(写真=PIXTA)
世界の経済成長率に関する各種データは2015年初め以降まだら模様となっていたが、この1カ月で安定化の兆しが見え始めた。第1四半期(2015年1-3月期、以下同じ)の一時的停滞の要因が徐々に収まって経済環境は改善し始め、今年後半には各国が足並みを揃えてプラス成長に向かうと思われる。
主要中央銀行の金融緩和政策継続とエネルギー価格の下落などのプラス要因に変わりはなく、世界中の経済活動と消費は今後も支えられるはずだ。ただし、世界経済はいまだに低成長/低インフレ環境にとどまっているため、今後数カ月は成長率が伸び悩む可能性が高い。
注視すべき重要テーマも、これまでと同様(1)各国中央銀行(とくにFRB)による金融政策、(2)エネルギー安(3)ギリシャ及びロシア・ウクライナ情勢がもたらす政治不安、の3つとなる。2016年に入ると、経済環境はさらに複雑になろう。
FRBの利上げ時期についての思惑が続いている。原油価格の対前年比効果がなくなるため、米国のインフレ率は年末までさらに上昇すると思われるが、伸びのペースは緩やかになるだろう。第1四半期の弱さが第2四半期にも尾を引き、賃金上昇圧力はインフレ率同様に低いままのはずだ。
したがって、家計消費の回復が明確に見えるまでFRBは注意深く政策の舵取りをする必要があろう。米国と他の主要国との間で金融政策の乖離が進んでいるため、米ドル高が今後も輸出の抑圧材料となり、FRBが低金利を続ける可能性が高い。
9月の利上げもあり得るが、12月まで実施が延びる可能性の方が高く、むしろ2016年までずれ込むこともあろうと考えている。ここ数カ月米国で発表される景気指標を見ると、非農業部門雇用者数が伸び、失業率が低下しているのだが、平均時間給が依然として予想を下回るなど景気の方向性がはっきりしない。
第1四半期の労働コスト指数はある程度の伸びを見せたものの、図表1が示すようにまだ過去平均を大きく下回っている。
米国経済の先行きは消費者動向にかかっている。個人消費は安い原油価格に今なお支えられているため、原油が今後数カ月でさらに値上がりすると勢いがつまずく可能性がある。米国以外でも、安い原油価格が個人消費を刺激しており、欧州の消費者信頼感指数は高水準にある(図表2)。
安いエネルギー価格はもちろんのこと、景気循環が上向きつつあり、さらにはECBによる金融緩和政策とユーロ安も手伝ってセンチメントの改善が各地に広がっているからだ。第1四半期の成長率はこの見方を裏付けるもので、消費の拡大が経済成長の加速を後押しする重要な要素となっている。
新興国では、コモディティへの依存度、中国との結びつき、構造改革の進展度合いにより各国間の格差が広がり続けている。世界的な金融緩和状況と先進国経済の緩やかな回復により、新興国全体の成長は支えられそうだが、個別には原油/コモディティ価格が再び急落すると、大きな被害を受ける国(たとえばロシア)も出るかもしれない。
中国では一連の金融緩和策が取られているものの、人民元の上昇や、(マネー・サプライや与信残高などの)金融指標が伸び悩むなど、全体的な金融環境はタイトなままである。今後数カ月で中国が安定成長を果たすには、世界の需要が持ち直すことに加え、さらなる政策支援が実施される必要がある。
ギリシャの債務支払いをめぐる交渉やロシア・ウクライナ間の紛争を筆頭に、どの地域も相変わらず様々な政治リスクに悩まされている。
「グレグジット(Grexit = Greek exit)」(ギリシャのユーロ圏離脱)、あるいは「グレキシデント(Grexident = accidental Greekexit)」(ギリシャのユーロ圏からの突発的離脱)は起きそうにないとはいえ、ギリシャと欧州連合(EU)との関係は今後数カ月の欧州でも不安の種となるだろう。
また、今は注目されていないが、ロシアとウクライナ間の紛争をめぐるリスクも大きいと見ている。たとえば、ロシアに対する経済制裁が厳しさを増すか、原油価格が再び急落して、ロシア経済の混乱が貿易および金融システムを通じて欧州各国に飛び火した場合の影響は無視し得ない。
ギリシャ、ロシア、いずれのリスクも解決しないままかなりの時間がたっており、どちらかの収拾がつかなくなっても破壊的な影響を及ぼしかねない深刻な問題である。
アンナ・ストプニツカ
フィデリティ
・ソリューションズ グローバル・エコノミスト
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