求められるのは政府・日銀による経済政策への強いコミットメント

安倍首相は、17年4月の消費税率引き上げまでに日本経済を確実にリフレイトし、景気回復を国民に実感させる決意を表明している。政府は、16年度に前倒しで法人税率を20%台に引き下げることを決定し、企業側の規制緩和などの要求はできるだけ実施に結びつける決意を示している。

官民対話による企業への政府のプレッシャーもあり、総賃金と設備投資の拡大として企業の支出の動きは加速していくと考える。失業率が大幅に低下してきており、資本・設備を潤沢に積み増し、労働生産性を上昇させる省力化投資が、製造業と非製造業ともに急務になってきていることも、徐々に動きとしてみられるようになるだろう。

原油価格の下落による交易条件の改善が一服する中で、16年度から企業の支出姿勢が一段と強くなり、直近1年累計で計測される企業貯蓄率は前年の上昇の反動もあり、2017年4月の消費税率引き上げまでには0%に戻り、正常化したことが確認されると考える。企業貯蓄率が0%に戻れば、構造的な内需低迷とデフレからの完全脱却を安倍首相が宣言できることになる。

ここのところの企業貯蓄率の上昇は、企業の支出行動が鈍化したというより、企業の支出を支える原資が交易条件の大幅な改善によって積みあがった一時的な動きであると判断する。大きくジャンプする前のしゃがみこみであろう。その原資が支出に回ることにより、16年度の経済成長率はコンセンサスを上回る動きになると考える。

一方、財政収支は、7-9月期には-3.8%と、景気回復による税収の大幅増加などで、ピークである12年4-6月期の-9.0%から急激に改善している。理論的には、ここで企業がしゃがみこんでいる間に、改善しすぎて緊縮効果が出ている財政収支の動きを緩和する景気刺激策、特に企業活動刺激策を出すべきである。実際に、年初には3兆円強の政府による経済対策が実施されることになる。

企業のデレバレッジという総需要を破壊する力が残っていることを示す企業貯蓄率のプラスが解消するデフレ完全脱却までまだ時間がかかる。それまでに、株価下落などにより企業心理が衰えると、企業の支出計画も大幅に下方修正され、デフレ完全脱却が遠のいてしまうリスクもまだ残っている。政府・日銀が、デフレ完全脱却に向けた経済政策への強いコミットメントを国民に示し、不安感を払拭し続けることが重要だろう。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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