有馬記念の季節がやってきた。
2014年の競馬を締めくくるオールスター競走が、“グランプリ”と呼ばれる有馬記念だ。ファンの人気投票によって出走馬が決まる(※)日本競馬の一大イベントとして知られている。(※上位10頭に優先出走権)
今年はジャパンカップを圧勝したエピファネイアや、世界レーティング1位を獲得したジャスタウェイ、GI6勝のジェンティルドンナといったGIホースが10頭、出走を予定。超豪華メンバーとなる見込みだ。
そんな2014年の競馬を締めくくる有馬記念は、日本経済の現状を示す“指標”としての役割を垣間見せている。
競馬と経済
競馬が「貴族の娯楽」と位置づけられていた欧州と違い、日本の競馬は独自の進化を遂げてきた。公営ギャンブルとして誰でも手軽に馬券を買える体制を整えた結果、「庶民の娯楽」として大成功を収めた。
2013年の馬券の売上は2兆4049億3351万3200円。小国の国家予算を優に超える規模であり、世界中を見渡してもこれだけ馬券が買われている国はない。
誰でも手軽に馬券が買える。
言い換えれば、景気と馬券の売上は密接な関係があると考えられる。
例えばJRA(日本中央競馬会)の年間売上は1997年に4兆円を突破した。奇しくも1997年は、サラリーマンの平均年収が過去最高を記録した年だ。そして1997年以降、馬券の売上とサラリーマンの平均年収は、どちらもほとんど右肩下がりとなっている。
つまり、馬券の売上と、(特に)サラリーマンの財布には相関関係があると仮定できるのだ。
前年比プラスが目立つ2014年のGI
2014年、最もグレードが高い『GI』と呼ばれるレースの売上は、前年を上回る傾向を見せている。
先週末の朝日杯フューチュリティステークス終了時点で21レースのうち、15レースで売上前年比増を記録しているのだ。
しかも売上が下がった6レースのうち、高松宮記念、安田記念、スプリンターズステークスは売上が伸びにくい悪天候での開催だった。チャンピオンズカップは舞台を阪神から中京に移したことで傾向が見えないため、買い控えが目立ったと考えられる。
日本ダービーは、昨年が第80回の記念競走だったで注目を集めたため、今年は若干数字を落とした。ただ、それでもマイナス0.7%程度に収まっている。
特別な理由がない限り、2014年のGIの売上は伸びているのだ。全体の売上をみても、上半期は前年比102.7%増の1兆2814億110万3300円となっている。
なお、2013年のサラリーマンの平均年収は前年比約6万円増の414万円。2014年はまだ分からないが増加傾向にあると見られていることから、少なからずサラリーマンの懐に潤いが戻ってきたと考察することができる。
世界一売れる有馬記念の馬券
世界一馬券が売れる日本のレースの中でも、有馬記念は突出した売上を記録している。2013年の年間売上げベスト5を見てみよう。
有馬記念 350億8838万7600円
日本ダービー 237億1771万4300円
天皇賞春 187億8402万5800円
ジャパンカップ 173億2187万8200円
天皇賞秋 172億3188万700円
有馬記念は日本ダービーに100億円以上差をつけるダントツの1位となっている。
そんな有馬記念の売上がどれだけ伸びるかという点に注目することで、日本経済の“現在地”をつかむことができるのではないだろうか。
有馬記念の当日は中山競馬場に10万人以上の観衆が集まる。最高の雰囲気で、最高のメンバーで、最高に面白いレースが見られることだろう。当日は中山競馬場に足を運び、レースを楽しみつつ、家に帰ってから売上を確認してみてはいかがだろうか。
文:JIN(競馬ライター)
東京都生まれ。スポーツ系出版社に入社してWEBや雑誌制作に携わった後、フリーランスに。2010年に開設いた公式サイト『JIN競馬』でコラムや予想を執筆。2013年に『当たり馬券がザクザク!! サンデー系馬キャラ分析のツボ』を上梓。
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