生かす
褒められた内容を次の行動の励みにし、これからに生かしましょう。褒め言葉や励ましを力にして、さらに自己のスキルを向上させることができます。
例
社内でのプレゼンが成功した後、外部のクライアントにプレゼンをする機会が訪れたとき、この成功体験をもとに同様の準備と自信を持って臨むことができます。
人からの褒め言葉や励ましは、自分を勇気づけ、成長させてくれる貴重な糧となります。このプロセスを通じて、自分の中の潜在能力や強みを再確認し、どんな困難も乗り越える力を養うことができます。
外資系企業に勤務しながら、「自己肯定感(セルフエスティーム)の向上」について研究し、誰でも自己肯定感が高まる独自のメソッドを確立。2005年から約2万人に個人向け講座を行い、2013年に一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会を設立し、代表理事を務める。キリンビール株式会社やNTTグループ、住友化学株式会社など多くの上場企業で、のべ1万人以上に研修を実施し、満足度評価は96%超。全国の中学・高等学校、行政機関でも研修や講演を行っており、平成31(2019)年度版『中学生の道徳』(Gakken)の教科書と教師用指導書を執筆した。
著書に『そのままの自分を受け入れて 人生を最高に幸せにしたいあなたへの 33の贈り物』(三恵社)、『職場の人間関係は自己肯定感が9割』(フォレスト出版)などがある。