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(写真=Thinkstock/Getty Images)

ネットの国内資金需要が縮小(企業と政府の支出する力が弱くなる)・家計貯蓄率低下という形から、ネットの国内資金需要が拡大(企業と政府の支出する力が強くなる)・家計貯蓄率上昇へ変化し、家計のファンダメンタルが修復してきた。

富の移転が、家計から企業へという内需低迷の形から、企業から家計へという内需拡大の形に変化している。

家計の貯蓄率は2008年10-12月期の+1.1%を底に、2011-12年までには+4.5%程度まで回復していた。この間、ネットの国内資金需要(マイナスは借入で拡大、プラスは返済で縮小)はほぼ0%から-3.5%程度まで拡大している。

消費の回復が弱かった理由は、家計は消費を拡大する前に、低下してしまっていた貯蓄率が十分に上昇するまでファンダメンタルズを修復しなければならなかったからだと考えられる。

家計の貯蓄率の低下の原因を高齢化だけに限定してしまうと、高齢化が更に進行する中での上昇を説明できず、富の移転の方向性も重要であることが分かる。言い換えれば、高齢化が進行していても、富の移転の方向性を、企業の収益力を裏づけとして、企業から家計へ維持していれば、家計のファンダメンタルズは維持できることになる。

しかし、家計には再び試練が待っていた。ネットの国内資金需要の水準は維持されていたが、家計の貯蓄率は再び若干の低下となってしまい、デカップリングが起きてしまった。2011年の東日本大震災後に原子力発電所が停止し、燃料輸入のコストが大幅に増加した負担を家計が背負っていたこと、そして14年4月の消費税率引き上げも追加的な負担になっていたことを意味する。

貯蓄・投資バランスで、ネットの国内資金需要と家計の貯蓄率の和である国際経常収支の縮小分は、燃料コストの増加による所得の海外移転であり、家計の富の蓄積が減少したことを意味する。消費税率引き上げは分かりやすいが、燃料輸入のコストの上昇の負担も、最終的にほとんどが家計が背負ってきていたことが確認できる。

この大きな負担によるファンダメンタルズの回復の遅れが、家計が景気回復を実感できなかった一つの理由であると考えられる。日本の内需の拡大が本当に強くなるためには、この動きが逆転する必要があり、消費の回復が遅れた理由でもある。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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