一万円札,インフレ,損
(写真=PIXTA)

今年度は1万円札が増刷される。財務省によると1万円札の発行量は、前年度より1.8兆円分多い12億3000万枚(12.3兆円)になる予定だ。マイナス金利やマイナンバー制度などで、タンス預金等が増え、市場に出回る1万円札が減少したからだ。実は1万円札が増えて一番喜ぶのは一般市民ではない。

最強の勝者は日本という国

1万円札が増えたとしても、実質賃金などは増えないため企業経営者やサラリーマンが得する訳ではない。もちろん、預貯金が増えるわけでもない。むしろ現預金で持っている場合などは損をするケースもある。

得をする人なんていないのでは?と思うが、多額の債務を抱えている場合は別だ。

過去にした借金の残高が増えることはないので、債務の実質価値が下がり返済負担が軽くなる。例えば1年前に1億円を借りた後に20%のインフレになると、お金の価値が20%下がるということなので、実質的に債務残高が8000万円になる。

インフレになると、最も多くの負債を抱える者が一番メリットを享受することになるわけだが、日本で一番借金を抱えているのは何を隠そう日本という国である。2015年12月末の政府債務残高は1087兆円に達している。仮に日銀の目標通りに2%のインフレになれば、単純計算しても1年間で22兆円の借金が軽くなる。しかもインフレ効果は複利で働くため、インフレ率2%が定着すれば10年利付国債の償還額は実質的に20%減となる。

日本国政府はインフレによって、イソップ物語「塩を運ぶロバ」のように重くのしかかる借金を軽くしようとしているのだ。

政策の方向を見定めて旨味を得るには?

借金のある人に旨味があるからといって、借金をするわけにはいかない。住宅ローンなどを検討している人は、インフレが加速する前に借りることで、旨味を得ることはできる。

だが、借金をする予定がない場合、どうすれば良いのか。それは現金と相対的に価値が上がるものに資産を代えることだ。

最も有効なのは、外貨に投資をすることだ。日本は市場に流通する紙幣の量を増やしているので、日本円の価値は下がっている。一方、市場に流通する紙幣量を減らしている米国などは、対象的にお金の価値が上がっていく。日銀の力技の波に乗ることで旨味を得る方法だ。

そしてもう一つ、資産を純金などの実物資産に代えることも有効だ。紙幣は紙切れになることがあっても、純金は紙切れになることはない。どんなに時代が変わろうとも、純金は純金という実物資産としての普遍的な価値を持ち続けるからだ。

日銀は「物価の安定を図ることを通じて、国民経済の健全な発展に資すること」を掲げているが、どうやら本当の目的は日本国政府の利益であるようだ。個人も大きな政策の波に乗るのなら、借りるか投資するかの選択と言えるだろう。(ZUU online編集部)

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