「無人全自動のタクシー」の実現も視野に

ドライバーのいないタクシーが乗客を目的地に送り届ける。そんな送迎サービスが、完全な自動運転の実現により、提供されることになるとみられている。自動運転、ロボットなどの技術開発は必須だが、その旗手とみられるのがロボットベンチャー・ZMPだ。自動車メーカーやIT大手とも連携して、自動運転技術の開発に取り組んでおり、将来有望な企業だとみられている。

同社らは取り組みの中で、乗務員のいない無人の自動運転車が迎えにきて、交通情報などを踏まえた最短ルートで送り届けてくれるサービスの実現を目指している。その全自動運転の自動車による乗客の移動も、実証実験を行うなど、具体的な動きにつながりつつある。

他方で「ウーバー」や「全国タクシー」など配車アプリ・プラットフォームが台頭してくる中で、ZMPの舵取りの方向性も問われる形だ。今後を占う意味で、同社の取り組みの未来像を洞察する。

「ロボットタクシー」の実用化へ前進

ただ、ZMP自身は全自動のタクシーの実現に向けた開発を着実に推進。ソニーの犬型ロボット「AIBO」の開発責任者をかつて務めた景山浩二氏をメンバーの一人に迎えるなど、開発体制の強化にも取り組んできた。

さらに、他社との連携も進めており、ZMPはディー・エヌ・エー(DeNA) <1111> と提携することを公表。昨年5月には、両社は合弁会社「ロボットタクシー」を設立した。今年の2月には実際に、自動運転車を公道で走行させるロボットタクシーの実証実験が実現。神奈川県藤沢市で一般市民を乗せて、道路を走り抜けた。

ちなみに、神奈川県では、同県を地盤とする政治家・小泉進次郎衆議院議員も自動運転車の活用に積極的な姿勢を示している。今後、同県内での自動運転車の活用がさらに盛り上がるのではないかと期待されている。

実証実験で使われた車両は、トヨタ「エスティマ」を改造したもので、GPSやAI(人工知能、ミリ波レーダー、カメラなどを搭載し、データを収集。買い物シーンを想定した送迎サービスを実験し、20回の走行を行い、総走行距離は27.7km。ロボットタクシーは「交通事故やトラブル発生因子もなく、実証実験は成功」と結果報告を発表した。今後について動作は、2020年の東京五輪での事業化を目指すという。

ロボットタクシーは高齢化社会を救うのか?

ロボットタクシーは単に、無人で人を運ぶ役割を担うだけではない。地方の活性化の視点からも、期待がかかっているのだ。地方では、過疎化によってローカルバスの廃線が後を絶たず、年齢を重ねることで車を運転できなくなる高齢者も増えているという。外出できない独居老人がその典型的な例だと言えるが、地方にはそんな交通弱者が700万人以上いると言われている。

それだけではなく、過疎化に伴う利用者の減少など厳しい経営環境に地方のバスやタクシー会社はさらされており、「地方のアシ」を維持できるかどうかの瀬戸際にもなりつつあるのだ。

ロボットタクシーには、その「救世主」になるのではないかという期待もかかる。自動運転車を地方で活用する構想が進められており、ロボットタクシーにはそうした「地方のアシ」としての役割を担う可能性にも注目が集まる。より具体的には、高齢者の通院や買い物などの生活支援、障がい者や子どもの日常的なサポートにも役立つと見られている。

実際、構想発表後、ロボットタクシーには各地方の自治体から問い合わせや、ぜひ活用したいなどの声が相次いで届いたという。自動運転の実用化は地方創生のカギでもあるのだ。ロボットタクシー事業がもしも実現すれば、地方の社会を支える、社会インフラの役割を果たす可能性もあると言えるだろう。

DeNA・ソフトバンクなど大手も「自動運転」に投資

ZMPなどが推進するロボットタクシーには、資金面での追い風も吹く。著名な経営コンサルタントである堀紘一氏が設立したドリームインキュベータ <4310> もZMPに投資しているだけではなく、インテルがZMPと資本提携。ほかにも、ZMPとソニー <6758> の子会社が共同で、ドローンを利用したサービスを提供する会社を設立しており、どう稼いでいくのか注目される。

実際、「自動運転」にはさまざまな企業が注目しており、大手も続々と出資を始めている。ソフトバンクグループ <9984> は自動運転技術を活用したスマートモビリティサービスの事業化に向け、京大学発のベンチャーである先進モビリティと提携。両者は合弁会社SBドライブを4月に設立しており、ソフトバンクの孫正義代表も先進モビリティに5億円を出資した形だ。

自動運転技術の開発に賭けようとしているのは、国内勢だけではない。海外の自動車メーカーも積極的な投資に動いており、米大手のGMは自動運転関連ベンチャーのクルーズオートメーションを推定、約10億ドルで買収。英ジャガー・ランドローバーは英政府からも支援を受けている自動運転車の研究プロジェクトに出資している。

特に、自動運転技術では、GoogleやAppleといった米IT大手が先行しているとも言われており、自動車メーカーも提携や協業を強力に展開し、開発の遅れを取り戻そうとしている様子だ。

「人工知能」開発で巻き返し図る日系各社

一見、自動運転車とは関係ないが、次世代自動車開発の肝となるのは人工知能(AI)だ。AIの技術開発については、国内の自動車メーカーではトヨタ <7203> が積極展開しており、今年1月に米シリコンバレーにAI開発を手がける新会社を設立。米国のロボット研究の第一人者であるギル・プラット氏をCEOに迎え、Googleなどからも優秀な技術者の採用を進めている。

また、AI技術に強みを持つ東大発ベンチャーのプリファード・ネットワークスに対して、トヨタは10億円を出資。ほかにも、MITやスタンフォード大学と提携し、欧米と比べて出遅れているAIの研究開発を加速化させていく構えだ。

それだけではない。トヨタをはじめとする日本勢は横の連携強化も推進。日産 <7201> 、ホンダ <7267> などの国内の自動車大手6社はすでに、自動運転技術に関する8分野で共同研究に乗り出している。デンソー <6902> やパナソニック <6752> などの部品や電機大手も参加し、官民連携を深めて「オールニッポン」で欧米企業に対抗し、競争力を高めていく狙いだ。

無人運転の実用化には法規制の障壁など、課題はまだまだあるが、政府も制度やインフラ整備を宣言している。先日のロボットタクシーの実証実験も「完全自動走行に向けた国家戦略特区プロジェクト」の一環として内閣府主導で行なわれた。国の後押しも受け、「ロボットタクシー」は目的地に向けて着実に疾走中だ。(ZUU online 編集部)

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