大韓航空

大韓航空の副社長、趙顕娥(チョ・ヒョンア)氏が米国のニューヨークJFK空港から韓国のソウル仁川空港へ向かう自社機内で機内サービスとして出されたピーナッツの提供の仕方が悪いと激昂、客室乗務員の責任者である男性のチーフパーサーを機内から降ろした問題が世間を騒がせている。その後、副社長は辞表を提出し担当役職から退く意向を示しており、今後副社長はもちろん、系列会社のすべての役職からも退任する。


韓進グループにおける大韓航空

大韓航空は、韓国で最大かつアジアでも大手の航空会社のひとつとして知られている。韓国取引所に上場しており、韓進(ハンジン)グループの中核企業である。副社長の趙顕娥氏は創業者の3代目にあたる。米コーネル大学でホテル経営学を学び、1999年に大韓航空に入社。2006年には常務に昇格。2013年に機内サービス・ホテル事業部門総括副社長に就任している。入社後、7年目に常務にスピード出世しているのは創業者の孫であるがゆえだろう。


一族経営のメリット・デメリット

大韓航空は、会長の長女である趙氏以外にも、弟が長女と同じく副社長を、妹は専務を務めるなど、典型的な一族経営となっている。一族経営は日本でも珍しいものではないが、韓国でも同様だ。

日本における一族経営は全体の約95%を占めるなど非常に多く、雇用者数も社会全体の6~7割を占めるため一般的ではある。大企業は一族経営ではないと思われるかもしれないが、トヨタ自動車 <7203> 、キヤノン <7751> 、村田製作所 <6981> 、サントリー <2587> など、意外と多く存在する。


一族経営のメリット・デメリット

一族経営には、いくつかのメリットがある。「意思決定が早い」、「トップダウンでスピーディーに会社経営が進む」、「カリスマ性のある経営者の場合、会社がまとまりやすい」といったものだ。一方で、「間違った方針に異を唱えにくい」、「情実人事が横行する」、「コンプライアンス違反を引き起こしやすい」といったデメリットも生じやすい。特に3代目ともなると、2代目のように創業者が苦労している姿をみることもなく、生まれながらにして「社長の子ども」であるため、ちやほやされやすく、自身の能力を過信し、地位を利用した権力を振り回しやすい。これがよく言われる「3代目が会社をつぶす」ということだ。

大韓航空のナッツ事件では、3代目が自身の社会的立場を利用して権力を振り回したことが問題だった。自社従業員を衆人の前でしかるまでは百歩譲るとしても、チーフパーサーを機内から降ろすために引き返させ飛行機の到着を遅らせたことは、他の飛行機の安全を考えると事故になりかねず非常に問題だ。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ということわざや、海外では「ノブレス・オブリージュ」というように、社会的地位が高い人ほど責任が重くなるため、謙虚な振る舞いが求められる。

一族経営のメリットばかりに目を向けず、デメリットをうまく回避する方法を考えておきたい。2代目、3代目にはしっかりとした教育をすることである程度デメリットを回避できるだろう。

景気がいいときは一族経営のメリットが強調されるが、景気が悪化してくるとデメリットが目につきやすくなる。景気の良し悪しに左右されて態度を変えるのではなく、人の振りみてではないが、常日ごろから肝に銘じて行動したいものだ。

(ZUU online)

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