内閣府が経済財政諮問会議に提出している経済財政に関する試算の財政赤字予測を見ると、2014年は6.5%、15年は5.5%、16年は4.7%と、日本の財政収支は改善方向には向かっているが、税収の大幅な増加を考慮すると、13年(同7.4%)からの改善幅が小さいように思われる。

内閣府が発表する日本の財政収支の予測は、OECDやIMFと同じく、過去のデータを基にした計量経済モデルでなされているとみられる。15年以降の財政収支の改善幅が小さく予測されているのは、内閣府のモデルが、OECDやIMFのモデルと同じく、足もとの日本の財政収支の改善をまだしっかり反映させていないからだろう。

日銀の資金循環統計ベースで日本の一般政府の財政赤字(資金過不足)は2015年4-6月期までの1年間で3.8%となっており、2013年4-6期の8.0%と比べると、わずか2年間でほぼ半分に急激に改善していることがわかる。

2015年12月末に14年の国民経済計算確報の詳細が公表されることになるが、資金循環統計の結果を考慮すると、国民経済計算ベースの財政赤字も大幅に縮小することが見込まれる。

内閣府やOECDなどのように過去のデータを基に作る予測モデルは、モデルに含まれる実績データ期間以降に急激にデータが悪化や改善したときには推計誤差が大きくなることがある。内閣府やOECDのモデルにはまだ13年までの国民経済計算確報までしか実績データがなく、14年の国民経済計算確報の公表後にモデルは見直され、15年以降の財政赤字の縮小ペースは、かなり加速する予測に変更されるとみられる。

実際にチャートを作ってみると、12年と13年の結果から、ほぼ直線的に財政収支が改善するという過去のデータを基に作る予測モデルの典型的な形になっているようだ。14年の6.5%という財政赤字の結果が大幅に下方に見直され、それがモデルの結果を引っ張ることにより、15年以降の予測も大幅に改善方向に見直させることになろう。

14年度の一般会計の税収は企業収益の改善と総賃金の拡大により、当初予算より4兆円程度、補正予算後より2兆円程度上回った。15年度の一般会計の税収は56兆円程度の見通しとなり、当初予算より約1.5兆円程度多く、1991年度以来の高水準となる公算が強く2年連続で税収が当初見込みより大幅に増えた。リフレ政策による景気回復が税収の増加に寄与しており、緊縮財政ではなくリフレ政策によって財政を改善させるアベノミクスの大きな成果としても認識されるだろう。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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