技術の進化は歓迎すべき~工場生産の進行に対する技術の衰退
◆今、メーカー技術が進んできたことにより、職人技術が必要なくなり、衰退していく可能性がでてきています。その問題点についてどう考えていますか。
宮嶋 : 今ハウスメーカーさんは20年塗らない外壁とか、光触媒加工された外壁が出てきています。ですから我々の20年後30年後のビジネスが少しずつでも少なくなってくると思うのです。安くて良いものが生まれるというのは自然の流れ。ただ、今の内装や特殊なものに関しては非常に技術が光るところですから、そういうものも会社として取り組んでいかないと、全て既製品で賄うのは非常に悲しいですね。
小山 : この点については色々と思うことがあります。僕自身も左官の会社で、昔はモルタルとかを厚く塗っていたのに、今はほとんど材料も使わないで現場が終わってしまいます。下手したら工場で作って来たものをはめた、隙間の穴を埋めるだけの現場まで出て来てしまっている状況です。若手世代からすると、この業界に入って来て、昔はこんな仕事だったんだよと、でもできないと言われると、すごくつらい気持ちになってしまう。自分たちが昔の良い仕事を普段やれないんです。
そこで、僕はある時点から自分の中で結構さっぱりと区切りました。昔は昔、今は今と。もちろん技術を伝承していくのはすごく大事だと思うんですけど、この業界の魅力を伝統的な仕事だけにフォーカスしてしまうと、残りの90何%の職人さんたちのやりがいといった所に結び付けることが本当に難しい。
技術だけがあったら一生ご飯を食べていける時代じゃなくなってきている。覚悟を持ち、職人の価値とは何だと考え、新しい建設職人の価値をつくって行けたらと、今、建設職人甲子園の活動をしています。
仲本 : 時代の流れというのは、技術革新であり、仕方がないというよりも歓迎するべきなんじゃないかと思う所があります。良い例として、僕が関わっている窯業系サイディングが最初に出来たのが1972年。まだいくらも経っていないのですが、今木造住宅の75%ぐらいのシェアとなっています。やはり小山さんも言われたような、多能工化とか、僕たち職人さんがやるべきことが時代と共に変わって行く。
それはあらがっても仕方のないところで、逆に我々職人が力を持って、そういった新しい開発に向ける、これから職人になる若い人たちにも、仕事を覚えるだけじゃなく、開発しなきゃいけないという未来を提供していくべきです。結論を言うと、もうこれは職人技術が衰退するというのもさらに発展するという思いで向かって行ったらいいと思っています。