行き詰まる前に考えることを止める!?

そんな佐藤氏も、かつてはいくら考えてもアイデアが出ない、考えがまとまらない状況に陥ることがあったという。そこで学んだのが、「自分が追い込まれる手前で、考えるのをやめる」ことだった。

「今まで何度もドツボにハマったので、『これ以上考えると行き詰まるな』というのがわかるのです。経験を積むことで、自分の脳の状態を客観視できるようになったという感じでしょうか。世界のトップデザイナーの方々に話を聞くと、皆さん共通で持っている感覚らしいです」

複数の仕事があったら、締め切りが迫っているものではなく、「今やりたい仕事からやる」のが佐藤流。やりたいことなら、脳も良い状態で気持ちよく作業が進み、後回しにした仕事もスムーズに進むことが多いという。

「もう1つ、一流デザイナーに共通するのが、『常に2人の自分を持つこと』。『自由で楽観的な自分』と『規律に厳しい自分』、『テンション高く盛り上がる自分』と『冷静な自分』といった『2人』の目で物事を見るのです。

このように、2つの視点で思考のブラッシュアップを繰り返していけば、いずれ質の高い解決案を生むことができるはずです。ぜひ試してみてください」

佐藤オオキ(さとう おおき)デザイナー
1977年、カナダ生まれ。早稲田大学理工学部建築学科首席卒業。同大学大学院修了後、2002年にデザインオフィス「nendo 」設立。東京とミラノを拠点に、建築・インテリア・プロダクト・グラフィックと多岐にわたってデザインを手がける。2006年、ニューズウィーク誌「世界が尊敬する日本人100人」に選出。「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」を始めとする世界的なデザイン賞を数々受賞。著書に『問題解決ラボ』(ダイヤモンド社)など多数。(取材・構成:塚田有香 写真撮影:永井浩)(『 The 21 online 』2016年8月号より)

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