(写真=PIXTA)

日本は「60年国債償還ルール」という、新規に発行した国債は60年(10年で6分の1ずつ)で全額償還するという他国に見られない独自のルールがある。しかし、「60年国債償還ルール」に基づき政府債務を「完全に返済する」という考え方を先進国で持っているのは日本だけである。

グローバル・スタンダードでは、政府債務(国内で自国通貨で発行されるもの)は完全に返済することなく、債務残高は維持されていくことはほとんど知られていない。原則として政府債務は完全に返済されることはなく、継続的に借換(満期が来た国債を償還する際、償還額と同額の新規国債を発行し債務の借換えをし、債務残高は維持される)されていく。

その理由は、政府の負債の反対側には、同額の民間の資産が発生し、国債の発行(国内で自国通貨で発行されるもの)は貨幣と同じようなものとみなされる。

この異常な「60年償還ルール」をなくすと、財政規律が喪失し、政府は歯止めなく債務を増やし続け、財政が破綻するリスクが高まるという意見がある。また、日本は米国のように債務残高の上限が議会によって管理されていないので、「60年償還ルール」で財政規律を維持する必要があるという意見もある。

米国では、債務残高が一定の水準を超えると、法的に国債の新規発行ができなくなり、債務残高の上限を引き上げるには議会の承認が必要になる。米国は2011年及び2013年にこの債務残高の上限に達し、上下両院の承認で上限を引き上げた。

日本の政府予算は、衆議院の優越(衆参で異なる議決をした場合、衆議院の議決が国会の議決とみなされる憲法上の規定)により、衆参両院の議決がなくても通すことができる。しかし、特例国債(赤字国債)を発行する場合は、政府予算の成立だけではなく、一年限りの特例公債法を衆参両院で通さなければならず、議会の追加的な承認が必要となる。

日米の違いは、毎年度国債を新規発行する際に議会の承認を得るのか、承認された一定の額までであれば政府が国債を発行できるようにするのかの違いであり、議会が政府債務を管理をしていることに違いはない。日本の債務増加は議会で管理されていないというのは誤解で、「60年償還ルール」がなくても財政規律は維持されることになる。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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