売り上げの91%、パズドラ頼みのガンホー
一方で同じゲーム業界でも、経営方針がグリーとは対極をいく企業がある。パズル&ドラゴンズで有名なガンホー・オンライン・エンターテイメント(ガンホー)だ。
ガンホーには業種・業態にも、他社にはない特徴がある。それは、1つの作品に売り上げをほぼ依存していることだ。それはパズル&ドラゴンズ。2014年12月期の有価証券報告書によると、同作品関連の売り上げがガンホー全体の売上高の91%を占めている。パズル&ドラゴンズのダウンロード数は3700万を超え、手元キャッシュも潤沢だ。
その証拠に2014年12月期決算では、手元キャッシュが869億円に達し、売上高は1730億円、経常利益は935億円。売上高はグリーの1.87倍、経常利利益は3.73倍だ。特に経常利益は、任天堂が705億円(2015年3月期)であることから、ガンホーがいかに稼いでいるかが分かる。
単一事業ならまだしも、単一製品・ソフトにここまで売り上げを依存している上場企業を筆者は知らない。
ゲームをしたことのある読者なら分かると思うが、ゲームはすぐに飽きてしまうもの。だからこそ、ヒットを飛ばそうと年間数千、数万ものタイトルが世に誕生し、そして消えていく。パズル&ドラゴンズは2012年2月に世に出てから4年目を迎えたが、今なお順調だ。ゲームのライフサイクルは短いから、パズドラに極度に依存するガンホーはリスクが高い企業だと筆者は考えていたし、実際にリスクが高いと考えるのが自然だ。
しかし、ガンホーの考え方は違う。単一ゲームソフトでも、やり方しだいでは、安定した収益確保の可能性があることを示した。たしかに将来は分からないが、ここまで長く愛されるゲームで収益確保できるのは新たな考え方、今までの常識を覆すビジネスモデルといえるかもしれない。
ガンホーの懸念は課金率の低下
ガンホーに懸念がない訳ではない。
2015年6月の四半期決算では、前年同期比で、減収減益を記録した。これは課金率の低下によるものであるが、一時的なものかどうか見守る必要がある。確かに課金率低下による減収減益だが、アクティブユーザー数は微減であり、ガンホーも業績管理目標としてアクティブユーザー数を重要視しているからだ。今後の推移も見守りたい。
グリーとガンホーの経営方針のどちらが正解ということはない。収益拡大を求めるという考えはどちらも同じだ。どちらの経営方針が正しいか、また両者ともに正解か、不正解かという問いの答えを得るには、数年待たなければならない。どちらの会社も潤沢なキャッシュ・フローを元に投資をし続けている。
「已往の諫められざるを悟り、来者の追うべきを知る」
過去には失敗もあるかもしれないが、これからのことは今からでも遅くない。
李 顕史
李総合会計事務所所長。一橋大学商学部卒。公認会計士東京会研修委員会副委員長。あらた監査法人金融部勤務等を経て2010年に独立。主に上場会社、金融会社の内部監査・経理・管理会計分野において、コンサルティング業務を行うほか、銀行などにもアドバイスを行う。
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