ゴール
(写真=Thinkstock/Getty Images)

企業の経営者が経営状態を判断するとき、もっとも的確に感じられるのは、雇用の過不足と金融機関の貸出態度(特に中小企業)についてであると考えられる。雇用判断DIは不足感が強くなり、金融機関の貸出態度の緩和も実感されており、前回の景気拡大のピークよりも状態は良好である。

実際に、実質GDPの前年同期比(4QMA)は、全規模全産業雇用人員判断DIの前年差と中小企業全産業金融機関貸出態度DIでうまく説明できることがわかっている。実質GDP(前年比、4QMA)=0.66-0.14 全産業全規模雇用判断DI(前年差) +0.04 中小企業貸出態度DIR2= 0.60

これで日銀短観によるセンチメントを表す推計値をみると、実質GDP成長率が2%程度の高い水準で推移してもよい状態である。

一方、実際の実質GDP成長率は鈍化(4-6月期の前年同期比4QMAは-0.6%)してしまっており、これまでにない(リーマンショックを除く)乖離が生まれてしまっている。景気の気(センチメント)の部分が政策と円安で支えられている一方で、中国経済の不透明感を含め、海外経済の回復の鈍さによる輸出の伸び悩み、そして拙速であった消費税率の引き上げが成長の足を引っ張ってしまっていることがわかる。

実体経済と物価が強くなるまで辛抱強く気の部分を政策で支え続けることを日銀・政府が怠り、デフレ完全脱却までの果断な政策コミットメントがマーケットと企業に疑われてしまうと、景気の気の部分が弱い成長率の方向に悪化し、デフレ完全脱却への原動力が失われてしまうリスクとなる。

そうなってしまうとデフレ完全脱却に挑戦するアベノミクスの失敗となり、逆に成長率がセンチメントの方に上昇すればデフレ完全脱却が完了することになろう。今はどちらに行くかの瀬戸際にあり、デフレ完全脱却のゴールまでの残り1マイルの道はぬかるんでいる。

それほど追加的なコストが大きくないにもかかわらず、最後の政策の一押しを怠って、デフレ完全脱却を失敗し続けた歴史があることを、政府・日銀はしっかり意識する必要があるだろう。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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