現在世界と日本の法人税率の違い

先ほどお話した世界でみたときの法人税率、2位である日本に次ぐのはフランスの34.43%、工業大国であるドイツは30.18%で6位となっています。こうみると、日本の法人税率は他の国よりは高いですが、旧来の先進主要国と比較した時に本当に高いと言えるのかどうかが疑問にあがります。

しかしならどうして今回法人税を引き下げることが必要という話になったかというと、東南アジア諸国連合などの前まで発展途上国だった国が税制優遇策をもって自国の発展につなげる対策を行い、その結果多くの内国企業が海外流出や移転を行ったことにあります。ですから政府はこの対策として法人実効税率を30%代後半から20%代に引き下げ競争力を戻す作戦を考えだしたというわけです。

しかし税率を下げれば税収は減るわけで、今日本の赤字が減る気配もないのに収入部分である税収を減らすべきなのかという問題と、その減った分を補うために代わりとなる財源として課税範囲拡大という案により経済が疲労することは本末転倒に繋がる結果になるのではないかという声もあがっています。


外形標準課税とは

さきほど触れた課税範囲拡大は今回の法人税引き下げの代替財源として挙がっているわけで、この議論に出てくる外形標準課税とは何かをご説明したいと思います。外形標準課税とは、資本金が1億円を超える企業に課税される税金のことで、企業の規模により課税をするものです。ですから企業が赤字であっても規模が大きければ納付する義務が生じます。今回の課税範囲拡大は、この外形標準課税を拡大し法人税を引き下げる代わりの財源の一部に充てようとしているのです。実際今法人税を納めていない約7割の企業の中には、利益を削るために経費を増やし、赤字決算に持って行くことで税金対策を行っている企業もあります。ですからこのような企業に課税対象を広げるという考えは納得できます。

しかし、長年の日本経済の不景気の影響を直に受けた多くの中小企業は、現在も火の車の中で経営を綱渡りで行っている現状なのです。このような中小零細企業の負担が増えることがはたして得策と言えるのか?これでは経済界から猛反発されても仕方ないことなのです。


今後の安倍政権成長戦略の予想

もし本当に法人税率を10%程度一気に引き下げた場合、それを補うための代替財源としてあげられている外形標準課税の拡大だけではとても補いきれないことが目に見えています。政府自体も代替財源の基本部分としては、法人税そのものの課税範囲拡大との認識で一致しているようなのです。

内容として具体的には、特定の企業や業界の税金を優遇していることになっている租税特別措置の全部もしくは一部を撤廃し、現在優遇策を受けている企業から法人税を徴収するという構えです。この議論はこれからますますヒートアップ方向に発展する見通しです。

今回の法人税の引き下げは、経済的な観点からのみで言えば推進してしかるべき政策と言えますが、この法人税率引き下げを行うことによって、一部の大企業のためだけの減税政策にはなるものの、そのしりぬぐいを中小零細企業や一般の国民が行う結果となる可能性もあると考えられます。

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