年金未払い,リスク,経営者
(写真=PIXTA)

独立して会社を設立し、「一国一城の主」となった時は気持ちが高ぶっているもの。売上の予測推移は現実の受注額をもとに予測を組み立てるものの、支出となると「死ぬ気で頑張ればどうにかなる」と思ってしまいがち。恥ずかしながら、今年の夏に法人を設立した筆者もそう考えていた。ところが、会社を設立して約1カ月後、日本年金機構から届いた納付書を見て愕然とする。封書を開くと、およそ半月後を締切りとして10万円近くの金額が請求されていた。

1. 社会保険料は天引きから納付式に

会社員のとき、社会保険料は給料明細上で天引きされているものだった。本来転職市場などで使う「年収」という言葉は額面を示すものの、実際に受け取っている金額ではないと現実感に乏しかった記憶がある。そして、実際に振り込まれている額には既に社会保険料が引かれた後の額で、「いまいくら保険料を支払っていますか?」という質問に対しても、天引きだと回答の難しい人も多い。それだけ年金などの社会保険料は、納めている感覚が薄いものだ。ところが、会社員を設立して会社を設立すると状況は大きく変わる。社会保険料は天引きから納付式になる。そして、労使折半になるという点だ。筆者は会社員を終了するとき、1年間の個人事業主期間があったためにソフトランディングが可能だったが、急に労使分の請求書が来ると愕然とすることだろう。

2. 社会保険料は労使折半

会社員にとって社会保険料の半分は会社が支払う。わかりやすく明示すると以下のようになる。

会社員(独立前):個人分の厚生年金+個人分の健康保険
事業主(独立後):個人分の厚生年金+個人分の健康保険+会社支払分の厚生年金+会社支払分の健康保険

ここからわかる通り、事業主となると支払う社会保険料は「2倍」となる。半分が個人分、半分が会社拠出分といっても大きな違いはない。会社設立当初はなけなしのお金に個人分も会社分(内部留保分)もないからだ。唯一違いを感じるとすれば、個人分の年金は役員報酬(社長報酬)から削ることができて、残りの半分は会社から「保険料」という勘定科目での出費となる。その時に意識するくらいだろうか。

3.未納の影響は「◯か月目」から

起業直後は猫ではなくても手を借りたいほど忙しいもの。社長業と呼ばれるようなマネジメント業務はなくても、営業も事業推進も、総務も経理も、事務所の掃除さえもやらなければいけないので当然だ。社員を雇ったり、業務委託する余裕ができたりした段階で、雑多な仕事が社長の手を離れ、ひとつずつ会社の成長を実感するという言葉もあるくらいだ。

余裕がないなか、日本年金機構から封書が送られてくる。多くの場合、支払期限までは半月もないほどタイトなスケジュールだ。会社員時代の収入にもよりますが、10万弱という金額に、「余裕ができたら支払うことにしよう」と後回しになることも。実際に筆者は日本年金機構に電話をかけ「締切りを超えても(この納付書で)支払うことはできますか)と問うと「月が過ぎても大丈夫です」という返答が返ってきた。

筆者は月が空けて売上が入金された時点で支払ったが、実は未納の影響は「1か月目から」だ。正確にいうと病気やケガをしたときに対象になるのは公的年金の「傷害年金制度」となる。

平成28年現在、この障害年金を受けるための条件は以下の2つ。どちらかを満たせば受給対象となる。

(1)初診日の属する月の前々月迄の年金加入期間において、年金保険料の納付月数と免除月数の合算月数が3分の2以上であること
(2)初診日の属する月の前々月迄の過去1年間に年金保険料滞納月が無いこと

会社設立は社長の急な病気やケガほど、経営リスクの高いものはない。その状況の重要な救済策となる障害年金を受給対象としておくことはとても大切だ。1カ月2カ月と納付が送れようとも、何カ月がまとめることになろうとも、滞納期間なく支払っておくことが大切だ。

年金を忘れず支払うためには、年金の口座振替制度もある。半分が社長個人の役員報酬からの出費、半分が会社からの出費では会計処理が複雑になるが、保険料納付を「忘れない」というメリットもある。どちらをとるかは社長(経営陣)の性格次第だろうか。

出典:日本年金機構 http://www.nenkin.go.jp/shinsei/kenpo.files/0000029062jGtdZ00DG6.pdf

社長は忙しい日常業務のなか、会社の将来を考えることはもちろん大切だが、合わせて「あ、年金払っていない」となって望まないリスクを負わないように、この前に届いた年金納付書を確認して欲しいものだ。

工藤 崇(くどう たかし)
FP-MYS代表取締役社長兼CEO。ファイナンシャルプランニング(FP)を通じ、Fintech領域のリテラシーを向上させたい個人や、FP領域を活用してFintechビジネスを検討する法人のアドバイザーやプロダクト支援に携わる。Fintechベンチャー集積拠点Finolab(フィノラボ)入居。執筆実績多数。

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