事業承継と

こんにちは。
企業の事業承継に取り組む行政書士のS.Kです。

今回は事業承継の際に、代表者様が個人として負担している保証人や物的担保の処理方法についてまとめていきたいと思います。

【参考 オーナー企業のための事業承継】

オーナー企業のための事業承継vol1「事業承継の必要性と円滑化のための法制度とは?」
オーナー企業のための事業承継vol2「後継者選びのポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol3「後継者選びのポイントは?その2」
オーナー企業のための事業承継vol4「建設業界に学ぶ許認可事業の事業承継って?」
オーナー企業のための事業承継vol5「会社の現状を把握するポイントとは?」
オーナー企業のための事業承継vol6「企業の事業承継の際の法律上の問題点とは?
オーナー企業のための事業承継vol7「家族の絆を守る後継者以外への配慮とは?」
オーナー企業のための事業承継vol8「後継者の適性・選定のポイント」
オーナー企業のための事業承継vol9「種類株式を使った事業承継?」
オーナー企業のための事業承継vol10「贈与税の注意点って?」


◉事業承継と代表者様の個人の保証の問題


企業の事業承継を実施するにあたっては、先代の代表者様等(ここでは実質的に企業の経営権を握られておられた方を指します。代表権をお持ちではなくとも株式の大多数を把握されることで支配権を保有されている方もここでは代表者様等として話を進めていきます)は、ほとんどの場合に銀行からの会社の借入について、個人的に連帯保証をしていたり、ご自宅などの物的担保を差し入れておられることと思います。

ある調査では、非上場企業の8割程度では、会社が銀行から借り入れをするにあたっては、代表者様等が連帯保証をしているという調査結果が出ているそうです。

銀行などの金融機関は、非上場の企業の場合には、会社の資産などよりも代表者様等の経営手腕を信頼して融資を実行するという側面があります。そのため、万が一、会社経営が行き詰まってしまった場合には、代表者様に責任を負担してもらうという発想で融資を実行する面があります。そのため、会社とその代表者様はいわば一蓮托生の関係にあるというのが実態であると言えると思います。

しかし、事業承継の手続きを済ませて、経営の第一線から勇退されるにあたっては、会社の連帯保証人の地位や自宅等の担保の負担は、抹消させておきたいと考えられることが通常であると言えます。ただ、一方で金融機関としては、貸付残高があるのに、保証人や担保を容易に手放すわけには行かないという立場上の言い分があります。
そこで、企業の事業承継を実施するにあたっては、代表者様等が負担しておられる保証人等の地位からどのようにして開放するのかということが大きな問題となります。


◉金融機関とは基本は交渉


企業の事業承継にあたって、代表者様等を保証人の地位から解放したり、代表者様個人所有の不動産の担保権を抹消する方法は、原則として、金融機関と交渉することとなります。

金融機関に事業承継を理由として、保証人の地位や物上保証人の地位(物的担保を差し入れている状態)の解消を申し入れることとなります。もちろん、単に保証人や物上保証人の地位を解除してくれるようにお願いするだけで残高に無担保となってしまうという、金融機関にとって一方的に不利益となる話がすんなりと受け入れてもらうことは、相当難しいということとなります。
(残高額などにもよりますが、金融機関担当者としては、容易に保証人や担保を手放してしまった場合には、特別背任罪となってしまう可能性すらあり、容易に担保を手放すことができないという切実な理由があります。)

そこで、通常は、代表者様の代わりに新たな担保を差し入れるなど金融機関の貸付金保全の手段を提案することが必要となりますが、一般的に最も用いられる方法は、後継者が保証人となるという方法であると言えます。
後継者は金融機関にとって新たな信用対象となる人物ですから、会社の全責任は後継者に負担してもらうということで、代表者様の保証人等の負担を消滅させてもらうという交渉をすることとなります。

ただ、貸付残高に対して後継者が保有する資産が著しく少ない場合や、金融機関として後継者はまだ十分な信用を供与することができないと判断される可能性もありえます。この場合には、後継者が経営の成果を出して十分な資産を保有したり、経営手腕を金融機関が信用できるようになるまでは、旧代表者様が保証人などの負担を引き継ぐことを承認したり、会社の資産を追加で担保として提供するなどにより保証を免れるという方向性で話し合いを詰めることが必要となります。

まとめますと、代表者様等が保証人等の地位から解放されるためには、原則としては後継者を保証人として立てるように交渉することとなるものの、後継者では保証人として十分ではないという事情がある場合には、代表者様が保証人としての地位を甘受するか追加担保などを検討して話し合うということとなるということになります。
この場合には、会社の資産を担保とすることで残存債務の担保に十分かを検討するため、税理士や中小企業診断士など資産評価を客観的に説明することができる専門家の助力を得ることが重要となります。