考えられる「3つのオプション」
EUによる新協定として考えられるものは、主に3つのオプションがある。
ひとつ目がカナダ・オプションで、EUとの新しい包括経済協定を目指すものだ。カナダとEUのCETA(包括経済協定)の40近い交渉項目は経済に関するものばかりで、租税や社会保障、移民などは含まれていない。
2つ目がノルウェー・オプションで、これはEEA(欧州経済領域)に加盟することで、単一市場へのアクセスを確保し続けることだ。しかし、EEA協定はEU法とほぼ同じ内容のうえ、EUの政策決定には関与できず、EU予算への拠出が求められる。これならば、EUに残留した方が良いともいえるオプションだ。
3つ目がスイス・オプションで、EFTA(欧州自由貿易協定)に加盟した上で、EUと個別協定を結ぶ方法だ。貿易協定を土台として、それ以外は個別合意を結ぶやり方なので、人間の移動、司法・警察、税制、年金といった分野まで交渉が及ぶ可能性もある。しかし、この合意は、金融セクターが含まれていない。
以上を考えると、カナダ・オプションが最も英国の理にかなっているが、情勢はなお不透明だ。カナダ・オプションが選択されたとしても、自動車セクターでどのような交渉となるかは、現時点で全く予測がつかない。
英国車ブランドが消滅する恐れも
先述した英国内の乗用車総生産台数は150万台と、EU全体の10%ほどしか占めておらず、世界的にみてもドイツの560万台、日本の820万台、中国の1900万台と比べれば、数の上ではそれほど高いわけではない。このことから、Brexit が世界の自動車産業に与える影響は限定的といえよう。
それより気掛かりなのは、今回の Brexit 問題が英国の自動車セクターの衰退を加速させかねない点だ。
たとえば、ロールスロイスとMINIはドイツのBMW、ジャガーやランドローバーはインドのタタ・モーターズ・グループ、ベントレーはフォルクスワーゲンの傘下にある。英国で自動車を生産するメリットの一つとして、EUへのアクセス(無関税)が占める割合は決して小さくはない。そのメリットがなくなってしまったとき、何が起こるのか? 外資に見切りをつけられた英国車ブランドが消滅することにもなりかねず、日本のユーザーにとっても気になるところである。(モータージャーナリスト 高橋大介)
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