変化に強くなるべき~目で見て技術を覚えることはいいことか

◆そもそも職人の方は、技を見て盗めと、そして覚えさせる育成体系が中心だったと思います。それが現代社会において良いことなのか、この件に関しての意見をうかがいます。

仲本 : 目で見て技術を覚えることは悪いことではないです。しかし、今は教えられないと分からないよという時代です。与えられたことをやって行くような教育方法に慣れて育ってしまっている若い人たちが多いんじゃないかなと。ですからクラフツメンスクールでは、自分で失敗して学ばせる。現場では実際に親方がやってみて教えても、2回も3回も4回も5回も失敗するのが現実。やはり失敗して、工夫をすると覚えられます。それは時代じゃなくて、昔からそうだったと思うのです。

小山 : 僕は左官業ですが、昔は先輩がブルーシートを隠して絶対技術を見せてくれないような業界でした。今は昔みたいに土を塗る機会がほとんどなくなり、左官が薄塗になって来て、どんどん簡単になってきています。だから変化に強い職人になることがすごく大事。時代がどんどん変わって行き、工場で作ったものを現場ではめて、工期も短くなり、値段も安くなっています。そんな中でも職人として大切なものをなくさなければいいかなと思います。

宮嶋 : 非常に難しいですが、私の時は完全に見て覚えろという年代でした。もちろん先輩の背中を見て育つというか見て盗むことが、将来的に非常に役に立つと思います。私自身、目で見て技術を覚えることは非常に良いことだと思っています。ただ最近、この3、4年常に感じますが、誰かに負けたくないとか、あいつより絶対に俺は上にいくんだという、魂が徐々に薄くなっている。社内の競争力が低下してきているというのが、正直な意見です。

ウチも職人の技術研修、技術テストという物を定期的に行いながら、わざと順位を付けています。その中で、なかなか上がらない子もいますが、先ほどのチームの中で、皆が教えるという形に徐々になっている。ですから、見て覚えるのも一つ、そして会社でプログラムを多少なりとも作り、積極的に技術は教えていくという、ダブルでやっていくのが良いのでは、と感じています。