日経平均株価
(写真=PIXTA)

海外投資家は3カ月で5兆超の売り越し

株式市場では海外投資家の“日本離れ”が進んでいる。東証が公表している投資部門別の売買動向をみると、海外投資家は年初から3月末までの3カ月間で5兆円を超える売り越しとなっている。

これは、「ブラックマンデー」の起きた1987年(7兆円超)以来、約30年ぶりの大規模な売りとなる。しかも、週ベースの集計では年初から一度も買い越しておらず、一貫して売り続けているのだ。新年度に入っても株価が下落していることから、海外投資家の売りは継続している模様だ。

世界経済が減速するなかでも、2015年の日本株は相対的に高い伸びとなった。しかし、今年に入りパフォーマンスが急速に低下しており、特に海外投資家比率の高い銘柄が深刻な打撃を受けている。日経平均採用企業では、日産自動車 <7201> やTDK <6762> などが日経平均より大きな下げとなっている。

ドル安で打撃を受ける日本を回避

海外投資家が日本株を売り越している背景には円高がある。オランダの資産運用会社NNインベストメント・パートナーズは3月下旬、日本株の投資判断を「オーバーウェイト」から「アンダーウェイト」に引き下げた。

同社は資産運用額23兆円を誇る世界最大のアクティブ運用会社の一つで、安倍政権が発足後の2013年初めから日本株には前向きな見方をしてきたが、ドル安を理由に見通しを変更した。「ドル安は米国や新興国には追い風となるが、日本は円高が企業収益を下押す恐れがある」としている。また、「長期的な懸念材料として、日本企業が余剰資金を配当や自社株買いに回し、投資を行っていない」とも指摘している。

このように、グローバルな資金の流れは「ドル安」を起点としており、ドル安(円高)でダメージを受ける日本を離れて、恩恵を受ける米国や新興国へと資産を振り向けているといえそうだ。

1ドル100円割れなら日経平均1万3000円

逆説的ではあるが、海外投資家が大きく売り越せるのは、これまでに積み上げた買い越しがあるからだ。2012年11月には9000円を割り込んでいた日経平均も2015年4月には2万円台に乗せており、年初からの動きはここ2~3年で日本株を買っていた海外勢が利益確定の売りに動いたとも解釈できる。

アベノミクス相場が始まった2012年11月から2015年末までの海外投資家の買越額は17兆円となっており、年初からの3カ月で3割が売られた計算となる。そう考えると、気になるのは残りの7割、12兆円の行方となる。

ドル円と日経平均の水準を振り返ってみると、2014年10月31日にいわゆる「黒田バズーカ2」と呼ばれる追加緩和が実施されたが、緩和前のドル円は1ドル=108円前後、日経平均は1万5500円前後となっていた。4月8日現在とほぼ同じ水準にあることから、現状はこのハロウィーン緩和前の水準に戻ったことになる。言い方を変えると、量的・質的金融緩和の第2弾の効果がはく落したとも言える。

量的・質的金融緩和が始まったのは2013年4月4日で、この時はドル円が96円台、日経平均は1万2500円前後だった。海外投資家が円高を嫌気して利益確定の売りに動いているという前提に立つと、やや単純ではあるが、今後ドル円が100円を割り込むところまで円高が進んだ場合、残りの7割である12兆円の買い越しも解消されて、株価は1万3000円を目指すというシナリオも想定されることになりそうだ。

想定レートとのかい離を警戒

海外投資家の日本売りは、円高による輸出企業を中心とした業績懸念とリンクしており、企業業績を考える上でまず念頭に置きたいのが想定レートとなる。日銀によると、2015年下期の想定レートは118.69円となっている。ドル円は昨年末まで120円台だったことから、為替差益が期待できたが、3月末には112円台となっており、想定レートを大きく下回っている。

さらに、2016年度の想定レートは117.46円となっており、4月8日現在とは10円近い開きがある。例えば、トヨタは1-3月期の想定レートを115円としているが、1円円高になると年間で400億円利益が減ると言われており、仮に105円まで円高が進んだ場合には4000億円ほど利益が圧縮される可能性があるということだ。円高の進行により、今後相次いで業績下方修正の発表が見込まれており、株価を圧迫することになりそうだ。

円高の流れが止まるかのか?

“日本離れ”は海外投資家のみならず、日本の機関投資家にも広がりをみせている。あいおいニッセイ同和損保は4月8日、2016年度の資産運用計画について、日本株を圧縮する方針を継続することを明らかにした。日本株の先行きに不透明感が強まっているために、早めに売却したいとしている。

こうした日本離れに終止符を打つためにはまず円高の流れが止まる必要がある。「手詰まり」とされている日銀の次の一手も注目だが、最近の「ドル安」の流れを主導しているのはFRB(米連邦準備理事会)であり、FRBが利上げを先送りしているがぎり円安への転換は期待薄となる。したがって、円高が止まる条件としては米国が追加利上げを実施できる環境が整うことが優先され、失速している米景気の持ち直しが待たれる。

円高要因としては、リスク・イベントの発生にも警戒が必要だ。リスク・イベントが発生した場合、円は資金の逃避先として買われる傾向にあることから、原油安や中国経済への不安が再燃した場合には円高に振れやすいといえる。また、欧州では英国のEU離脱の是非を問う国民投票が6月23日に実施される。離脱の可能性が高まるほど、リスク回避的な円高になる可能性がある。

最後に国内に目を向けると、消費税率引き上げの再延期や景気対策などの財政政策による株価の下支えが期待されている。また、5月26・27日にはG7伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)が予定されており、議長国である日本が財政出動でG7合意をまとめられるかどうかが注目されている。世界経済の減速を受けて、主要国が景気対策を打ち出すことで合意できれば、リスクオンの円安へと流れが変わるかもしれない。

以上を簡単にまとめると、日本離れを防ぐにはドル安が止まる必要があり、そのためにはまず米国で利上げ環境が整うことが条件となる。さらに、先行き不安が高まるようなイベントが発生せず、日本を始めとする主要国が景気対策を打つのかどうかもポイントとなる。(在米エコノミスト)

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