4月27日に、大手格付け会社フィッチ・レーティングスは日本国債の格付けを「シングルAプラス」から、21段階のうち上から6番目の「シングルA」に格下げしたと発表した。

これにより、中国やチリより1つ下の格付けに位置する。今のところ、マーケットに影響は出ていないが、今後も日本国債の信用を維持し続けることはできるのだろうか。

ギリシャ危機に端を発する欧州の国債市場の混乱、日本の異次元緩和が失敗した末の国債暴落。折に触れ、国債市場に関連する懸念がメディアを賑わせる。これまでのところこうした悲観論の実現性は極めて低そうだ。

しかし、各国の金融当局者で構成するバーゼル銀行監督委員会がついに動き出した。国債の金利が突然上昇(価格は下落)して損失が発生しても経営に影響が出ないようにする新規制を、2016年にもまとめるというのだ。


バーゼル規制とは

欧米、アジア、アフリカの主要28カ国・地域の金融当局者が国際的な銀行監督機関としてバーゼル銀行監督委員会を構成している。銀行の健全性を担保するために一定の自己資本を積むように求める「自己資本比率規制」を策定。

リーマンショックを機に導入されたバーゼル3では銀行が経営危機に見舞われても、十分な自己資本があれば損失を穴埋めでき、危機を回避できるという考えに基づき自己資本の充実を求めてきた。

しかし、もはや世界の金融はリーマンショック直後とは様相が異なっている。1988年に初めて策定されたバーゼル規制だが、経済・金融情勢の変動に伴って数年ごとに見直され、今回の規制強化はその後継の議論だ。

バーゼル委員会は「金利リスク」に対して新たな規制をかけるようとしているのだ。各国当局が実態に応じて監督を強化することにとどめたり、公表を見送って協議を続けたりする可能性も残っているが、国債などの金利上昇リスクを、銀行経営の健全性の評価に盛り込む共通ルールが何らかの形で盛り込まれることになるだろう。

銀行の自己資本比率規制の中で保有資産の金利リスクに備えた新たな規制が行われれば、銀行の保有資産の価格が金利上昇により下落した場合に備え、あらかじめ自己資本を積み増す必要に迫られる。さもなければ銀行は保有資産の圧縮を迫られることになる。

財務省によると、2014年12月末の国債発行残高は約885兆円。銀行の保有残高は35.1%、日銀が23.4%、生損保が22.4%となっている。異次元緩和による国債買い入れで現在ではさらに日銀が多くの国債を抱え込んでいると考えられる。銀行が抱える国債のシェアは最も高く、新しいバーゼル規制により銀行が資本増強の代わりに保有国債を売却すれば、金利上昇を招く危険性をはらみ、国債暴落の引き金となる可能性もゼロではないだろう。


金利上昇で何が起こるのか

金利の上昇をコントロールできなくなれば、銀行や生損保だけではなく、日銀のバランスシートは大きくき損する可能性がある。

日銀の中曽宏副総裁は「出口を具体的に議論するのは時期尚早だ」としながらも「日銀は資金の吸収手段を持っている」と、将来の金融緩和の出口戦略に向け、市場で不安が高まらないよう配慮している。日銀は、金利上昇リスクを最も敏感に感じ取っているのかも知れない。(ZUU online 編集部)

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