AIIB構想の一番の懸念点とは?

とくに、近年中国の領有権問題が取りざたされる南太平洋、東南アジア地域での地政力学の変化と、それによる影響面を次にまとめてみた。

AIIBは、主にアジア・太平洋地域におけるインフラ投資促進を目的としたアジア開発銀行(ADB)や国際通貨基金(IMF)を焼き直した国際金融の新しい枠組みづくりと言っているが、それはあくまで表層に過ぎない。

実質的には、中国政府が描く支配力行使地域の拡大戦略が背後に画策された俯瞰的かつ国家的な防衛戦略の包囲システムであり、密接に関わってくる国家安全の問題は無視できない。

今後、AIIBの投資活動が具体化される前に、この問題が明確で重要な課題として認識されるべきであると考える。インフラとは一般的に、鉄道、道路、橋、港湾など生活に欠かせない社会基盤である。


高度化するインフラは「センシティブ情報」に

しかし、近年ではインフラはより高度化し、衛星・無線・光ブロードバンドといった通信基盤やコンピュータによる情報処理システムと一体化(インテグレーション)されているため、AIIBから投資を受ける側にとっては、極論すればインフラ建設が自国の安全へ繋がる極めてセンシティブかつ重要な位置づけとなることを認識しなければならない。

また、インフラは運用面でも経済的な収益を長期間維持し続けなければならないため、収益プランを十分シミュレーションしておく必要がある。つまり、投資インフラが自国でない他国(たとえば中国)の防衛のための資源ルートとしても使用される可能性があることが事前に想定される。


中国の支配エリアの拡大に欧米は警戒

13億人の人口を抱える中国にとっては、AIIBの投資により投資国側へ経済メリットを与える代わりに、自国への食糧や資源ルートを安定的に確保することが不可欠だ。

そうした意味合いからも、投資地域の安定化を名目とした防衛(軍事)力による支配エリアの拡大は、双方にとって不可分の関係と推測される。

欧米ではこのような中国の進め方を“OSMOSIS”(徐々に周囲へ浸透し同化させること)として警戒している。加えて、AIIBは、太平洋への進出を目論む中国の国家政策にも深く関与してくると思われる。(ZUU online 編集部)

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