6月第2週の東京株式市場は、方向感の定まらない一進一退の展開だった。円安や米株高を手掛かりに、日経平均株価は1万6800円まで上昇する場面も見られたが、週後半には買いが続かず、利益確定の売りに押された。
今週は14~15日にFOMC(米連邦公開市場委員会)、15~16日には日銀金融政策決定会合を控えており、まずはこれらの主要イベントを見定めたいところだ。
川崎汽船、3日までに売り残が117万株増加
それでは、今回は東証1部の「信用売り残増加」上位10社の顔ぶれを見てみよう。
(1) 川崎汽船 <9107> 117万株
(2) 新日本科学 <2395> 90万2500株
(3) 日本エンタープライズ <4829> 84万8300株
(4) 富士紡ホールディングス <3104> 58万8000株
(5) 三菱総合研究所 <3636> 51万4000株
(6) セブン銀行 <8410> 49万4900株
(7) すかいらーく <3197> 41万6200株
(8) 日立製作所 <6501> 40万9000株
(9) 日本製鋼所 <5631> 34万3000株
(10) ペプチドリーム <4587> 32万5400株
※銘柄、証券コード、売り残増加の順。6月7日公表
信用取引の買い残・売り残データは、週末時点の数字が原則翌週火曜日に更新される。今回のランキングは6月3日までの1週間に増えた売り残の多い順を示している。業種に偏りはみられない。新たな手掛かり材料が出た低位株が比較的多かったようだ。
川崎汽船、株式の34%を投資ファンドが取得
今回は「信用売り残増加」上位10社の中から川崎汽船、日本エンタープライズ、三菱総合研究所の3銘柄を取り上げたい。
川崎汽船は海運大手の一角。中国や資源国の景気悪化により船舶市況が低迷し、経営環境が厳しくなっている。4月下旬の2016年3月期決算発表では、事業構造改革を続けるため、前期(16年3月期)は約515億円、今期(17年3月期)は約350億円の最終赤字を見込んでいる。また、中期経営計画についても、15~19年度の5年間の投資計画を従来の3300億円から2300億円に下方修正した。
市場関係者からは、船舶市況の低迷を理由に業績予想や目標株価を下方修正する動きも見られる。株価は6日以降、230~240円台でもみあいが続いているが、業績悪化の予想を踏まえての信用売りが膨らんだようだ。その一方で、買い残も17万4000株増加している。
10日には、投資ファンドのエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが川崎汽船株の34.11%を保有したことが明らかになった。報道によると、エフィッシモは旧村上ファンド出身者が設立。同社代表は川崎汽船について「潜在的な企業価値に比べ割安」と指摘していると報じている。しばらくの間、思惑絡みの売買が増えることも考えられよう。
日本エンタープライズ、「いなせり」を手掛かりに株価上昇
日本エンタープライズは携帯電話向け情報配信を主力とするIT企業。3日、東京都中央卸売市場築地市場・東京魚市場卸協同組合との協業により、飲食店向けにEC(電子商取引)事業を行う子会社「いなせり」を設立すると発表し、動意づいている。
発表内容は、市場が豊洲に移転した後の11月から、飲食店に鮮魚などを販売するサービスを始めるというものだ。
発表した3日には株価がストップ高となった。このため、一段高を期待した投資家の買いと、反動安を狙った向きの売りが交錯した。3日時点の買い残増加は109万2100株と、売り残の増加数を上回っていた。結局、10日終値は390円で、前週末(3日)から30%上昇。現時点では、買い手側が利益を得た形になっている。
三菱総合研究所、株式売り出しで需給悪化懸念
三菱総合研究所は、三菱グループのシンクタンク。コンサルティングとITシステムが収益の柱となっている。
5月30日に普通株式142万1400株の売り出しを公表した。需給悪化を懸念した向きが信用売りを増やしたとみられる。一方で買い残も37万2700株増加している。
三菱総合研究所の発表によると、今回の株式売り出しは分布状況の改善と流動性向上が目的。筆頭株主の三菱商事や三菱東京UFJ銀行、ダイヤモンドオフィスサービス、三菱重工業などが保有する同社株を売り出す意向だ。(ZUU online 編集部)
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