本記事は、田中 はじめ氏の著書『世界最高峰の研究者たちが教える ストレス解消法』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
ストレスがある人は認知症になりやすい
世界中で認知症患者は5,500万人以上いるといわれています。認知症を発症するリスクは高血圧や睡眠不足、運動不足などさまざまな要因によって高まります。
認知症を予防するには、仕事やボランティア活動などで社会や人との関わりを持ち続け、運動を定期的にし、何歳になっても新しいことを学び続けることよって認知症を発症させるリスクを下げることができるといわれています。
最近の研究では、慢性的なストレスがある人やうつ病になったことがある人が、アルツハイマー病を発症するリスクがより高いということがわかりました。
スウェーデンにあるリード病院のヨハンナ・ヴァレンステンらは、スウェーデンの18歳から65歳までの130万人以上の医療記録を調べました。
ヨハンナらは、2012年から2013年の間に、慢性ストレス、うつ病、またはその両方と診断された人を調べました。そしてヴァレンステンらは、同じ期間に慢性的なストレスやうつ病と診断されていない人と比較しました。
その後、参加者を2014年から2022年にかけて追跡調査し、軽度認知障害または認知症、特にアルツハイマー病の診断を受けたかどうかを調べました。
研究の結果、慢性的なストレス、またはうつ病の病歴のある人は、軽度認知障またはアルツハイマー病と診断される可能性が約2倍も高いという結果が出ました。
特に、慢性的なストレスとうつ病の両方を抱える人は、軽度認知障害やアルツハイマー病と診断される可能性が最大4倍も高いという結果になりました。
この研究の結果、ストレス、不安、うつ病が認知症のリスクを高めることがわかりました。すでに動物実験では、コルチゾールというストレスホルモンが、アルツハイマー病のリスクを高めることがわかっています。
世界では、約2億8,000万人の人がうつ病を患っているとされています。その人たちは、アルツハイマー病になるリスクが非常に高いといえるでしょう。
認知症にならないためにも、ストレスを解消する方法を身につけておくことや、メンタルヘルスはとても大事なことであると知っておく必要があるでしょう。
ストレスが多いと老けやすくなる
「老けている」とはどういうことでしょうか?
私は老け顔だったので、学生のときから顔はあまり変わっていません。白髪が増え、体重が少しだけ増えましたが、久々に会った友だちには「田中はあまり変わらないね」といわれます。顔にようやく年齢が追いついてきた感じです……(笑)。
現在では、「老けているか、どうか」は見た目、体力で判断されることがほとんどだと思います。近い将来、身体的にその人がどれだけ「若い」か「老けているか」を正確に測れる機械ができるかもしれません。
「老化」を正確に測定できる機械が開発されれば、なぜ一部の人が他の人よりも早く老化するのか、そしてどのようなライフスタイル要因がその老化プロセスに関係しているのかをより正確に理解するのに役立つ可能性があります。高齢化社会になっている日本では、とても興味があります。
米国ミシガン大学のリア・S・リッチモンド・レイカードらは、230万人のニュージーランド人を対象とした数十年にわたる研究より、精神障害と身体的疾患の発症や死亡との間に強い関連性があることがわかりました。
この研究で、不幸や孤独感などのストレスが、人の生物学的年齢を最大1.65歳老化させることを発見しました。ちなみに人口統計学的に喫煙は約1.25歳の老化、未婚の人は0.59歳の老化、睡眠障害は0.44歳の老化するとされているので、ストレスは他の要素を上回りました。
精神障害は生物学的年齢に大きな影響を与えるため、老化研究において心理的要素は無視できないことがわかりました。
この研究で、老化とストレスなどの心理的要因との関係性が明らかになりました。
したがって、メンタルヘルスの促進は、より具体的な身体的治療アプローチと同じようにアンチエイジングにつながる可能性があります。
最近、「老けている」と感じることが多くなった人は、もしかしたら心理的要因が関係しているかもしれませんね。
ワークライフバランスでストレスを緩和させる
私たちには、ストレスや疲労レベルを回復させるためには、仕事から解放される時間が必要です。休日には、仕事から解放されてリラックスができるからこそ、良い仕事につながるのです。私たちは、仕事モードがオンでオフに切り替えることができないと、大きなストレスを抱えてしまうのです。
オーストラリアにあるクイーンズランド大学のステイシー・パーカーらは、人々がワークライフバランスをどのように管理し、日々の仕事のストレスから回復するかを理解するための研究をしました。その結果、ワークライフバランスが取れていると感じる人は、仕事でよりよいパフォーマンスを発揮し、人生の満足度を高めることができていることがわかりました。
新型コロナウィルス感染症が流行したときに、在宅ワークが一気に広がりました。テクノロジーが発達したお陰で、職種によっては家でも仕事ができるようになりました。しかし、それによって仕事とプライベートの境界線がなくなり、精神的なストレスが高まってしまうことがわかっています。今後は、仕事と家庭の管理というところに焦点が当てられ、いかに個人に合ったワークライフバランスが取れるかがカギになってきます。
オーストラリアでは、2024年の後半に新しい法律ができ、資格のある従業員は勤務時間外に雇用主や仕事先の人との接触を拒否する権利が与えられるようになります。
このオーストラリアの法律は、仕事のストレスから完全にリラックスするための一歩になるかもしれません。
ストレスや疲労レベルを回復させるためには、仕事から解放される時間が必要です。仕事を完全に開放することができなければ、深刻で長期的で慢性的なストレスが生じる可能性があります。だからこそ、仕事と家庭のバランスをどのように管理できるかを理解し、しっかりとした境界線を引くことが重要です。
日本人は、休日にはしっかりと休むということができていない人が意外と多いのです。仕事のことを考えず、スイッチを切ってリラックスする時間が人間には必要なのです。
就活で出版社のみを志望するが全滅。大学卒業後は、コンサルティング会社、出版社勤務を経て独立。
出版社勤務時代は、プロデュースや書籍編集、ブックライティングなどを担当。携わった書籍は300冊以上。
ビジネス書や人文書を多く手掛ける。趣味は釣り、スノーボード、草野球。現在はフリーの編集者。
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