本記事は、ローラ・メイ・マーティン氏の著書『Google流 生産性がみるみる上がる 「働く時間」の使い方』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の中から一部を抜粋・編集しています。
優先順位トップスリーを選ぶ
通りであなたの足を止めて、「いまのあなたの優先順位トップスリーはなんですか」と尋ねたら、あなたはどう答えるだろう。コーチングの際に真っ先に投げかける質問を、ここで読者のみなさんにも尋ねてみた。
生産性を高めるための第一歩は自分が何をしたいのか、何をすべきなのかを明確にすることだ。さほど「ゴール」に言及しないのは、ゴールは長い時間をかけた先にある「いつかできればいいこと」のように感じられるからだ。代わりに「優先順位/優先事項」ということばをよく使うのは、柔軟に変化し、現在の意図やフォーカスをすくいとるからだ。
なぜ3つなのか? 2018年、オハイオ大学は、学習において人の脳はパターンを探してグループ化しようとするとの研究結果を示し、長いあいだ広く信じられてきた「3の法則」(物事を3つにグループ分けすると記憶しやすいという考え方)が有効であることを確認した。抱えている責任や優先事項は人生のどの時点でも3つより多いだろうが、「トップスリー」と限定することで焦点を絞ることができる。一緒に仕事をしたことのある人のなかで際立って生産性の高かった、ワーナー・ミュージック・グループのCEOロバート・キンセルは、つねに優先事項のトップスリーを明確にし、誰と仕事をするときにもそれを伝えていた。各優先事項に関連する業務のリストをもち歩き、幹部社員、補佐役、そして会社組織とのあいだで円滑に共有していた。この優先事項が彼の仕事と日々のテーマとなり、適切なことに集中し、たしかなビジョンをチームと共有する助けとなった。優先事項を定義することで、誰に対しても仕事がスムーズに進むようになった。
日ごろから優先事項について考えていれば、あなたもトップスリーをすらすらと答えられるはずだ。優先事項の見直しは週ごとでもいいが、ふつうは1カ月ごとか四半期ごとにおこなう。
トップスリーが決まれば、ほかの優先事項や活動の位置も決まっていくだろう。瓶のなかを石の塊や小石や砂でいっぱいにしたいのなら、最初にいちばん大きな石を入れるべきだ。すでに小石や砂(それほど重要でなく、優先順位の低いもの)がかなり詰まった瓶に大きい石を入れようとすると、全体としてはまだスペースが残っていても瓶からはみ出してしまう。
私の言う優先事項が、プライベートについてなのか仕事についてなのか疑問に思ったかもしれない。仕事中であろうが、家にいようが、あなたという人間はひとりしかいない。時間はひとつのパイであり、それを切り分ける脳もひとつだけだ。だからプライベートか仕事かの区別なく、そのときの優先事項によって成功と充実感は左右される。しかもそれらは、状況や人生のステージに応じて揺れ動くだろう。家族で遠方に引っ越す準備をしているのなら、これまでのトップスリーのどれかを押しのけて引っ越しが上位に入ってくるはずだ。仕事でビッグプロジェクトを任されたのなら、そのあいだは、ほかのことが後回しになるかもしれない。優先事項を3つに絞る作業が重要なのは、何かを入れたければ、代わりに何かを外さなければならないことに意識が向くからだ。つねにトレードオフが存在する。
会話のなかで、優先順位のトップスリーを迷わずに言えるのも大事だが、同じ質問をほかの人に尋ねるのもまた大事だ。新しい人や新しい上司と仕事をするときには、必ず「いまのあなたの優先順位トップスリーはなんですか」と尋ねるようにしている。そうするだけで、回答の裏にある事情や、その人が本当にフォーカスしている対象がある程度わかり、生産的で協力的な関係を築きやすくなる。このシンプルな質問の答えから、その人が下そうとしている決断や時間の使い方がうかがえる。私がとくにクタクタになっていたある時期、夫が私の戦術を使って尋ねてきた。「いま、きみの優先順位トップスリーはなんだい?」数えてみたら6つあった。クタクタだったのも当然だ! 一度に多くのことを解決しようとしすぎていた私は、いくつかのことを後回しにしたり、やめたり、人に委ねたりする必要があった ―― そして、そのとおりに実行したのだ。
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