新型コロナウイルスの影響が世界的に広がる中、中国株の底堅さを思わせるニュースが飛び込んできた。米ブルームバーグ通信の集計によると、中国株式マーケットの時価総額が10兆ドル(約1060兆円)台にいま再び到達しようとしている。
10兆ドルの水準に再び戻るか
米ブルームバーグ通信によれば、7月13日時点の中国株式市場の時価総額は9兆7000億ドル(約1030兆円)に上っており、2015年6月に記録した10兆ドルの水準に再び戻ろうというところまできている。また、人民元ベースの時価総額は68兆元に達しており、すでに過去最高を更新する形になっているという。
中国最大級の投資銀行である中国国際金融(CICC)の金融アナリストの中には、5年後の時価総額は現在の倍になると考えている人もいるようだ。米投資銀行のゴールドマン・サックス(GS)グループなども、こうした強気の相場が数ヵ月間にわたって続くと予想しており、時価総額の上昇が一過性のものだと考える見方はむしろ少数派だ。
こうした状況を受け、中国株式市場への投資マネーの流入は今後一層顕著となる可能性が大きい。コロナ禍で多くの国の企業の株価が下落し、個人投資家や機関投資家の投資マネーが行き先を見失っている中、中国株式市場が有望な投資先と判断されれば、雪崩のように投資が加速することが考えられる。
投資マネーの急激な流入はさらなるバブルを呼ぶ。バブル前は投資の絶好のチャンスだ。そのため、今が中国株式への投資の好機だと考えている投資家は少なくない。
コロナ禍で落ち込むもすでに回復基調
2015年の中国株のバブルと大暴落は「チャイナショック」と呼ばれる。大きなリスクを含んだ信用買いが増えたことが要因とされ、2014年まで4兆ドル以下で推移していた中国株式市場の時価総額は10兆ドルを一時突破し、その後は5兆ドル前後まで下落した。
2016年以降は2017年末にかけて右肩上がりの状況が続き、その後は一度6兆ドルを切る展開となるものの、2019年中旬から再び上昇基調となった。そして2020年初旬からのコロナ禍で一時の落ち込みを見せたものの、現在はすでに時価総額は上昇局面に切り替わっている。
7月中旬時点ではアメリカ株を上回る勢いとなり、中国株式マーケットにおける主要指数の一つに挙げられる上海総合指数の伸びもすさまじいものとなった。
6月30日時点では2,984.67だった指数が7月9日には3,450.59まで上昇し、その後は3,300台を揉み合う展開となっているが、依然として高値で取引されている。8月の中旬に差し掛かった時点では、再び3,400台に到達しそうな状況だ。
また今回の中国株式マーケットの時価総額の上昇においては、これまでも成長が顕著だったITなどの業種だけではなく、エネルギー関連や素材関連などの幅広い業種の銘柄も値上がりしていることも、特筆すべき点と言えるだろう。
中国株式市場が好調な理由は?
なぜコロナ禍においても中国株式市場は好調なのだろうか。その理由としては、中国が世界においていち早く新型コロナウイルスの抑制に成功したといわれていることや、内需に関連する指標の回復が目立っていることが、投資家から好感されていると考えられる。
中国は国策として次世代技術の振興に力を入れており、ブロックチェーン技術や自動運転技術、AI(人工知能)技術を開発する中国企業の成長を見込んでの投資も増えていると考えられる。
また、新型コロナウイルスは中国のこうした次世代技術のレベルの高さを、世界にアピールする絶好の機会にもなっている。中国国内では自動運転技術を活用した無人の消毒車両などが街中を走行し、医療品の運搬でも自動運転車が活躍した。
コロナ禍からの回復、内需の回復、そして次世代技術の進化。こうした理由が重なって、今回の中国株式市場の上昇が引き起こされていると考えられる。
アメリカとの貿易摩擦も緩和される?
中国株への投資ではアメリカとの貿易摩擦がリスク要因として近年挙げられているが、今回の中国株式市場の時価総額の上昇で、貿易摩擦の泥沼化が緩和される可能性も出てきた。
中国株に投資するアメリカ人投資家が増え、中国元建てで資産を保有する人がアメリカで増えれば、アメリカ政府も強硬な措置を取りにくくなる。こうした状況がアメリカ政府にとって良いか悪いかは別として、貿易摩擦が緩和されれば中国株投資のリスクはおのずと小さくなる。
多くの企業の株式を下落させているコロナ禍。日本人の個人投資家の多くが今後どのように投資のポートフォリオを組んでよいか難儀している。そんな中、株価が上昇ムードにある中国株式市場は投資ターゲットの1つの選択肢になり得る。
新型コロナウイルス問題が今後どうなるかは注視し続ける必要があるが、有望な投資先として中国企業の銘柄を選ぶことを検討しておいて損はない状況だと言えそうだ。
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