7-9月期の実質GDPは前期比年率+0.8%程度、2016年全体でも+0.5%程度となることが見込まれる。日本の実質GDP成長率は弱いと言われながら、2年連続で0.3%程度とみられる潜在成長率を上回っている。

構造改革を見極めるデータとは?

逆風の中での堅調な結果であり、これまでの日本であれば、景気後退に陥っていただろう。逆風は、グローバルな景気・マーケットの不安定化、円高の動き、そして財政緊縮であった。アベノミクスの成長戦略による構造改革の動きは鈍いと言われるが、これほどの頑強さがみられるほどに、日本経済の構造には変化があったと考えられる。

構造改革の進展度合いは、なんら基準のないまま議論されることが多い。構造改革の目的は、企業が収益を上げやすい経済環境をつくり、企業活動の活性化を生産性の向上につなげることだ。

データをみてみると、構造改革が必要だと言われてきた非製造業の売上高経常利益率は過去最高まで上昇している。アベノミクスの開始後に上昇が加速しているように見え、企業が収益を上げやすい経済環境をつくるアベノミクスの成果が確認できる。

不毛な議論を減らすのは

2017年には、逆風は順風に変わる可能性がある。順風は、グローバルな景気・マーケットの安定化、円安の動き、そして財政緩和である。2017年全体の実質GDP成長率は+1.0%程度まで上昇すると予想している。

3年連続で実質GDPが潜在成長率を上回れば、潜在成長率も緩やかな上昇が確認できるだろう。

失業率が2%台に低下し、労働需給が更に逼迫することにより、企業から家計への富の分配が、総賃金の拡大として確認され、景気回復も徐々に実感されるだろう。

不断の構造改革は必要であろうが、何の基準のないままの、構造改革が進んでいるのか停滞しているのかという不毛な議論はなくなっていくだろう。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

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