仕事の意義伝達が重要~離職率を軽減する方策
◆今後成り手を増やすことに成功しても、離職率が減らなくては意味がありません。辞める人を減らすためにはどのような方法があるでしょうか。
仲本 : 正直、私の会社も過去にものすごく辞められました。入った時のモチベーションがそんなに高くないんですね。元々やりたくてなった商売じゃないという考え方がすごく多い。
◆ちなみに昔は何人入って何人ぐらい辞めていたのですか。
仲本 : 3人入って3人辞める、そうしたレベルです。運転免許を取りに行かせたら合宿で彼女が出来たから辞めたい、そんなことも実際はありました。今思っていることは、入社した時に何を伝えるかで大きく変わってくるということです。例えば受け入れる側が、彼らに対してどんなキャリアプラン、つまりあなたの役割は何で、行うことはこういう社会貢献であり、こんな見返りがあると明確に教えることが重要です。
あとクラフツメンスクールで今取り組んでいるのは、業界に入ったばかりの人たちに一定の技能を付けてもらうことです。現場に出たらすぐにお金を出せるだけの技能を身に付けることが重要。4月に行った講座参加者11人は、各社に戻ってからまだ誰も辞めていません。
小山 : 僕は22歳で会社をつくり3年ぐらいで職人を120人ほど抱えました。とにかく稼がしてあげられる会社でした。若い子たちがどんどん僕の会社に集まって来ていましたが、その後に50人から70人ぐらい辞めていきました。要はお前の代わりはいくらでもいるよという姿勢だったと思います。
そして今、第二創業ということで経営し、80人ぐらいが在籍しています。人はやはり必要とされるところに居たい、お金よりも、自分が必要とされるから、もう少し頑張ってみようとか、社長にこういうことを言われたから頑張ろうとか、そういう気持ちがあると思います。そこで今は、人を見るような形に変えました。
そしてもう1つはチームです。いくらベテランの人でも、お客さんによっては色んな難題が出てきます。そうしたことを乗り越えていくためには僕は仲間が必要なんじゃないかと。そこでチームを作り、みんなで関わり、常に言いたいことを相談し合えるような環境づくりをしています。
そして人間力のための人材育成。いくら理念がこうだよ、会社はこんなことをやろうとしているんだよと言っても、聞く側がそれを理解してくれないと、一方通行的な話になってしまう。そこで常に毎月1回でも研修やセミナー受講とか、日々の会話から少しでもリーダーシップとはなんだろうと、自分は何のために働いているのだろうとかを考えていくような時間をつくっています。
宮嶋 : 私が考える離職率軽減方法は、自分がいる会社がどっちに向かって走って行くかの方向性、何年後にどのような形の会社になって行くのかということを、必ず職人さんも含めて全員で共有することが重要だと思っています。弊社はまだ15年目の会社ですが、経営計画発表会というものを必ず一年に1回、職人さん、協力業者さんも合わせて行っています。その経営計画を4年程前から始めて、非常に意識が変わったなと感じています。
もう一つ小山さんも言われていましたが、最近はチームが非常に重要かと思っています。新卒生としてうちも第3期生まで入りました。一つ上の先輩が続いて居るような会社でしたらいいと思うのですが、ウチなんかは新卒生22歳の上は29歳とか30歳となり、中間層が全くいない。そこで同期でコミュニケーションを取るような形にしています。
去年、職人さんが6人新卒で入って来て、一時全員辞めたいっていう流れになった時がありました。しかし、同期同士が会話を重ねることによって皆で励まし合う流れが最近出て来ています。上からドーンと言うよりは、上司が部下に関わって、部下がさらに新人に関わってというその上下関係というのをしっかり構築していくことが非常にいいのかなと感じています。