本記事は、ローラ・メイ・マーティン氏の著書『Google流 生産性がみるみる上がる 「働く時間」の使い方』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の中から一部を抜粋・編集しています。
ツールを味方につける
生産性はどれだけ少ない時間でどれだけ多くのことを達成できるか、つまり効率としてとらえられがちだ。生産性の定義は幅広く、たしかに効率もそのなかのひとつだ。開いたループをきっちりと、かつできるだけ迅速に閉じる能力は全体としてどれだけのことを達成できるかに影響する。
多くの人が、アプリのほか、さまざまなプログラムやプラットフォームなどのツールに頼って、生産性のギャップを埋めている。ツールは便利だし、全体のワークフローを向上させることができるが、生産性という勝負を分けるのは、ツールの背後にある「意図」と、ツールを使いこなす知識の組み合わせである。
かつてコーチング・セッションの一環として、仕事で12年間、Gmailを使っていた人に、ラベルの色の変え方を伝えたことがある。上席者からの重要なメールはすぐ目につくように鮮やかな赤色にし、社外からのメールは別の色にして営業メールを簡単に見分けられるようにした。彼は、受信トレイの様子を視覚的に把握できるようになったことを喜んでいた。ただ …… 私は思わずにはいられなかった。彼がもっと早くこのことを知り、12年前からメールを色分けしていたらどれほど生産性が上がっただろうかと。
設定に時間をかける
かれこれもう9年間、5万人を超えるグーグラーに毎週、グーグル・ワークスペースで生産性を向上させるためのクイックヒントをメールで送信している。グーグル・ワークスペースは、Gmail、グーグル・チャット、カレンダー、ドライブ、ドキュメント、スプレッドシート、ミートなど、世界の何十億というユーザーが利用しているコミュニケーションおよびコラボレーションのアプリだ。現在はグーグル・ワークスペースのYouTubeチャンネルでも見ることができるこのクイックヒントは、グーグル・カレンダーのイベントをGmailからダイレクトに作成する方法や、グーグル・フォームで作成する質問に画像を使う方法など、さまざまな項目をカバーしている。どれも小さなヒントだが、時間節約に役立つものばかりだ。何年もまえからヒントを参考にしている人たちから、実際にどれくらい時間を節約できたか、全体の生産性がどれだけ向上したかを伝えるメールが私のもとへ何百通も届いている。また、「こうしたヒントをどうやって思いつくのですか?」という質問のメールもよく来る。
いまでは多くの機能の開発に携わっており、プロダクトチームと協力し、リリース情報を事前に受け取っている。だが、はじめの数年間は、すべてのヒントを「設定」から見つけていた。
- 「設定」の調整に20分かければ、ツールは強力になる。
どのプロダクトやツールにも「設定」が存在する理由は、能力をできるだけ発揮させるためだ。カスタマイズしたり、ワークフローを改善したり、ツールを自分仕様にするためにある。
だが残念なことに、「設定」の内容を把握する時間を惜しんだばかりに、こうした機能を見過ごしている人は多い。テレビや洗濯機、メールやメッセージングのプログラムなど、週に1回以上使うプロダクトはどれも、最初に20分ほどかけて「設定」を調べ、何ができるのかを把握するべきなのだ。
私の義父は、驚くほどの精密さで食洗機に食器を詰め込む。収まる食器の多さ(しかもすべてがきれいに洗い上がる)ときたら、手品でも見せられているかのようだ。毎晩、緻密な設計図が引かれる。ボウルと皿の向き、カップの並ぶ角度が完璧にととのえられ、1センチも無駄なスペースがない。どうしてそんなに食器の収め方がうまいのかと尋ねたら、義父はなんと答えたか。もうおわかりだろう。彼は食器の並べ方に関する、その食洗機メーカーの説明書を読んだのだ。ほかに誰がこんなことをするだろう。ほとんどいないはずだ。でも本当にみなが説明書を読んだとしたら? もっと多くの食器を詰め、しかもきれいに洗い上がり、毎晩が楽になる。わずかな初期投資で、毎日大きな見返りを得ることができる。
メールやメッセージアプリ、カレンダーなど、仕事で使うすべてのツールで同じように実行したら、どうなるだろうか。モバイル端末の通知のカスタマイズ方法を把握し、必要な通知だけを必要なタイミングで受け取れるように設定したり、色分けやタグづけを通して、必要な情報をすばやく見つけたりできるようになるだろう。ほとんどの人は、何ができるのかをよく知らないままこれらのツールに突進し、本当の実力を発揮させる方法を学ぶことなく、ただ使い慣れてしまう。
何を見て、何を見ないか?
プロダクトを使いこなすうえで重要なポイントのひとつは、ツールが仕事の妨げにならないようにすることだ。生産性向上のためのツールやプログラムは、ときに通知によってこちらの気を散らし、意図せずに生産性を低下させることがある。重要なことを通知するタイミングや方法は無数にあるが、通知を無視しても、あるいは通知の中身を見ただけで具体的な対応には進まなかった場合であっても、何かがあなたの注意を1秒でも引いたのなら、それは脳のスペースのいくばくかを侵食し、エネルギーポイントもその分、消費されてしまう。しかもその影響は積み重なっていく。
何をいつ見るかをカスタマイズすることには、とくに、つねにそばにあるデバイスをカスタマイズすることには大きな恩恵がある。手元のスマートフォンでは、着信の相手先、着信のタイミング、着信音を鳴らす時間帯、着信音の種類と音量などを決めることができるし、メールやメッセージの通知も同様だ。通知のまとめ機能を設定したり、仕事時間中のみインスタントメッセージの通知を表示するようにカスタマイズしたりすることができる。特定の人からのメールだけ通知をオンにしてそれ以外はオフにしたり、1日中、新しいニュースを受け取るのではなく、トップニュースの見出しをまとめて1日に1回通知が来るように設定したりすることもできる。私のスマートフォンでは、SNSアプリを夜間の1時間しか使えないように制限をかけている(さらに、制限を外してしまわないようにパスコードの管理を夫に委託している!)。プロダクトの「設定」のなかでおこなえるこうした小さな変更はどれも、四六時中誰かとつながるのをやめ、創造性を鍛えて新しいループを開く精神的余裕を生むのに役立つ。
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