今年はVR(Virtual Reality、仮想現実)元年といわれている。

VRとはコンピューターグラフィックスや音響、感度センサーなどを組み合わせて、人工的に 3D の世界を作る技術である。

以前は高性能のコンピューターやそれを制御するソフトウエアをはじめロボティクス、通信、計測工学、制御工学、表現技術や認知科学などのノウハウと、ヘッドマウントディスプレイなどの特殊なインターフェースが必要であった。

高度な技術とコストがネックであったことから、実用化はパイロットのフライトシミュレータや軍事訓練用のシミュレーションシステムなど非常に限られた分野に限られていた。だが近年は飛躍的な技術の進歩と劇的なコストダウンにより、そのハードルは驚くほど低くなってきている。それらの環境が整いつつあるため、一般の消費者に近い分野でのマーケティングに応用しようとする企業が増えてきている。

Volvoバーチャルリアリティ・テストドライブ

ボルボはVolvo XC90のローンチにおいて、世界初のバーチャルリアリティ・テストドライブを行うマーケティングを展開した。

GoogleのペーパーVRゴーグル「Google Cardboard」と専用のスマホアプリ「Volvo Reality」で、実車に乗らずに試乗体験ができるしくみだ。Google CardBoard は スマートフォンを収納して頭部に装着すると、ビューファインダー越しにディスプレイのコンテンツを 立体視できるゴーグル型デバイスで、段ボール製(!)であることで1000円から2000円程度と驚くほどの低価格でVRを体感できる。

スマートフォンという身近なデバイスを用いることもハードルを下げることに貢献している。多くの自動車メーカーは自社の公式サイトやモバイルアプリで自動車の外装やインテリアをシミュレーションできる施策を整えているが、このボルボのバーチャルリアリティ・テストドライブは一歩進化している。

ALTA新築・リフォーム・シミュレーター

住宅の新築・リフォームで注目されているのがプレゼンツール「ALTA」だ。ALTAで作成した3Dデータで作成した住宅の新築・リフォームプランを3Dプロジェクターからスクリーンへ投影する事により、実寸大のバーチャル空間を作り出す。

ALTAとVRシステムがリアルタイムで連動していうので、間取りの変更やインテリア・家具・住宅設備機器、内外装材・床材などの変更をプラン上で行えば、同時にVR空間にも変更内容が反映される。

これらがそのまま実寸大のVR空間で表現できるので、平面パースでは伝わりにくい吹き抜けやスキップフロア、システムキッチンや手すりの高さ、階段の幅、ウォークインクローゼットの奥行やベランダの広さなど、細部までも実寸大で体感することができる。メーカーにとっては「イメージと違った!」という後のクレームを大きく軽減することが可能になり、契約までの商談期間の短縮と、もっとも重要な信頼性を高めることができる。

また施主の側からはプランへの納得性と安心感が高まるといったメリットがある。これはマーケティング上の大きな利点となるだろう。

地方自治体の観光マーケティング

日本国内でも観光協会や企業によるVRを活用した観光マーケティングが実地され始めている。地方自治体や、新しい観光マーケティングの手法としてIT企業、旅行代理店、メーカー、大学などがVRに取り組んでいる事例が出てきている。

国内はもとより国際的にも有数の人気観光地である京都では、大学や企業、財団法人など様々な組織が主体となって、VRを活用したマーケティングがすでに数年前から行われている。

2014年にはすでに立命館大学アート・リサーチセンターによって、VR技術で祇園祭の山鉾巡行などをバーチャル体験できる「祇園祭デジタル・ミュージアム展2014」が開催されている。またニッポンドットコムが運営する海外に日本のコンテンツを発信する多言語Webメディア「nippon.com」で、360度パノラマ写真で日本の観光地を紹介するコンテンツとして、京都の清水寺が第一号として公開した。

観光客にすれば、観光とは多くの時間とコストをかけて体験を買うことだともいえる。そのために観光地を検討するための下調べの段階でVRによって擬似体験を提供することで、今まで以上に「ぜひそこへ行ってみたい」と思わせることが可能だ。

文字と写真という平面的で限られた情報より、立体的でより具体的な疑似体験ができることは何よりも優れたマーケティングの手法といえるだろう。

よりリッチな疑似体験へ

小売業界でもマーケティングやプロモーションにVRを導入する例が増えてきているが、よりVRがアドバンテージを持つのは、高額の商品--上述のような自動車、住宅、旅行など--だろう。

購買前の比較・検討段階において今まで以上のより具体的な「疑似体験」を提供することで、購買のハードルを下げることができる。高額の商品では今まではスペックなどの静的な情報に偏りがちだったが、よりリッチな「疑似体験」というエモーションに訴えるマーケティングが、VRを活用することで可能になった。

今後もVR技術の進歩とノウハウの蓄積によって、「疑似体験」マーケティングはさらに進化していくだろう。(ZUU online編集部)

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