少し前に「老後破産」という言葉が流行った。長寿をおめでとうと祝って貰えたのも今は昔、年を取るのはいけないことなのかという思いさえ生まれてくる。
そこで今回は、「老後の不安」を乗り越えるために、準備しておきたい3つのことを考えてみたい。貯蓄や健康の維持など基本的なことを除いて、少し角度を変えた視点から考察してみる。
1.キャッシュフロー表を作成する
まずお勧めしたいのがキャッシュフローの作成だ。
老後を65歳以降、と仮定したとき、最大の不安が「何歳まで貯蓄は持つだろうか」ということだ。
キャッシュフロー表では、毎年どれくらいの収入が見込めて、どれくらい支出としてお金が出ていくのかを把握できる。そうすると、どれくらい貯金可能なのかを知ることができる。
基本的な形としては、キャッシュフローのスタート地点(65歳など)が始点で最も貯蓄が高く、その後、逓減していくだろう。勤め先から退職金を受け取れる場合や、確定拠出年金などの上乗せ年金がある場合は、それも合算したうえで何歳まで生活が安定しているのか、という判断軸を持ちたい。
ただ気をつけたいのは、「何歳で亡くなる」という想定をしないこと。病は気から、とも言うが、何歳で亡くなるという想定をすると日常の健康にも悪い影響が生じてしまいそうだ。キャッシュフローの想定は、健康で長生きをするため。そして、いつまでも生活資金で困らないようにするため。その前提を忘れないようにしたい。
2.家族間で「老後」について話し込んでおく
キャッシュフローの作成と同様に大切なのは、老後のライフスタイルについて家族とよく話し合うことである。
たとえば介護について。在宅介護が希望なのか、それとも一定の年齢からは老人ホームにするのか。あるいは旅行計画。最近、高齢者が絡んだ交通事故が注目されているが、「何歳まで運転するのか」ということも早めに話しておきたい。
そして忘れてはいけないのは、それらを「お金と結びつける」ことだ。可能なら前項のキャッシュフローと連動させて、毎年の「支出」に反映させたい。現実を見据えたキャッシュフローを作成することが、老後の安心感に繋がっていくだろう。
3.親子間の財産共有
3つめは相続について。40代や50代で相続について考えることは、「まだ早い」と思う人が多い。しかし、相続対策では、何かがあった際に、「元気なうちに、時間をかけて対応をしておいて良かった」と思うケースがかなりある。
大切なのは、親子間の財産共有だ。親としては、自分が一世一代で築いた資産(もしくは祖父母の代から引き継いだ守った資産)を目の黒いうちは守りたい、という意志がある。ただ、それに拘り過ぎて、遺言もエンディングノートも残さずに亡くなると、まさに相続が「争族(あらそうぞく)」となる火種となってしまう。
そこで、親としては抵抗感を示さずに、子どもとしては必要以上に気を遣わずに財産共有をすることが望ましい。現状は遺言書の作成がいかに必要かを、子どもが親に伝える方法が代表的だろう。
年末年始の帰省がチャンス
これら3つを見てみると、自分一人でできることはあまり多くない。年末年始の帰省など、家族と会う機会に少しずつ準備をして、快適な老後生活、そして「遺された者たちの安心」を実現させたい。
工藤 崇(くどう たかし)
FP-MYS代表取締役社長兼CEO。ファイナンシャルプランニング(FP)を通じ、Fintech領域のリテラシーを向上させたい個人や、FP領域を活用してFintechビジネスを検討する法人のアドバイザーやプロダクト支援に携わる。Fintechベンチャー集積拠点Finolab(フィノラボ)入居。執筆実績多数。
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