◆その他の重要な4指標

【7】電力消費量

経済活動をする上で欠かせない電力消費量も、景気動向を見る上では有効な指標となる。李克強首相は特に工業の電力消費量を重視しているとされる。

足元の動きを見ると、9月の電力消費量は前年同月比0.2%減と8月の同1.9%増からマイナスに転じた。また、1-9月期では前年同期比0.8%増と小幅な増加に留まり、前年並みを中心に一進一退の動きが続いている(図表-10)。

一方、業種別に見ると、第3次産業は前年同期比7.3%増と昨年よりも伸びが加速した一方、第2次産業は同0.7%減とマイナスに落ち込んでいる(図表-11)。

これは第3次産業の堅調さと第2次産業の景気の悪さを示すものだが、第2次産業の中核である製造業で省エネが進んだことも電力消費の伸びを低く抑える要因となっている。また、中国では第2次産業から第3次産業への産業構造の高度化が進んでおり、電力消費量の多い第2次産業から少ない第3次産業への移行が進行していることも、全体の電力消費量の伸びを低く抑える要因となっている。

中国経済10

【8】貨物輸送量

景気が良くなるとモノの移動も増えることから貨物輸送量の動きも重要である。特に鉄道貨物輸送量は李克強首相が重視していたとされる指標でもある。以前は筆者も鉄道貨物を見ていたが、過半を占める石炭がエネルギー改革の中で構造的に減少し、景気動向とかけ離れた動きを示すようになってきた。

そこで、貨物輸送量に占める割合が大きい道路貨物(全体の約76%)を鉄道貨物(全体の約9%)の代わりに見ることとした。9月の道路貨物輸送量は前年同月比5.2%増(推定)と8月の同5.8%増を下回り、モノの荷動きには陰りが見られる(図表-12)。

中国経済11

【9】生産者物価

モノの値動きも、景気動向と密接な関係がある。生産したモノに対する需要が強ければそのモノの値段は上がり、需要が弱ければ下がるからである。足元の生産者物価(工場出荷)の動きを見ると、原油などの国際商品市況が下落したことなどを受けて9月は前年同月比5.9%下落となった。但し、8月の同5.9%下落から横ばいに留まっており、特に加工業では下落の勢いが鈍ってきた(図表-13)。

中国経済12

【10】通貨供給量(M2)

おカネが動きだすと景気も良くなることから通貨供給量(M2)も注目したい指標である。足元の動きを見ると、9月は前年同月比13.1%増と3ヵ月連続で15年の目標値である「12%前後」を上回った(図表-14)。

一方、銀行サイドから見ると、融資残高は7月以降3ヵ月連続で15%台後半の高い伸びを示している(図表-15)。

8月までの動きは、銀行融資は伸びたものの、中長期融資の伸びは鈍化しており、銀行融資が投資に結びつく可能性は低かった。しかし、9月になると中長期融資の伸びが高まってきたことから、おカネが投資に結びつき始めた可能性がある。この観点で見ると、来月発表される10月の投資関連指標は要注目といえるだろう。

中国経済13