積立型の投資方法として、昨今「バリュー平均法」が注目を集めている。「バリュー平均法」とは、あらかじめ運用の目標金額を設定し、目標よりも上回っていれば資産を一部売却し、下回っていれば追加購入する投資方法である。
積立型の運用方法として、定期的に一定金額ずつ買い続ける「ドルコスト平均法」が有名だが、今回ご紹介している手法は商品の買付平均単価をより下げる効果があると投資家の関心を集めている。
しかし注意したい点もある。例えば自分で買付時期や売却時期を決定する場合に比べ、相場の状況によっては、大きなリターンを逃す、またはより大きな損失を被る可能性があるのだ。運用を始める前に、さらに踏み込んで具体的にどのような投資方法で、どんな注意点があるかをしっかり確認しておこう。
「バリュー平均法」の仕組み
まず株式など価格が変化する同一商品について、今後定期的に積み立てていきたい目標金額(バリューパス)を決定するのだが、自分が将来得られると予想している収益率、つまり「期待リターン」と一致するように設定を行う。
そして定期的な見直し時期には、投資した商品の評価額が目標金額よりも低ければ割安だと判断し追加購入。逆に評価額が目標金額よりも高い場合は、割高のため少なく購入する、または資産の一部を売却する。このように資産評価額が目標金額になるよう、投資額を調整しながら積み立てていく。
それでは株価が変動する状況において、4ヶ月間毎月1万円ずつ増やす目標設定をした場合の具体例を見てみよう。
株価:1月1,000円、2月700円、3月1,250円、4月1,500円、5月1,400円
<バリュー平均法>
1月、10株購入
10,000円÷1,000円 <保有株式数10株>
目標の1万円を達成するために10株購入。
2月、19株購入
(20,000円-10株×700円)÷700円
<保有株式数29株>
1月末の保有株式数10株に2月株価700円をかけて保有資産額を計算。2月の目標2万円にするために、2月株価700円で19株を追加購入。
3月5株売却 (30,000円-29株×1,250円)÷1,250円
<保有株式数24株>
2月末の保有株式数29株に3月株価1,250円をかけて保有資産額を計算。3月の目標3万円をすでに達成しているため、超過分6,250円分を3月株価1,250円(5株)で売却。
4月3株購入 (40,000円-24株×1,500円)÷1,500円 <保有株式数27株>
3月末の保有株式数24株に4月株価1,500円をかけて保有資産額を計算。4月の目標4万円にするために、4月株価1,500円で3株を追加購入。
上記の場合は、目標を達成し利益をだすことができている。しかし一方でデメリットもある。
「上げ」相場ではリターンを逃し、「下げ」相場では大きな損失
評価額が目標金額を超過している上げ相場において、自分で購入時期や売却時期を決める場合に比べ、利益を逃す可能性がある。先ほどの例で説明すると、3月に目標超過分として5株を売却している。
しかし、その後も価格が上昇しているので、わざわざ売却せずに4月までそのまま保持してから売却した方が、より利益を増やすことができた。従って上げ相場では、資産の評価額が目標金額を少しでも超過した段階で売却してしまうためにリターンを逃がしてしまうのだ。
また、評価額が目標金額より低い下げ相場では、自分で購入時期や購入金額を決める場合に比べ、大きな損失を出すリスクがある。今後株価が下がり続けると予想される場合は、投資を控えるのが賢明だ。
しかし下げ相場であっても、当月の目標金額を達成するために、より株数を増やして購入してしまうため、見直し時期の都度、損失が膨れてしまうことになる。
その他の注意点は?
目標金額を下回った時のために、追加投資用の準備金を用意しておく必要がある。この準備金を他の商品に投資した方がより最適なポートフォリオになる場合においても、流動性が高い預貯金やMRF用などに確保しておく必要があるため、運用機会を失ってしまう可能性がある。さらに評価額が大幅に下がった際には、準備金が足らなくなり、投資を続けることができない場合もあるだろう。
新しい積立型の投資方法として注目されているが、相場の状況によって損益が大幅に左右される。その仕組みをしっかり理解した上で、新しい投資方法の導入を検討していただきたい。(ZUU online 編集部)
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